アメリカ大統領を正式に選出するための「選挙人」による投票が50州と首都ワシントンで行われ、バイデン氏が当選に必要な過半数の票を獲得した。
この結果を受けてバイデン氏が「私は全てのアメリカ国民の大統領になる。私に投票してくれた人のため、そして投票しなかった人たちのためにも懸命に働く」と述べたのに対し、トランプ大統領は「多くのトランプ票がバイデン側に移行された。このフェイク選挙はこれ以上もちこたえることはできない。前へ進め、共和党。激戦州勝利!7500万票」とツイート。郵便投票や開票作業、集計マシンなどによる選挙の不正について争う姿勢を崩してはいない。
15日の『ABEMA Prime』では、トランプ陣営の思惑について、選挙のアドバイザリーボードのメンバーも務め、「僕は決してトランプ大統領が悪いとは思わない。トランプの方がいい」とも話す中部大学の酒井吉廣教授に話を聞いた。
■「1月6日に確認するまでは正式には決まらない」
仕事で渡米した際のメンターが、後にブッシュ政権で副大統領を務めるディック・チェイニー氏の妻だった関係から共和党の仕事を手掛けるようになったという酒井氏。共和党の選挙のアドバイザリーボートメンバーは2000年の選挙から数えて6回目だったという。
「よく“アメリカは分断されている”といわれるが、そもそも共和党支持者と民主党支持者に分断されている。もちろん少数政党もあるが、知事であれ、司法長官であれ、あるいは選挙管理委員の人間であれ、大抵はどちらかに入っている。選挙とは、いわば“投票というツールを使ったケンカ”なので、民主党支持者は民主党に勝たせたいし、共和党支持者は共和党に勝たせたいという心理が働く。例えば今回の郵便投票でも、投票箱を持っていって“ここに入れてくれ”といったことが起きている。共和党としても、党内の人間にそういう不正をされるのは困る。それを止めるためのルール作りなどに携わっている」。
その上で酒井氏は「バイデンが勝ったとして、厳密にそれが言えるのは1月6日だ」と話す。「12月14日は選挙人が投票を行うだけで、結果を確認するのは1月6日。したがって現時点ではバイデン氏が勝った州の選挙人の投票先を予想して“バイデンが獲得した”と陣営が言っていることや、出口調査のように話を聞いた結果だ。しかし実際には下院の人たちが1月6日に確認するまでは正式には決まらない」。
■「1月20日正午まで、可能性は残っている」
そこで巻き返しを図るべくトランプ陣営が仕掛けているのが「不正」を訴える裁判だ。このうち、郵便投票期日の変更手続きに関する主張について酒井氏は次のように説明する。
「本来、郵便投票も3日までに到着していなければならないはずだが、州知事や州務長官が“10日着でもいい”などということを議会の手続きを無視して決めた州もある。それは憲法違反ではないか、ということだ。こうしたことが1年くらい前に変えられていれば皆が気づかないし、投票日になっていきなり宣言されれば止めようがない。郵便投票を行ったのは民主党支持者が圧倒的に多いということは事前にデータで分かっていたし、期限が1週間延びれば、1万票、2万票と結果が変わってくる」。
こうしたことから、テキサス州のパクストン司法長官(共和党)は今月7日、激戦州と言われるペンシルベニア州やミシガン州など4州を相手取り、選挙結果の無効を求める訴訟を提起。「本来であれば、これらの州の票は全てトランプ大統領の票だというところにまで持っていきたいが、もはや時間がない。しかしこの裁判に勝てばバイデン氏に入るはずの62票が無効になり、双方ともに270票にいかないことになる。すると1月6日の開票日には下院による大統領選挙が行われることになる。そこで勝てばいいという考え方だった」。
しかし連邦最高裁は11日、この訴えを退けている。それでも米メディアによれば、他にも15件の裁判が継続中、トランプ支持者たちによる抗議活動も続いている。酒井氏は「トランプが“俺が正しいんだ”と騒いでいるうちは世の中は動かなかったが、ミシガン州では人手を使って票を数え始めたところ、バイデンが1万ちょっと上回っていたのが、実は1万票以上がトランプだった、ということが出てきている。裁判じゃないと結果が出ない。しかし繰り返しになるが、中立な人もいない。開票日の1月6日の後でも、1月20日の正午という、憲法で定められた時間がある以上、まだ可能性は残っている」とした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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