「イギリスの失敗を繰り返して欲しくない」 2度目の緊急事態宣言“効果薄”の懸念に専門家
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 8日に発出されたばかりの2度目の「緊急事態宣言」。しかし、その効果を疑問視する声が早くもあがっている。

【映像】専門家「イギリスの失敗繰り返して欲しくない」

 今回の緊急事態宣言では、飲食店の午後8時までの時短営業、テレワーク活用による出勤者7割減、イベントの人数制限などが骨子となっている。インターネットでは2度目の宣言に不安の声があがる一方で、「緊急事態宣言出たけど、出た感がない」「休業要請ないから緩め?」と、あまり緊張感が伴わないという意見も。今回は映画館やカラオケ店、ライブハウス、パチンコ店などへの休業要請は出ていない。

 そうした中、全世界の期待を集めながら開発が続いているのがワクチンだ。海外では接種が始まる中、約530万人がワクチン接種を受けたアメリカで、CDC(米国疾病対策センター)は接種後29人がアレルギー反応であるアナフィラキシー症状を起こしたと発表した。ワクチンは感染拡大を抑える切り札となるのか。

■2度目の緊急事態宣言は効果薄?専門家「英の失敗を繰り返して欲しくない」

「イギリスの失敗を繰り返して欲しくない」 2度目の緊急事態宣言“効果薄”の懸念に専門家
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 年末年始にかけて感染者が急増している東京都の状況について、キングス・カレッジ・ロンドンの教授でWHO事務局長の上級顧問も務める医師の渋谷健司氏は「年末の駆け込み検査や年明けの検査で増えたのもあると思うが、想定通り指数関数に乗っていると思う。実効再生産数を1.1として、先月31日の1337人に1.1の6乗をかけると約2400人(2368人)。明らかに感染拡大の局面で、今止めないと非常に危険。緊急事態宣言は遅かった」と指摘する。

 前回の緊急事態宣言時と比較すると、今回は制限が限られたものになっているが、効果については「前回に比べると緩いし、人々もコロナ慣れ、自粛疲れがある。もちろん全く効果がないとは言えないが、減っていくのにかなり時間がかかると思う」と予測。

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 また、緊急事態制限は「ある意味で一過性の劇薬。基本的には医療崩壊を防ぐためにやる」とした上で、「一番良くないのは、感染者数がだらだら下がっていくこと。高止まりすると一番経済が疲弊するので、できるだけ短期間に効果があるものを一気にやって欲しかった」との見方を示した。

 イギリスでも12月後半から感染が再拡大し、一日の感染者数は5万人を超えている。そうした状況から渋谷氏は「イギリスは11月に2度目のロックダウンをやった。その時の状況は今の日本と一緒で非常に緩んでいて、人々が外に行ったり接触したりしていた。最悪だったのは、ロックダウンは1カ月だとジョンソン首相が決めて、全然おさまっていないのに12月2日に解除してしまったこと。クリスマス商戦でまた接触して、変異株が入ってきてという、ダブルパンチで一気に増えた。やるならきちんと下げきるまでしないとあまり効果がない。日本の今の状況は、イギリスの緩めのロックダウンに近いのかなとちょっと心配している」と警鐘を鳴らす。

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 緊急事態宣言解除の目安として、西村経済再生担当大臣は10万人あたりの感染者数が1週間平均で25人以下、東京では1日500人以下が目安だと発言している。この数値については、「500人というのは結構多い。解除して、“終わったぜ”となってみんなが動くともちろん戻るので、そうなると危ない。イギリスの失敗を繰り返して欲しくない」と訴えた。

■世界で報告される“変異種”、ワクチンの有効性は

 海外ではすでにワクチン接種が始まる中、日本は2月下旬から、医療従事者からの接種開始を目指している。

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 ワクチンは状況を変える一手になっているのか。渋谷氏は「ワクチン自体は非常にいいものだが、まだ数が足りないのと、それ以上に欧米では感染者が急増していて追いついてない。ただ、ワクチンは非常に期待できるので、粛々と打っていくしかない」と話す。

 世界で報告されている変異種について、南アフリカの大学で変異種の分析をしているデオリベイラ教授は「南アフリカの変異種はイギリスの変異種より変異の度合いが大きい」「ワクチンの種類によって効果が弱くなる」としている。

 変異株に対するワクチンの効果について渋谷氏は、「イギリスの変異株においてはおそらく効くだろうが、変異の度合いによっては効かない可能性もある。遺伝子ワクチンなので、変異の部分を少し変えると効くものを作ることもできる可能性があるので、今までのワクチンに比べれば比較的フレキシブルに対応できる」と説明する。

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 アメリカでは、29人がワクチン接種後にアレルギー反応であるアナフィラキシー症状を起こしたと発表された。当時約189万人が接種しており、発生割合は100万人あたり11.1人。CDCは「接種で新型コロナを予防する利益の方がリスクを上回る」としている。

 このメリット・デメリットについて渋谷氏は、「ワクチンはあくまでも健常な方に打つもの。安全性、有効性は徹底しているし、副反応においてもかなりの数の臨床試験をやっている。ただ、数を打てば予期せぬことも起こるかもしれないので、そうした情報は適時アップデートすべき。今のところ少しアナフィラキシーやアレルギーが多いというが、まだまだ頻度は低いし、他のワクチンでも予想されるような副反応なので対応はできると思っている」との見方を示した。

 日本のワクチン接種は海外製のものからで、2月下旬から接種開始を目指しているのは米ファイザー社の「mRNAワクチン」だ。日本でのワクチン承認が遅い要因として、渋谷氏は「日本は独自の承認プロセスがあり、日本人で臨床試験をしなければならない。例えばイスラエルや韓国だと、欧米が承認すれば自国でやらなくてもいい。日本の場合は、こういった緊急時でも平常時と同じように日本人で数百人の治験をやる。そこに科学的意味があるかどうかは検討しなければいけないところ」と指摘する。

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 また、日本は“ワクチン開発後進国”になってしまっているといい、「製薬企業の構造が1990年代の金融行政と全く同じ。小さい会社がたくさんあって競争力がない。世界的にはメガ・ファーマ4社でワクチン市場7割の寡占が進んでいるが、日本は護送船団方式でワクチン産業が守られている。基本的にワクチンはベンチャーが作って、メガ・ファーマがベンチャーキャピタルのようにそれを買ってスケールさせるが、日本には投資会社的にワクチンを育てるような製薬企業は少ない。武田(薬品工業)は、ワクチンの拠点を作ってファイザーみたいに投資会社を始めているが、それ以外はあまりない」と課題をあげた。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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