少年院での高卒資格取得を支援へ 元入所者が「加害者を応援し、甘やかす施策」との声に理解求める
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 罪を犯した未成年者への矯正教育・社会復帰支援等を行うための施設、少年院。実はその入院者の6割あまりが高校を卒業していないということをご存知だろうか。また、社会復帰を目指す場合にそれがハードルとなり、進学や就職できず、再び非行に走ってしまうケースも少なくないという。

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 こうした状況を受け、法務省は入院中でも高校卒業資格を取得できるよう支援すべく、6月から検討委員会を開催。今週、通信制高校との連携や少年院で実施される体育指導、パソコン操作などの教育活動を単位として認めることなどを盛り込んだ方策が取りまとめられ、田所嘉徳法務副大臣は会議の席上、「学びの意欲のある少年院在院者に学びの機会を用意するという方向性はその立ち直りを図るうえで大きな意義があると実感している」と話した。

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 自身も少年院に入所した経験を持ち、現在はNPO法人「チェンジングライフ」代表として退所者の支援活動を行っている野田詠氏さんは、「既存の取り組みを大幅に充実化した、更生に資する取り組みだと思う」と話す。

 「少年院に入っているかどうか以前に、人としていい高校、いい大学、いい会社に入り、そしていい給料をもらっていい家庭を築く、というようものが“幸せ”の一般的な定義、イメージになっていると思う。逆に言えば、“高校くらいは出ておかないと…”というのが全ての日本の人の願いだと思うし、少年院にいる子たちも、高校卒業の資格が欲しいと願っているので、その視点に立った施策だと思う」。

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 今年公開された、刑務所にカメラを入れたドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』では、窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死などの罪で服役する4人の若者が、自身の罪はもちろん、貧困、いじめ、虐待、差別といった生い立ちに向き合い、更生プログラムを通じて新たな価値観や生き方を身に付けていく姿が克明に描かれている。作品内で紹介されるデータによれば、この更生プログラムを受けたユニット、は他のユニットと比べて退所後の再入所率が半分以下という結果も紹介されている。

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 16歳のときに初めて逮捕されたという野田さん。3歳のときに父母が離婚、中学生時代はサッカー部で頑張っていたものの、家庭内のトラブル、さらには勉強ができない、スポーツもたいしたことない、取り柄が何もないといった悩みを抱え、非行集団の中に居場所を求めてしまったのだという。

 「本当に疑心暗鬼の状態だった。ただ、少年院に入って社会と隔離された自由もない環境に置かれた時に、自分に向き合う時間がたっぷり与えられた。そこから見えてくるものがあったし、自分は資格を取得させてもらったり、職業指導をしてもらったりした。そういったなかで更生していくことができた。友達が退所してきたらお祝い金を渡すのが不良文化だったが、自分は断った。他の地域と抗争事件の時にはケンカの誘いもあったが、少年院の中でキリスト教に出会ったこともあり、それはできないと断った。ただ、そういう悪友であっても仲間だし、簡単には切れない。絆は保ちたいが悪いことはしたくないので、そこは理解して欲しいということを訴えていった」。

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 こうした経験を持つだけに、“意志が強いのでは”と言われることもあるというが、野田さんは「むしろ逆だ」と否定する。「就職がうまくいかず、かつての仲間の元へ戻りたいと思ったこともあった。そのくらい弱いからこそ、暴力や窃盗に依存していると気づけた。だから変われた。つまり、そういう自覚をしている子は立ち直りやすい。私の体験、そして今も少年院と関わる中で感じるのは、時期の問題や経済的な問題などで、高校に行きたくても行けるような環境にない子もいる。高校卒業の資格を得たからといって更生するとは限らないというのも、もっともな意見だ。ただ、退所後の職業選択の幅も広がるし、それが自信、セルフイメージの向上につながるのは確かだ。そうなれば、自ずと責任感も伴ってくると思う。“感謝してがんばっていかないといけないぞ”という気持ちを持ってもらえればと思う」。

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 ただ、様々な事情から高校に通うことができずにいる人は、少年院の外にもいる。こうした意見に対し野田さんは「そういった声があることを厳粛に受け止めなければならない。ただ、仕事をしていない人の再処分率の高さに比べ、有職者、学歴のある者の再処分率は低い。つまり加害少年が居場所を得て、犯罪から離脱する、被害を減らすことができるきっかけを作ることは、国民にとっての利益にもつながると思う。加害者を応援し、甘やかすというよりは、そういった観点での取り組みだと思う」と理解を求めた。

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 野田さんの話を受け、EXIT兼近大樹は「貧困など家庭環境の問題で不良になってしまうということもあるが、自分が何も持っていないから、ということもある。だからこそ、“僕はケンカでみんなから求められているんだ”ということになってしまう。他の人より輝ける何かを持って、それを他の人から求められることが大切だ。その意味では高校卒業資格に限らず、色んなものを手にすることのできる道を作ることが大事だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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