脚本家・坂元裕二が、2020年の東京を舞台に、今を生きるすべての人へ贈るため書き下ろした映画『花束みたいな恋をした』(1月29日公開)の公開直前イベントが26日、 TOHOシネマズ六本木にて行われ、同作のW主演を務めた菅田将暉、有村架純、そして土井裕泰監督が登壇した。
無観客での開催だった完成報告イベントから、今日はファンを迎えての試写会となり、会場は盛大な拍手に包まれました。念願叶ってファンとの対面を果たした菅田は「ありがとうございます。今日は短い時間ですが、この日を楽しんでいきたいです。」と挨拶。「本当に大変な日々が続いていますが、わざわざ劇場にお越しくださってありがとうございます。ほんの少しの時間ですが、楽しんでいただけたらと思います」(有村)、「今日はありがとうございます。今、観客の皆様の前でご挨拶できるということはとても特別なことで、皆さんの前に立てていることを色々な人に感謝したいです。短い時間ですが、楽しんで帰ってください。」(監督)と、それぞれ喜びを露わにした。
以前にも坂元による脚本作品に出演経験がある二人だが、菅田は「普通の日常を描いたラブストーリーという経験が無かったので、ドキドキする瞬間の表情などは土井さんに演出してもらって、なるほどなと新鮮な思いでした。順撮りのおかげで、今はこれぐらいの気持ちだからとか変に計算せずに麦と絹の日常を送って、素直に楽しいことや悲しいことを経験することができました」と明かす。有村も「本作にはモノローグが結構あるんですが、土井さんがクランクインする前に収録をしたいと仰っていて。そのときはまだキャラクターが定まっていませんでしたが、モノローグの収録でキャッチボールをさせていただいたおかげで、三人で共有できたものがあったのでありがたかったです。モノローグは撮影が終わった後も録り直したんですが、撮影前に録ったものとはまた全然違うものになっていたのも面白かったです」と振り返った。
同作ではカップルの21歳~26歳までの5年間の人生を描いているが、主人公二人の年齢と近く共に今年27歳を迎える菅田と有村。この5年間で大人になった点やライフスタイルなどの変化を尋ねられると、菅田は「お風呂上りに髪の毛を乾かすようになりました(笑)家にドライヤーもなかったし、乾かす行為に意味を感じなかったんです」と暴露。有村は「コップとかお皿とか、作家さんが作ったものだったり、小さなアイテムが増えてきました。好みとかが変わっていったんだなと思います」と好みが大人になったよう。また菅田と有村が共演した『何者』からもちょうど5年が経つが、菅田は「当時はほとんど話したことがなかったんです。変わったのか、知らなかったのか分からないですけど、よく喋る人だなって今回気づきました。好奇心旺盛で、自分が知らないものとか初めて見るものとかへの抵抗感があまりなくて、飛び込んでいける人だなと思います」と、同作で有村との距離がぐっと近くなり、新たな一面を発見した模様。
また同作『花束みたいな恋をした』は、様々な捉え方ができるタイトルだが、“花束”という言葉に込められた意味を菅田は「文字通り解釈すると、花束って色々な色や形が集まっていて、いつかは枯れるもの。この物語も二人が出会って、お互いのことを知っていって、5年間暮らしていって…ある意味文字通りなんですけど、この“みたいな”というニュアンスが、個人的には“美しいもの”というイメージがあります」と分析。有村は「花束というワードから、“瞬発的なときめき”を連想しました。もちろん永遠ではないし、永遠なものってないかもしれないけど、一瞬のときめきがあれば人生楽しめるな、って。」とポジティブな印象を感じたそう。また監督は「あまり決まったイメージではなく、観る人によってそれぞれ考えてもらえればと思いますが、花束は一輪一輪集まっているものなので、彼らの一日一日の気持ちというものが束になったときに、どう見えるかということを意識しました。基本的にはナマモノで、永遠に続くものではない。だからこそすごく美しいのかな、と思いながら作っていました」と語った。
そんな『花束みたいな恋をした』というタイトルにかけて、「今まであった花束みたいな出来事」、「これから経験したい花束みたいなこと」をテーマに、それぞれ考えフリップに記入した三人。まず始めに<花束みたいな打ち上げがしたい>と挙げた菅田は「前までは作品をひとつ作ると最後は皆で打ち上げをして、色々話をして、笑い合って終わる、という日々だったんですけど、今のご時世的に打ち上げができないし、撮影以外で人と会うことがないんです。(撮影が)終わった感じがなければ、先に進める感じもないし、すごく寂しいんです」とコロナ禍での切実な想いを吐露。すると土井監督のフリップからも<花束みたいな打ち上げがしたい>と挙がり、まさかの菅田と丸被り。「皆が集まって、何か月かずっと一緒に作って、また別れて、を繰り返している仕事なので、区切りみたいなものがあるといいなと思いますし、出来上がっていざ公開された後に、一緒に作っていた人と『あの時ああだったね、こうだったね』と言い合いたい気持ちがありますね」と答え、菅田と有村もしみじみ共感。唯一別の答えだった有村も<花束みたいな出会いをしたい>と、これから経験したいことを挙げ「“花束”という解釈の通りに、ときめきというものに出会い続けたいという想いがあるので、作品だったり自分の好きな物や人だったり、煌びやかに輝く瞬間があればいいなと思います。」とコメント。「ただの帰り道がデートになったり、普通に歩いている道も、恋人と一緒に歩いているだけでこんなに景色が違うんだって発見ができる。『花束みたいな恋をした』はそういうときめきの連続だと思うので、眩しいなと思います。」と恋愛についてのときめきも語り、それぞれ思い思いの未来を描きながらトークを繰り広げた。
最後に、昨今、好きな人と思いっきり触れ合ったりと麦と絹のような普通の恋愛をするのも難しくなってしまった中で、恋をしている方、これから恋をするかもしれない皆さんへ「この映画は坂元裕二さんの言葉を借りると、恋愛自体の面白さだったり美しさを描いた作品です。結果よりも過程の楽しさ、人と人が出会う面白さなど、見てくださった人の恋愛だけじゃなく、人生にユーモアが産まれたらいいなとすごく思います。今はこんな状況ですけど、人との出会いを一緒に楽しんでいけたらなと思います」(菅田)、「恋愛はきっと自分自身の気持ちを豊かにしてくれるものだと思うので、辛い恋愛だったり、幸せな恋愛だったり様々あると思いますが、この映画を観て、恋愛の醍醐味みたいなものを皆様の中で感じてもらえたら嬉しいです。二人が恋愛をしている日記のようなお話なので、ぜひ温かく見守ってくれたら嬉しいです」(有村)、「この麦と絹という二人の主人公の恋愛を通して、彼らと同じ感情になったり、観ている方達にも同じ体験をしてもらいたいという映画です。今日ご覧いただいて色々なことを感じられたら、そのことを周りの方達にも伝えてほしいと思いますし、伝えたくなるような映画かなと思います。」(土井)と、それぞれメッセージを贈りイベントは終了。声が出せない状況でも拍手や笑顔といったファンの熱気に溢れながら、幕を閉じた。
(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会