今や“本職”は十数人…アンジャッシュ渡部でも炎上した「芸能リポーター」は絶滅へ? 業界歴34年のベテランの胸の内
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 昨年12月に開かれ、物議を醸したお笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建の謝罪会見(囲み取材)。『週刊文春』に複数の女性との不倫行為が報じられたことで活動自粛に入り、その半年後の会見だったが、疑問視されたのは渡部の応対だけではない。

 詰めかけた200人の取材者による質疑応答は1時間半以上に及び、渡部「多目的トイレで行為をしていた時の気持ちは?」「性依存症なのでは?」「我々もガキの使いで来ているのではないので」といった質問攻めに遭う様子は、“集団いじめ”のようだとも言われた。

・【映像】「ゲスだと思われても聞くのが仕事」原田龍二&長谷川まさ子と考える

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 その批判の中心にいるのが、いわゆる「芸能リポーター」だ。芸能人に対して容赦のない言葉を浴びせる彼らに対し、ネット上には「正義?」「責める資格あるの?」「そもそも芸能リポーターっている?」といった批判が常に飛び交う。

 そこで業界歴34年のベテランリポーター、長谷川まさ子氏に話を聞いた。長谷川氏は「私はいつも皆さんにお伺いしているのだから…」と、芸能リポーターという仕事について、率直な思いを語った。

■「聞くべきだと思ったことは聞く」“本職”の芸能リポーターは十数人に

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 ラジオ業界でフリーアナウンサーとしてキャリアをスタートさせた長谷川氏。ワイドショーのリポーターのオーディションを受けてみないかと声をかけられたことがきっかけで、芸能リポーターの世界に飛び込むことになったという。

 「女性の場合は私のようなフリーアナウンサーの出身が多く、男性の場合はスポーツ紙や女性誌の出身が多い。また、会見にいる人のほとんどはテレビ番組のディレクターだったり、スポーツ紙の記者さんだったりで、私のような専業の芸能リポーターは十数人しかおらず、横のつながりは強い。ただ、イベントも含め様々な現場に行って話を聞くのが仕事なので、何もスキャンダルだけを追いかけているわけではない。その意味では楽しい面と、辛い面とがある」。

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 人の心に土足で入っていくような仕事だと思われているが、私はエンタメが好きだし、応援したいという気持ちでこの業界に入っている。だからネットの媒体に掲載されるようなインタビューの仕事もしていて、そこでは企画書や文章、写真も全て自分でやっている。例えば紅白歌合戦のリハーサル中やインタビューの前後など、芸能人の方々の素顔を垣間見ることができるのは楽しみの一つだ。ただ、自分から連絡先を聞くことは一切ないし、飲みに行くことがあったとしても、ズブズブの関係にはならないよう心がけている

 一方で、はっきり言えば嫌われる存在であることも分かっている。昔だったら“聞け”と言われていたような内容でも、今は“聞くんじゃない”と言われるし、聞かなかったら聞かなかったで“それを聞くのが仕事だろ”と言われてしまう。そういうネット上の辛辣な意見を見ていると、傷付くこともある。確かに会見の現場では一線を越えたような酷い質問をする人もいる。しかし会見というのは誰が何を聞いてもいい場所。私としては誠意を大切にしながらも、絶対に聞くべきだと思ったことは、どんなにゲスだと言われても聞くのが私の仕事だと思っている」。

■「会見を開く以上、イメージアップに繋げなければ」渡部会見の“失敗”

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 問題となったアンジャッシュ渡部建の会見にも参加していた長谷川氏。「私が会見を開かせたわけでもなければ、私一人が全ての質問をしたわけでもない。それでも、“会見を開いて下さってありがとうございます”という気持ちで、聞き方などについても気をつけていたつもりだ。それでも確かにあの会見は“1対200”という状況だったので、集団いじめに見えてしまったと思う。私もお叱りは受けたが、会見を開いてもらった以上、皆さんが聞きたいと思っていることは代わりに全てぶつけるべきだと思う」と話す。

 「不倫はファン、そして一番は奥さんを裏切る行為だ。だから奥さんさえ許せばいい」とした上で、「改めて思うのは、誰も得をしてなかった会見だったということだ。渡部さんはあの時、“文春に答えたから会見しなくていいと思っていた”と答えた。さらには“半年休めばいい”と思っていたようだった。それなら会見を開かずに復帰してしまえば良かったと思う」。

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 その上で、「本当に申しわけないが、会見を開かないも自由もあるわけだし、何も答えられないのであれば開く必要はなかった。そして開いた以上は、絶対にイメージアップに繋げなくてはダメだ。そのためには、“ショー”にしなければいけないわけで、我々もそのための“道具”にしてしまえばいい。謝罪会見とはそういうものだ。お笑いタレントである渡部さんであるはずなのに、それ全く感じられなかったのがとても残念」と批判した。

 オンラインサロン『田端大学』主宰の田端信太郎氏も、ZOZO社時代にメディア対応をした経験を踏まえ、「フライデー襲撃事件後のビートたけしさんの会見や、長渕剛さんがスキャンダルを報じられた際に志穂美悦子と一緒に取材に応じたときの映像を見ると、すごいなと思う。その意味では、会見での渡部さんの受け方は下手だったと思う。“性依存症なんですか?”という質問だって、“確かにその可能性もあるので、カウンセリングを受けます”などと答えることで、これ以上は踏み込めない、という呼び水にできる可能性もある」と分析した。

■原田龍二「会見を開かないという選択肢は無かった」

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 では、実際に謝罪会見を開いた経験を持つ芸能人はどう考えているのだろうか。1年半前、『週刊文春』に不倫を報じられた俳優の原田龍二は、「人様のことをとやかく言える立場ではないので、自分のことであれば…」とした上で、「会見を開かないという選択肢は無かった」と明かす。

 「会見を開いたのは、自分は子どもに“悪いことをしたら謝るものだ”と教えてきたし、それは大人になっても同じだろうという倫理観からだった。家族に対してはもちろんのこと、スポンサーなど仕事の関係者の方々、そしてファンの方々に対して、本当はひとりひとりに申し訳ありませんとお伝えすべきだと思ったが、さすがにそれは無理なので、会見を開くことで“けじめ”としようと考えた。自分がMCをやっている生放送の情報番組では、自分で『週刊文春』の記事を紹介することになってしまったし、どうせ謝罪するなら、なるべく早くと思った」。

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 会見では「性欲は強いんですか?」といった下世話な質問も飛び出した。「映像は一度も見ていないし、何を喋ったのかも全く覚えていない。まずは謝罪をするということだけで、それから先の質問などは全く想定できていなかった。そのまま仕事がなくなってしまうかもしれないとも思ったが、まな板の上の鯉になったつもりで、煮るなり焼くなり…」と振り返る原田。それでも会見での対応が奏功し、今では再び多忙な毎日を送るという。

 「報じられてしまったことについては、いわば“因果応報”。ただ、子どものことは傷つけてしまったと思うし、人が許すかどうかよりもも、自分で一生向き合っていく問題。一度失敗しても死んでしまうわけではなく、人生は続いていく。僕もあの報道を新たな“武器“にしてというか、再び立ち上がって頑張るべきだと思っている」。

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 原田の話を受け、長谷川氏は「謝罪会見自体が必要ないと考えている方も多いとは思うが、では渡部さんの会見は見なかったのだろうか。やはり見た人も多かったのではないか。『週刊文春』さんも、渡部さんの不倫を報じた号は完売した。ファンの方を裏切るようなことをすれば謝ることが必要だろうし、そこがテレビ等に出てお金をいただいている人と一般人との違いだろう。ただし、ある時期から“全ての質問に答えることが誠意、だから時間も無制限”ということに変わってしまった」と指摘する。

 「しかし私の経験上、ほとんどの大事な質問は30分くらいで出てしまうものだ。だから渡部さんの会見も、最後の40分は不毛なやりとりが続いてしまった。例えば東出昌大さんの謝罪会見は20分間だったが、そのうち半分くらいは東出さんが答えを考える時間だった。あれほど一つ一つの質問に時間をかけて答えを出される方は初めてだったが、それによって誠意、人となりが伝わってきた。会見というのは、そういう目的で開いた方が良いと思う」。

■「完全に尻すぼみの仕事だな、ということは分かっている」

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 しかし前出の田端氏は「もっと言えば、芸能人と視聴者・ファンの間に芸能リポーターを挟む必要があるのだろうか」と疑問を投げかける。

 「多くの芸能人がYouTubeチャンネルで発信している時代だ。ファンから寄せられた質問に直接答え、お詫びすることだってできるはず。それなのにわざわざ記者会見を開かないといけないというのは、むしろテレビにしがみつかざるを得ないような人だということなのかもしれない。そして、そもそも一次情報のほとんどは『週刊文春』などの週刊誌ではないか。仮に芸能リポーターが独自情報を掴んできたとしても、むしろテレビ局が事務所やスポンサーへの忖度で握りつぶしてしまうこともあるだろう。記者会見に押しかけることしかできないなら、これからますます存在意義そのものが問われてくるはずだ」。

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 長谷川氏は「そういうふうに感じる人が大多数になれば、やはり私たちの仕事そのものが無くなると思う。完全に尻すぼみの仕事だな、ということは自分でも分かっている。昔は芸能人が赤ちゃんお披露目会見を開いていたくらいだし、披露宴も含めて何でも見せていたが、今は個人情報の問題もあり、世の中が窮屈になった。必要な情報は、芸能人の皆さんが自らSNSで発信するようにもなった。

 私も刑事のように張り込んでスクープを狙うということもあったが、今はしていない。カメラさん、音声さん、そしてディレクターたちを何日も張り込ませるだけの体力がテレビ局にも無くなってきた。プライバシーの問題もあり、かつてのようにマンションに入っていくようなことも難しくなった。だからワイドショーからスクープが消えた。

 番組を観ていると分かると思うが、リポーターがスタジオに立つ機会が減ってきている。テレビ局の予算自体が減ってきていることもあり、芸能リポーターの生活も厳しくなってきていて、人数も減っている。私も最近では地方局でイベントを紹介したり、コメントをしたりする仕事が増えてきているし、先ほど言ったようにインタビューの仕事や、企画のキャスティングなども手掛けている。少しずつ、違う方向からエンタメを応援する仕事も増やしていきたい」と語った。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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