「今でも少年法は十分厳しい。むしろ親が責任を取らないことが問題だ」少年犯罪への厳罰化や実名報道解禁を求める声に水谷修氏
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 20歳未満の少年の更生や保護を目的に、事件を起こした際の氏名や顔写真などの公表を制限する「少年法」。これまで少年による凶悪犯罪が起きる度、その妥当性をめぐる論争が巻き起こってきた。

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 去年10月には法務省の審議会が少年法の改正要綱を上川法相(当時)に答申。その中には18歳、19歳の被疑者による強制性交や強盗なども刑事処分の対象とするほか、起訴された段階で実名報道ができるという内容も盛り込まれている。一方、3年以上にわたり検討が続けられているのが、少年法の対象年齢を現行の18歳未満に引き下げようという改正案だ。

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 そんな中、大津地方裁判所は25日、通行中の女子高校生4人に対する強制性交などの罪に問われていた元大学生(20)に対し、懲役5年6カ月の有罪判決を言い渡した。問題になっているのは、罪に対する被告の認識だ。朝日新聞によれば、裁判の中で検察側は「(少年法の対象となる)未成年のうちにレイプをいっぱいして、20歳になったらやめようと思っていた」と供述していたと指摘。計画的な犯行だと非難していた。

■「むしろ対象年齢を22歳や23歳に引き上げた方がいい」

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 EXITのりんたろー。は「いつも被害者が置いてきぼりになっている感覚がある。ケースや罪に応じて、きちんと裁くことはできないのだろうか」、また、また、「僕は少年法に守られていた側だった」と話す兼近大樹は「おかげで更生できたパターンも、そのことでかえって非行に走る人も見てきたし、罪を繰り返す人も見てきた。だから罪を重くしたところであまり意味はないと思う。ただ、名前は報じるべきだと思う。名前が報じられるからこそしたことを背負えるようにもなると思うし、あの時のことがあって今の自分がいると振り返ることも出来ると思う」との考えを示した。

 いったいどうすれば少年法の趣旨は守られるのだろうか。また、対象年齢の引き下げや厳罰化など、改正する必要はないのだろうか。

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 教育家の水谷修氏は、元大学生について「バカな犯行だ。これだけの凶悪な犯罪を繰り返していれば、必ず家庭裁判所から地方裁判所の方に逆送され、実刑を食らうわけだし、そうなれば未成年であっても前科は一生残る。その辺を全くわかっていなかった。社会科の教員がちゃんと教えなかったということだ」と指摘する。

 他方、水谷氏は少年法の対象年齢引き下げや実名報道の解禁については否定的な立場を取っている。

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 「人間は3つの要素で決まると言われている。遺伝、環境、そして学習だ。例えば貧しさによって中途半端にしか学習ができておらず、未熟な人間だからこそ罪を犯す。そこは守っていこうというのが少年法の意味だ。そして国民の三大義務のうちの、自立して勤労と納税をするようになって初めて大人になる。だから僕は選挙権年齢を18歳に引き下げることにも反対してきた。むしろ少年法の対象年齢は22歳や23歳に引き上げた方がいいとさえ思っている。なぜなら、今や6~7割が専門学校や大学や短大に進学し、親に養ってもらっている。自立していないという意味では、やはり少年だ。

 実名報道についても、例えば飴玉一個を盗んだ場合はかわいそうだが、被害者のことを考えれば、人を殺した場合ならいいではないか、という意見もあると思う。しかしそれは復讐法の考え方であって、やはり少年は少年だ。罪は憎い、でも人は憎くない。僕は教員でもあるし、未完成の人間は守って、やり直しができるようにしなければならない。例えば名前がネット上に残ってしまっていることに悩むいじめの加害者の相談を受けたことがある。それが付いて回ることで、進学先や就職先でいじめに遭っている子もいる。これはむごい」。

■「償いをさせるため、親の厳罰化をして欲しい」

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 新宿・歌舞伎町で「日本駆け込み寺」を運営、数多くの少年に携わってきた玄秀盛氏は「これだけ情報を得られるツールもある時代に、いつまでも守られていることには疑問も感じている。18歳になれば運転免許も取れるし、私が活動している歌舞伎町を起点に考えれば、18歳のキャバだってデリだってホストだっているし、税金も収めている。酒やタバコ、万引のような微罪は別にして、他人に危害を加える罪、殺人のような重い罪の場合、18歳ならもう立派な大人なんだから。むしろ“半分大人、半分子どもだから”というグレーゾーンがあるのが良くないと思う。曖昧な線引きはやめるべきだ」と指摘。

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 その上で、「最初は小さな悪いことから始まるし、大抵は周りをキョロキョロ見ながらやる、というパターンが多い。そして、そこから非行が凶悪化していく。悪いことだという認識に乏しいことも意外に多いから。最初にきちんと補導しておくことが肝心だ。例えば僕のところにボランティアに来た16歳の子は、振り込め詐欺の“出し子”をやって捕まった。本人は地元の先輩に“金を下ろしてこい”と言われ、何も考えずに引き出しに行ってパクられた。そして、警察で初めて犯罪に加担していたことを知った。保護観察処分になったが、“いい経験をした。ちょっとしたことで犯罪に手を染めることになるとわかった”と言っていた」と話した。

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 こうした意見も踏まえ、水谷氏は、「世界的にみれば、日本の少年法は現行のものでもすでに十分厳しい」と指摘する。

 「皆さんは大人の場合は厳しいと思っているかもしれないが、日本では刑法犯の約73%は刑務所に行かず、起訴猶予処分などで野に放たれるわけだ。一方、少年の場合は飴玉一個を盗った場合でも捕まれば必ず家庭裁判所へ送致され、中学生なら3週間、高校生以上なら4週間、鑑別所に閉じ込められる。調査官が家庭や学校での状況などを調べ、保護観察処分を受けたり、場合によっては自立支援施設に入所させたりするし、罪が重いケースなら少年院に送られることもある。少年院にいるのは刑務官ではなく、法務教官という先生だ。その人達は、一生懸命に反省をさせ、授業をしたり資格を取らせたりする矯正教育に取り組んでいる。そのようにして、子どもたちをなんとか真っ当な道に戻していこうというのが少年法だ。決して甘いものではなく、世界的にも評価されている、よくできた法律だ。少年刑務所の中でも、その子にあった矯正プログラムや就学プログラム選べるようにしようという“新自由刑”という考え方がある。これもすごくいいことだと思う。

 それなのに成人と同じように裁いたり、実名報道をしたりするようになれば、高校や大学は片っ端から退学させなければならなくなるだろう。そのようにして捨てられた子が自暴自棄になり、新たな罪を犯すかもしれない。僕は法務省の会議で問題発言をしたこともあるが、厳罰化しろとか実名報道をしろという意見の背景にあるのは、償いができていないということだ。少年法の穴でもあるが、その子を育てた親が何の責任も取らないというのが問題だ。民事訴訟で支払いを命じられた賠償金を親が支払っていないケースもある。子どもの厳罰化はしなくていいから、そういう子どもを育ててしまったという償いをさせるため、親の厳罰化をして欲しい」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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