配信だけで数百万円が稼げる時代に SNSを積極活用し知名度を上げていくアーティストたち
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 新型コロナウイルスの影響でメジャーなレコード会社が擁するアーティストがライブ中止やCDの発売延期などを余儀なくされる中、ネットを通して自由に活動するアーティストたちが存在感を増している。

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■“寝る前に思いついたフレーズ”がTikTok流行語大賞を受賞する楽曲に

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 「TikTok流行語大賞2020」にノミネートされた30語を見てみると、そうしたアーティストたちの楽曲のタイトルや歌詞の一部が並んでいることがわかる。今回、『きゅんです』(『ポケットからきゅんです!』より)でグランプリを受賞したシンガーソングライターのひらめは、「本当に“奇跡”だなと思う」と話す。

 3年ほど前から趣味でギターを練習していたものの、TikTokへの投稿を開始したのは今年3月下旬。しかも、自粛期間で空き時間ができたことが理由だったという。ところが「寝る前にパッと思いついたフレーズ」をそのまま投稿しただけだったという『ポケットからきゅんです!』に"指ハート"を合わせた動画が大流行。関連動画は30万本以上に上り、総再生回数は1億を超えた。

 さらに反響を受けてフルバージョンを制作し、音楽配信ストアでリリースしたところ、こちらもランキングで上位を獲得。本格的にアーティスト活動をスタートさせることになった。

■「全体を作る前に反応を見て、曲作りに活かせる」

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 こうした流れを踏まえ、“TikTokで戦略的にバズらせた”という楽曲が、Tani Yuukiの『Myra』だ。どのような曲が話題になりやすいかを分析、画を切り替えやすいようリズムを分かりやすく刻むことを意識した結果、“思い出動画”などに使いやすいと人気を呼び、利用するカップルが続出。関連動画を含めた総再生回数2億回を越えた。

 今年3月に音楽の専門学校を卒業、本格的に自宅で楽曲制作を始めたというTaniは「CDで売っていた時代は数字として結果が見えるまでに時間がかかっていたと思う。でも今は2、3日ですぐに反応が見えるので、自分の方向性をどう持っていけばいいか、選択がしやすくなったと思う」と話す。

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 また、TikTokの場合アップする動画は短尺のため、曲全体を作る前に反応を見るという意味でも効率的だという。「圧倒的に数字が取れない投稿があると、“ああ、これ響かなかったかあ…。自分はでいいと思うんだけどな”みたいな」。今後もTikTokで聴いてもらってYouTubeに流し、そして配信、という流れを確立させたいと話した。

■田舎にいながら音楽活動が完結できる

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 さらに、本業の傍ら、副業としてYouTubeやデジタル配信を通じて活動する“兼業アーティスト”も存在する。東大の音楽サークルOBで結成されたバンド「Penthouse」は、全員が会社員だ。しかし作品が目にとまり、V6に楽曲提供をするなどの活躍も見せる。

 青森県に住む小田桐仁義さんは、音楽系の専門学校を中退後、米作りをしながら趣味で音楽作りを楽しんでいた。ところがネットに投稿したオリジナル曲が反響を呼び、YouTubeやデジタル配信、CD販売、さらにはYouTuberへの楽曲提供などで得られる収入が増え、今では本業である農業(固定給)を上回るようになったと話す。

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 「季節によっては農業の空き時間を利用している。特に冬場は農業の仕事がないのでバイトもしていたが、今はありがたいことに一日音楽活動に専念できる。ストリーミングやSNSなどのネットサービスが発達したおかげで、田舎にいながら都会と同じように音楽活動が完結できる。不自由は感じない。農業が音楽につながることはないが、両方とも好きなので続けていきたい」。

■配信だけで数百万円を稼ぐアーティストも

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 小田切さんたちのようなアーティストを支える音楽配信サービスの一つ、株式会社チューンコアジャパンの野田威一郎社長は「すでに海外では売上の75%がストリーミングになっているが、やはり日本は今でもCD文化が根強く、売上の75%くらいを占めている。それでも今後、聞き放題やデジタル配信の比率は増えてくると思う」と話す。

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 「CDの時代までは、事務所やレーベルに所属しないと作品が店頭に並ばないので、そうでない人は路上で演奏したり、手売りをしたりするしかなかった。“インディペンデントアーティスト“と呼んでいるが、今は権利を持ち、独自で好きな活動をしていくような人たちが出ているので、僕らもそこをサポートしている。中には何十万、何百万と稼げる子も出てきた。そうなればレーベルとも交渉ができるようになってくるが、必ずしも所属したほうが良いというわけでもないのが今の時代だ」。

■“見つけてもらう”ためのセルフプロデュース能力も必要

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 一方、誰でも簡単にアーティストになれる時代、今度は“見つけてもらえなくなる”可能性が高まってきそうだ。小田桐さんは「僕の場合も、YouTuberの友達にサビの部分を提供し、使ってもらったりしている。そのようにして、違う畑の人に聴いてもらえるようなきっかけづくりは意識してきた」と明かす。

 野田氏も「僕らのサービスも、基本的には“並べる”だけ。Tani Yuukiくんもうちのサービスを使ってくれているが、やはりSNSなどが流行のきっかけになり、そこから聴き放題のサービスの方に流れてくる。また、また、今はライブができない状況でもあるので、普段からファンとのリレーションを構築しているアーティストの方が徐々に目立ってきていて、収益も上げていると思う。また、動画を作るなどのセルフプロデュースのためには、仲間が必要になってくる。これはデジタルでも変わらない。お金はなくても、仲間にクリエイティブ力がある友達いるとか、チームで動いていといったケースが成功しやすい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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