GHCヘビー級タイトルマッチは、またも長時間のタフな試合になった。
12月6日、今年のノア最大のビッグマッチとなる代々木第二体育館大会のメインイベント。GHCヘビー級王者・潮崎豪は6度目の防衛戦で杉浦貴を迎え撃った。
レスリング時代はオリンピックを目指し、ノア旗揚げの年にデビューした杉浦。団体旗揚げ20周年の今年は自身のデビュー20周年でもある。記念イヤーの最大の大会で、最高の勲章を狙って潮崎に挑んだ。50歳にして桜庭和志とタッグ王座を保持してもいる。衰えはまったくない。
前哨戦と同じく潮崎の右腕を攻める場面もあった杉浦だが、それだけで勝てるとは思っていない。攻撃の主軸はエルボーとヒザ蹴り。打撃技での正面突破を狙う。
もちろん潮崎は“豪腕”勝負だ。序盤から逆水平チョップをこれでもかと連打。右のラリアットをブロックされれば左を叩き込む。どちらも並の攻撃では倒れない。試合が長くなるのは必然だった。
途中から、お互い雄叫びをあげながらの攻防。驚いたことに、潮崎は35分をすぎてノータッチ・トペを繰り出した。この時間帯に場外への飛び技を敢行、それを成功させるスタミナと集中力は尋常ではない。
しかし杉浦は粘る。ローリングエルボーからの豪腕ラリアットもカウント2でクリア。試合の途中から、観客が興奮して足を踏み鳴らす“重低音ストンピング”が何度となく発生した。さすがにもうこれで終わるだろうという場面を、潮崎も杉浦も次々にクリアしていく。
勝負どころはコーナー上での攻防だった。雪崩式でのオリンピック予選スラムを狙う杉浦だが、潮崎は切り返してリミットブレイクで投げつける。
最後は両者フラフラの状態。形が崩れながら意地で打撃を繰り出し、潮崎が豪腕ラリアット3連発でついにフィニッシュ。11月22日の中嶋勝彦戦と同様、長さ以上に中身の濃さを感じる大激闘だった。
潮崎は杉浦を「運命の相手」と表現している。初戴冠時、ベルトを奪われた相手が杉浦だった。場所は日本武道館、日付は12月6日である。
あの時と同じ12月6日、日本武道館への“再進出”が発表された大会で杉浦を相手に防衛することには大きな意味があった。
「プロレス界をもっともっとノア色に染めます!」
観客にそうアピールした潮崎は、バックステージでも取材陣からの質問にしっかり立って答えた。11.22の中嶋戦は42分35秒、その2週間後にこの試合をやってのけるタフさには感服するしかない。
「50分。でも俺には時間は関係ない。熱いものをもらって、熱いものを返すだけ。倒れないなら倒れるまで打ち込む。どっちかが倒れるまでやる。それが俺たちの闘いだから」
1月のタイトル奪取以降、潮崎は“ノアの闘い”を体現し続けた。杉浦という壁を乗り越えての決め台詞「I am NOAH」はまた格別だ。
次の防衛戦は2月12日。11年ぶりに開催される日本武道館大会に決まった。挑戦者はレジェンド・武藤敬司。少し前までなら予想できなかった対戦であり、今のノアらしい新鮮なカードだ。
新日本プロレスをルーツとする武藤は、ノアとのスタイルの違いを強調。あくまで自分流でベルトを狙うという。“他流試合”的な意味合いもあるだけに、潮崎には勝ち負けだけでなく“ノア流”を見せる必要もあるだろう。今の潮崎豪ならそれができる。ファンの誰もがそう確信しているはずだ。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア