Krush史上初の快挙が、1月23日の後楽園ホール大会で成し遂げられた。
この日のメインイベントはウェルター級タイトルマッチ。初防衛戦を迎えた山際和希に、加藤虎於奈が挑んだ。虎於奈はスーパー・フェザー級王者であるレオナ・ペタスの弟。レオナは24日のK-1で武尊との対戦が決まっており、2日連続、兄弟でのタイトルマッチも話題になっていた。
だが1.24K-1は開催延期に。虎於奈も12月に肩を脱臼、不安を抱えながらの試合でもあったそうだ。それを感じさせなかったのは、持ち前の格闘センスゆえか。山際にダメージを与えたのは“流行技”とも言えるカーフキック。特に作戦ではなく、その場のひらめきで出したそうだが、これが功を奏した。
最終3ラウンドには山際の粘りもあってかクリンチが多くなり、攻めきれない場面もあった虎於奈。それでもパンチの連打でダウンを奪い、勝利をより確実なものにした。判定3-0、最大4ポイント差は完勝と言っていい。
「今回は勝ちに徹してしまった。次からは倒せるチャンピオンになりたいです」
試合後、虎於奈はそう語っている。魅せる試合が求められるKrushだが、タイトルマッチだけに、まずは「絶対に落とせないという気持ちが大きかったです。どうやったら勝てるのかと毎日、不安で。今は率直に言うとホッとしてます」。
昨年11月の試合では相手の反則で勝利。そこで王座挑戦を表明し、1月の試合が決まった。自身のケガがあり兄の試合延期があり、不安な中での大一番。それを乗り越えての戴冠は大きい。
「兄の試合が延期になったのは、結果として僕にはよかったと思います。僕のセコンドに集中してもらえたので。今度は兄がやってくれると思います」
レオナにとって、武尊戦はキャリア最大の大勝負と言っていい。自分が勝って兄につなげる。そういう思いも虎於奈にはあった。ただ、それだけで勝てるタイトルマッチではないのも確かだ。
「まずは自分の闘いに集中しました。先ばっかり見てたらやられちゃいますから」
そんな弟の戴冠に、レオナはこんなツイートをしている。
〈自分が勝ってチャンピオンになった時よりも、弟が勝ってチャンピオンになった時の方が何倍も嬉しかったな〉
虎於奈はこれから、Krushらしい「倒すチャンピオン」を目指す。その先にはK-1のベルトもある。
「兄弟王者になることができたのは嬉しいし誇らしい。でも兄はもっと先(K-1王座挑戦)に行ってますからね」
支え合うだけでなく競い合ってもいる兄弟王者。「兄に負けてられないですからね」と虎於奈は言った。
文/橋本宗洋
キャプション
Krush史上初の兄弟王者となったレオナ(左)と虎於奈