「人間には0と1には回収できない部分がある」行政のデジタル化の風潮に懸念を示す人も
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 「テレワークができない。ハンコをもらうために会社に出てこなきゃならない。こうした課題を解決すべく、改革を強力に進める司令塔として、デジタル庁を設立する」。24日の講演で、コロナ禍で問題が浮き彫りになった行政のデジタル化について改めて意欲を示した菅総理。

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 一律10万円の定額給付金をめぐっては、マイナンバーカードや住民基本台帳の情報が紐づいておらず、自治体職員が手作業で一件一件を照合するという事態も発生。脱書面、脱ハンコの議論も官民で急速に進んでいる。

 政府はデジタル庁を設置することで、国と地方自治体がバラバラに管理していたデータの共通基盤の整備に着手。必要な人材の募集もスタートした。さらに現在2割程度の普及にとどまるマイナンバーカードに様々な機能を持たせ、2年後にはすべての国民に行き渡らせる方針だ。

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 ところが、こうした動きに疑念を抱く人たちもいる。市民団体「共通番号いらないネット」の宮崎俊郎氏は「どうしてデジタル庁という権限の強い官庁を作らないといけないのかがよく分からない。行政の縦割りは良くないと言われているが、専門的な部署が目的に応じて住民の情報を集め、一番適したサービスや福祉を提供するわけだから、それぞれが検討するということが悪いことだとは思わない。縦割りだからこそ、私たちの情報も守られるのではないかと思う」と主張する。

 「結局マイナンバーカードのメリットも言われていて、保険証や運転免許証と共通化するというが、保険証が8700万枚、運転免許証が8200万枚あるのに対し、マイナンバーカードはいまだに3000万枚だ。どう考えても、2022年までに8000万枚のレベルに達するとは思えない。やはり私たちが知らないところで情報が漏れるのではないかといった懸念や不安があるからだ。とにかく便利になるからということでもってひとまとめにしていこうという方向だが、仮に情報が漏れた時の危険性は計り知れない。1枚にすることによって財布の幅は取られなくなるかもしれないが、その1枚を無くしたら怖いことになる。それを全員が持つのではなく、目的別に自分で取捨選択し、持ちたいものは持つ、必要のないものは持たないということにしておくのが良いと思う」。

 さらに宮崎氏は、手続きのデジタル化や一本化そのものにも疑念を示す。

 宮崎氏は「引越しをする時、1日休んでいろんな続きをしなければならないのは確かに面倒だが、自分の情報をどこでどう変えなければならないかを把握することが大切だと思う。それを1カ所、1回で終えられてしまうとなると、自分の知らないところで色々な情報が書き換えられるということになる。それが果たしていいのか。例えば保育園の申請などもオンラインではなく、やっぱり対面で担当者と家庭の状況などについて話をすることで分かることもある。デジタル化にもいいところはあるが、デジタル化すべきではないところも必ずある。人間には0と1には回収できないようなつながりがあるし、そこをなんでもかんでも無理やりデジタル化するのではなく、立ち止まって考えたほうが良い」。

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 民間企業に勤務する傍ら、政府CIO補佐官としてデータ連携・活用について助言をしているという下山紗代子氏は「危機に対応するためには普段からの準備が必要だが、それができていなかった状況がコロナ禍で浮き彫りになったと思う。日本は自然災害も多い国なので、次にやってくる危機に対して柔軟に対応するためには、やはりデジタルの基盤をきちんと固めておく必要がある」と話す。

 その上で「役割分担、個別にやるところは個別にやる、ということも必要ではあるが、例えば一度登録した情報については何度も入力の手間をかけなくて済むよう、政府内で繋げておくところは繋げておくという連携の部分をデジタル庁が担っていく。また、大臣が“トレーサビリティ”と言っていたが、デジタル化されることで、いつどこで誰が使ったのか、どこの誰が参照したか、といった履歴も残せることになる。例えば本人確認のために免許証のコピーを提出することがあると思うが、その紙がどのように管理されていたのか、我々は把握しようがない。そこはデジタル化することによって、むしろ安全に管理できる部分も出てくると思う」とコメント。「例えば生活保護の申請の場合、特に地方だと、窓口だとかえって相談しにくいという声もある。窓口でやりたい方、デジタルでやりたい方、両方に対応できるようにするための基盤作り、これが重要だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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