教育現場の人手不足、なり手不足が指摘されている。現役の中学生教師のしゅんやさんは、本来であれば授業準備に充てていた時間を新型コロナウイルスの感染防止対策のための日々机や椅子の消毒作業に追われていると嘆く。それだけでなく、様々な理由から休職をしている同僚が担当していた教科まで教えることも少なくないという。
教育関連事業を手掛ける「LX DESIGN」では、人手が足りない学校側のリクエストに応じ、副業で授業を手伝う人材を派遣してくれる「複業先生」というサービスを始めた。現状ではプログラミング授業などの要望が多いそうだが、英語の授業などにも対応が可能だという。しゅんやさんは「地域の人材活用ということを文科省も呼びかけてはいるが、地方ではそういう人材がなかなかいないのも事実。こういうサービスはありだと思う」と話す。
教育研究家の妹尾昌俊氏は「プログラミングや小学校の英語など、必ずしも皆が得意だというわけではないし、専門性が必要なところで手助けしていただくのはありがたい存在だと思う。非常勤講師の先生もそれに近いが、待遇が良くないのでしんどい。そういう部分は手当しないといけないし、そもそも教員免許状がなければ教壇には立てない制度。特別免許状といって、民間での経験がある方の特別任用もあるが、利用は非常に低調。そういうところも含めて考えなければ、教師の多様性はなかなか高まらないと思う」と話す。
「まさにコロナ禍では、動画で説明するのが上手い先生がいっぱい出てきている。1人1台端末になる中、そうした形で授業を受けられるということになれば、逆に教員の必要性そのものも問われる時代になってくる。とはいえ、いくらいいコンテンツがあっても。そういう子を励ましたり、難しい家庭環境を抱えている子をケアしたりできる人材として、教員、担任という役割は残り続けるところはあると思う」。
しゅんやさんも「先生方全員で生徒を見ていく学校も増えているし、担任というこだわりもなくなってもいいのかなと思う。ただ、負担の話も多いが、楽しいこともたくさんある。感謝されたくてやってるわけではないが、いろんなことに気づけたのでありがとうございますと言われたり、子どもたち自身が成長を実感できている姿を見ている、やっていてよかったなと思う」と話した。
一方、妻のゆりなさんは「担任の仕事はすごく楽しかった。中学校3年間を一緒に過ごして、進路指導も一緒を考えた。みんなが志望校に受かった時もすごく感動した。そういう部分はかなり魅力」と話すも、ボランティア状態の部活動の顧問業務に負担を感じ、今年3月に退職した。平日には2時間半、土日も試合の引率などで授業準備や他の業務に支障が出て、1週間全く休めないときもあったと明かす。
教員不足に悩む埼玉県では、部活動を教えるノウハウがあるコーチを企業が雇い、学校に派遣するサービスが始まっている。提供するリーフラス株式会社の西梶博紀氏は「ここ数年、完全に我々の方にお任せするという形も増えてきているような状況」と話し、「負担が今までの半分くらいに減った」と歓迎する教員もいる。しかしゆりなさんの場合、部活動の担当を外して欲しいと校長に訴えたものの、むしろ全員が何かしらの部活の顧問を担当、なおかつ“複数顧問制”を採ることで教員の負担を軽減させようとしているため、それはできないと言われてしまったという。
妹尾氏は「制度上、部活動の顧問は絶対やらなければいけないということではないし、勤務時間外に及ぶ活動なので、あくまでも任意だ。ただ、急に地域の民間の方に来てというのも地域によっては非常に難しいし、平日の夕方に時間がとれるビジネスパーソンも多くはない。お金はないし、結局は先生方の“献身”に甘えてきたのが実情だ」と指摘する。
「少子化の割に部活動の数はそんなに減っていないというのが実態だ。部活動そのものを縮小していくべきではないかという議論が必要だし、最近の傾向として“ゆる部”、ゆるい部活動というのも出てきている。そもそも安全管理も技術指導も難しい中、かつてのように“大会で優勝するぞ”というのではなく、週3回だけ運動しようとか、吹奏楽だけでなく演劇も、など、様々な活動ができるようにしようという試みもある。スポーツ庁でのガイドライン作りには私も参加したが、やはり強くなるためには休むことも必要だというのが最新の研究結果だし、少子化での中、ケガをさせたりして部活が嫌いな子を増やしてどうするんだ、これが教育活動なのかということも問われている」。
しゅんやさんやゆりなさんが感じた、教員という職業の魅力を残しつつ、いかに負担を軽減していくのか。妹尾氏は「現場でできることは進めつつ、予算を作ったり人手をもっと集めたり、国や教育行政ができることはたくさんある」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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