GoTo一時停止の提言も 医師「エビデンスを調べていない段階で止めるという判断は間違いだと思う」 “After Go To”の備えは
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 新型コロナウイルス感染症対策分科会は11日、感染拡大地域での「GoToトラベル」の一時停止を改めて提言した。

 感染者の急増を表す「ステージ3」。病床のひっ迫具合を見ると、北海道や東京、大阪などはステージ3の指標を超えている。分科会はこのステージ3をさらに「拡大継続」「高止まり」「減少」の3つのシナリオに分け、「拡大継続」「高止まり」ならGoToトラベル、GoToイートの一時停止などを検討するよう提言した。

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 一方、11日の『ニコニコ生放送』の番組に出演した菅総理は、GoToトラベルの一時停止について問われ、「まだそこは考えていない。(感染拡大を受け)西村大臣を中心にそれぞれの首長と調整をするというところ」との考えを示した。

 11日の閣議で政府はGoToトラベルへの3119億円の追加支出を決定したが、もし仮に一時停止となった場合、観光業界はどうなるのか。

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 大分・由布院でホテルなどのコンサルティングを行う株式会社旅月の代表取締役・川嶋雄司氏は、観光業界の現場の温度感について「(GoToトラベルが)止まることを覚悟している施設も結構ある。首の皮一枚繋がったのかなという、そういう雰囲気もあった」と話す。

 GoToトラベルの利用人泊数は11月15日までで約5260万人。旅行業界への効果については、「4~6月は売上0円というところも多かった。7月からGoToトラベルが始まって、急激ではなかったが徐々にお客様が戻られたかなと。10月から東京の除外解除、地域共通クーポンが始まったことによってかなりお客様が増えた。湯布院は宿泊だけではなく観光でいらっしゃる方も多いが、春先には全然見かけなかった観光バスも、秋ぐらいから紅葉の時期は見られるようになった」と説明。また、「食材や人材の確保、客室数にもよるが、お正月に出すお料理やおせちなどを秋ぐらいから準備している施設さんも多かった。それがゼロになるというのを考えると心苦しい」と、GoTo一時停止となった場合の影響を懸念した。

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 一方、愛知医科大学病院・循環器内科助教で新型コロナの重症患者の治療を行っている後藤礼司医師は、GoToを継続するべきかについて複雑な心境を語る。「原則として、人の動きがあれば感染が広がる傾向にはあるのは間違いない。感染した人たちは悪気なく、特に今回は無症状の人たちが広げてしまう可能性があるので、どちらかと言うと(移動させず)閉じ込めた方がいい。ただ、経済のことを考えると僕はそういう風には言えない。医療者としてもちろん現場で戦っていて、(医療現場は)ひっ迫もしているが、それでも『はい、止めてください』なんていうことは言えない」。

 また、制度アナリストの宇佐美典也氏も0か100かで捉えられない議論だとし、「GoToはニーズ上、観光のプラットフォームになってしまったと思っていて、GoToで需要のコントロールをするという方向に向かわないといけない。GoToを付ける期間と付けない期間をあらかじめ設定したり、感染が広がったら補助率を下げたり、観光需要をコントロールして管理経済化してしまうという風に踏み込んだ方がいいと思う」と述べた。

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 分科会が示したシナリオの3つ目「拡大継続」では、該当地域における不要不急の外出自粛や県境越えの移動自粛など、行動制限に踏み込んだ内容を提言している。ここまでの措置が必要なのか。

 後藤医師は「GoToイートやGoToトラベルを野放しにして、一定の基準がない状態だと、みんながそれぞれの意見を言いまくる状態になってしまう。そうではなく、一定の基準を設けてあげることによって、混乱は収まるのではないか。(時短営業を)20時までにした結果駆け込み需要が増えて、その間ラッシュになってしまったら逆効果になってしまう。そこで密になったらクラスターが発生したりするので、そういうことはきちんと予測していろいろなシミュレーションをした上で提案すべきだと思う」との考えを示す。

 川嶋氏は「20時を過ぎても安全な場所もあれば、昼間でも危険な場所はあると思う。大分は福岡からのお客様が多い。県境ではなくて、もっと細かくエリアを刻んで、感染源になっている市や町でしっかり分けてほしいと思っている」と述べた。

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 スコットランドでは、夏以降の感染拡大は旅行が原因だとする研究結果が出された。イギリスの科学者チームがウイルスの遺伝子配列を分析したところ、夏季の旅行で英国内外からウイルスが持ち込まれたという。

 感染拡大と旅行の関連は専門家でも意見が分かれているが、後藤医師は「実際こういうエビデンスはどんどん出てくるはずだ。元々、医学というのは対立した意見があって、エビデンスが出てくることで徐々にすり合わせていく。こういうことは多分、いわゆる一般市民には感覚がない。例えば、1つエビデンスが出たから全部が正解かというとそうではない。対立した意見が出て、いろんなものをすり合わせて初めて真理に行きつく。しかし、あまりにも早く飛びつきすぎて、結局何も結論が出ないままどんどんおかしな方向に議論が進んでいるのが現状ではないかと思う。双方の意見ともまだ捉えるには早すぎる」と指摘。

 その上で、「いろいろなことで広がってしまうリスクは当然ある。ただ、そのリスクがどれぐらいなのかはまだ測れないので、今だったら『それを模索している』『初めての冬なので分からない』とはっきり言えばいいと思う。どこに責任の所在、意思決定権があるかわからないままこの半年ぐらい来ていて、こういうことが結局現場の混乱も生んでいる。GoToを使った人がどれくらいいて、感染者の中で県を越えて移動した人の割合がどれくらいかなど、現段階でも調査してエビデンスは増やせると思う。『GoToで感染拡大した』『GoToは感染拡大に関係ない』になるかは、調べないとわからない。調べていない段階で止めるという判断も、それはそれで間違いだと思う」と述べた。

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 とはいえ、いつかは終わるGoToキャンペーン。“After Go To”に備えて川嶋氏は「宿泊プラン・価格の見直し」「自社サイトの強化」を提案する。「これを機に公式サイトを見直したり、プランを見直したり、そういう時期なのかなと思っている。After GoToに向けては、おひとり様向けのプランや個室、離れなどは今すごく好まれているので、ファミリープランを強化したりしていくといいのではないかと思っている。一番言いたかったのが、GoToトラベルは今のところ6月末まで延長すると言われているが、割引率がどんどん下がっていく。実は6月は1年で一番閑散期になるので、6月に割引率を一番下げられてしまうとしんどいなという声も宿泊施設さんから聞く」。

 また、後藤医師は医療現場のこの先を懸念し、「全国民に言えることは、やはりしなやかな強さが必要だ。こういう災害的なことや困難なことに立ち向かう時、全職種それぞれがアジャストしないといけない。金のばらまき作戦みたいなものはどこかで切れるが、頼りすぎていたらその先ダメだ。不景気になってしまった時に違う需要をどのように見出していくのか、そういうことを考えていく。例えば我々ドクターであっても、今回のコロナ禍で感染のことにアジャストできない人たちは総合病院を辞めていってしまったりする。対応が難しいために、急性期の医療を避けるということが確実に出てくる。僕は教育や情報開示、正しい情報の取り入れ方などを徹底したいなと思っている」との考えを示した。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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