緊急事態宣言が東京など1都3県に再び発出されたその日、中国でロックダウンに入った都市がある。石家荘(せっかそう)市だ。
中国情勢が専門でノンフィクション作家の青樹明子氏によると、1月7日に新規感染者数が100人以上確認され、すぐさま都市封鎖となったという。
「1月7日に新規感染者が100人以上確認されたので、ロックダウンした。その日東京は2000人を超していたが、同じ日にロックダウンした石家荘は100人以上の確認。これだけの差がある。石家荘の全市民1000万人に緊急でPCR検査を行い、354人が陽性だった。事態を非常に重く見て、9日午前8時までに市内の120カ所で約1万1700人を強制隔離した」
石家荘市で100人を超えたという7日、東京の新規感染者数は2447人だった。また、中国政府の徹底した感染防止対策は他にも。
「昨年末の12月26日、北京の中心地で感染者が1人確認された。そこで北京市は何をしたかというと、その日のうちに周辺地域・区域の23万4413人にPCR検査を行い、全員の陰性を確認した。ここまでやっている」
中国と日本では国民の感覚の違いがあるという。
「日本人は感染症に対して免疫があまりない。中国人はSARSや鳥インフルエンザなど、感染症と共存して今まで来ているので、感染症の恐ろしさは痛感していると思う。その辺の国民の感覚の違いもあるし、政府のスピード感のなさや決断力の有無といった違いもあるのでは」
日本の決断は「超遅い。緊急事態宣言を出すか出さないか、出すけれども準備に1週間かかるというのは、緊急事態ではない」と指摘する青樹氏。抑え込みが最優先だという中国で、新型コロナウイルスが世界で最初に流行・拡大した武漢は「一番安全」だと言われているという。
「ロックダウンが解除されてからずっとゼロ(人)。中国人と話をしていてもやはり『武漢が一番安全だ』と。共産党政府もメンツをかけて武漢で再び感染者を出すというようなことはしないはずだし、一番重要視している」
その中国で、感染の抑え込みに使われているのが「健康コード」といわれるスマホアプリだ。感染の安全度を判定・表示するなど健康状態を証明するもので、任意のアプリではあるものの、これがないと自由に行動することができないという。
「緑・黄・赤の3つの色が出てきて、信号と同じで緑だったら問題なし、黄色は要注意、赤になったらアウト。例えば地下鉄に乗る時も、車両のところにQRコードがあるのでかざして、もしそこで黄色や赤だったら乗れない。ショッピングモールや自分の勤務するオフィスビルも同じだ。中国人はまとまった大きな団地みたいなところに住んでいるが、そこに入る時も警備員に自分の健康コードを見せないと入れない。政府の強制ではないけれども、現実にこれを使わないという選択肢はない」
■日本で“罰則”検討も…「本当に実効性のある体制づくり見えてこない」
感染拡大防止のため、日本でも罰則導入が検討されている。特措法改正で、飲食店などの事業者が休業要請などに応じない場合、50万円以下の罰金を検討。感染症法改正で、軽症者や無症状者に宿泊、自宅療養を義務化する方針のほか、感染者が入院を拒否し故意にウイルスをばらまく場合、刑事罰を科すなどして実効性を確保したい考えだ。
こうした動きについて、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「軽症者や無症状者に宿泊、自宅療養を義務化したい気持ちは理解できる。しかし、肝心のオペレーションをどうするかという問題が残る。例えば陽性がわかったとして、警察が家にいるかどうかを確認するのか、保健所の職員にさらに負担を負わせるのか。保健所は手一杯でこれ以上の業務はできないと思うし、警察もそこまでやるのは難しい。本当に実効性のある体制をどう作るのかがいまいち見えてこない」と指摘する。
また、罰則による効果については、「経済学の研究などに基づけば、罰則をもって政府が呼びかけても、現状の日本のソフトロックダウンでも、感染症対策に対する影響、特に人出の抑制に対する部分は差がないというデータが出てきている。そうなると、中国のような権威主義的な政治体制による監視社会化は許容できない。民主主義の国家である以上は、社会の行動変容と政治の呼びかけが大事だということになる。どの程度できるかはまだわからないが、効果を持たせるためにはこの社会に住んでいる人たちを説得するしかない」との見方を示した。
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