プロレスリング・ノアの2021年は、まさかのサプライズで幕を開けた。
1月4日の後楽園ホール大会。この大会は対戦カードが事前発表されず、入場曲が鳴って初めて誰が出場するか分かるという形式だった。そのメインイベントに登場したのは、一方が武藤敬司&丸藤正道&田中将斗。ZERO1で世界ヘビー級王座を獲得したばかりの田中将斗は、武藤や丸藤たちイニシャルMの選手が集まったユニット『M's alliance』の新メンバーとしてコールされた。
そして赤コーナーから登場したのは、2.12日本武道館大会で武藤と対戦するGHCヘビー級王者の潮崎豪と清宮海斗、そして最後の1人は、なんと馳浩! 元・文部科学大臣が久々のリング登場だ。しかも、この大会を中継したABEMAでゲスト解説を務めていたのは山田邦子。この2人の“因縁”は、プロレスファンには有名だ。
1987年、新日本プロレスのゴールデンタイム中継『ワールドプロレスリング』が『ギブUPまで待てない!!』とタイトルを改め、曜日を変えて放送されていた時期がある。番組としてはバラエティのノリ。そのメインMCを務めていたのが山田邦子であり、出演した馳が邦子の質問に激怒するという場面があった。
あれから34年。邦子は熱心に会場に足を運ぶプロレスファンとなり、選手のプライベートもよく知るだけにノアの解説も好評。そこに『ギブUPまで待てない!!』での因縁の相手・馳が登場したのだ。
馳が登場した瞬間、邦子は「まさかの馳浩ですよ!」と立ち上がって拍手。中継のコメント欄も「議員キタ」、「ホントに馳先生!」と沸きに沸く。リング上では馳vs丸藤という夢の顔合わせも実現。久々の試合となる馳だがキレのある寝技を見せる。清宮vs田中もこれまで想像できなかったマッチアップだ。さらに馳は田中のラリアットを仁王立ちで耐えると裏投げ、さらに「コロナに負けるな!」と叫んでからのジャイアントスイングまで。プロレスファンへの“お年玉”となった。
試合中の邦子は、やはり感慨深げ。『ギブUPまで待てない!!』を振り返り「私がまだ子供で、インタビューの仕方がわからなかったので怒られちゃったんですよ」。そして「人を介してニアミスがあったり、実際にはお会いできていなかったので…試合は見ていましたけどね。嬉しい。ノアで見ていることが不思議」という秘話も披露した。
試合はタイトルマッチを控えた潮崎が武藤にムーンサルトプレスを決め勝利。これもまた信じられない瞬間だった。
そして試合後、勝者チームがそれぞれマイクを握って大会を締めると、馳がリングを降りて放送席へ。邦子とのグータッチ。34年ぶりの“歴史的和解”だ。これが、この日のもう一つのクライマックスだった。
「ソーシャルディスタンスを守りながら。合わせたグーは…温かかったです」
「一部のファンの方が変に煽っているだけで、私たちは何でもなかった。今日はそのことがよく分かりました。よかったです」
邦子は感激の面持ち。昭和の新日本で生まれたストーリーが、令和のノアで感動の結末を迎えたのだった。