ファンも思わずにやける将棋界の「どうぞ、どうぞ」相手に敬意を払う譲り合いシーンが話題
【映像】ABEMAでみる

 日本でバラエティ番組を見ていたら、一度は目にしたことがあるだろう「どうぞ、どうぞ」なシーン。これが将棋界にも生まれることがある。1月29日に行われた朝日杯将棋オープン戦の本戦トーナメント1回戦。深浦康市九段(48)と佐藤天彦九段(33)の対局前に、まさに「どうぞ、どうぞ」な瞬間が訪れた。ファンの間でも、この動きには「いきなり譲り合い」「見逃さなくて良かった」と大賑わいになった。

【動画】将棋界の「どうぞ、どうぞ」(3時間43分ごろ~)

 「どうぞ、どうぞ」と言えば、お笑いトリオ・ダチョウ倶楽部の持ちネタの一つ。上島竜兵が気が乗らない企画について、リーダー肥後克広と寺門ジモンが「じゃあ、おれがやるよ」「いや、おれがやるよ」と手を挙げた後、上島が「じゃあ、おれがやるよ」と行った瞬間、「どうぞ、どうぞ」と肥後・寺門が手のひらを返したようにお願いする、というのが一連の流れ。このネタがヒットしたことをきっかけに、様々なシーンで「どうぞ、どうぞ」と譲り合うシーンで、ダチョウ倶楽部の名が引き合いに出されることも少なくない。

 今回の「どうぞ、どうぞ」なシーンは、特にネタというわけではなく、本当の譲り合いだ。譲り合ったのは、駒箱をどちらが開けるかというもの。将棋の世界では、対局前に上位者が駒箱を開け、盤上に駒を出すのが一般的になっている。プロの将棋界ではタイトルの有無、段位などによる序列が上の棋士、段位が同じ場合はプロ入り(四段昇段)が早い方が駒箱を開けることがほとんどだが、この譲り合いは度々起こっている。

 今回の深浦九段と佐藤九段のケースについて確認すると、段位は同じ九段。四段昇段は深浦九段が1991年10月(棋士番号201)、佐藤九段が2006年10月(棋士番号263)。どちらも現在はタイトルを保持していないため、深浦九段が駒箱を開けると思われた。

 両者、対局の用意を整え、盤上に置かれた駒箱を開けるのみ、といった状況から数秒経過したところ、深浦九段が手を差し出しながら「どうぞ」と言ったことから、今回の出来事が始まった。佐藤九段からすれば、よもや自分に譲られると思っていなかったため、すぐに「いや、どうぞ」と返したものの、深浦九段は再び「どうぞ」。2度言われたことで、佐藤九段も空気を察したのか「あっ…じゃあ、すいません」と軽く一礼してから、駒箱に手をつけた。

 深浦九段が譲った理由として考えられるのは、名人の獲得歴だ。タイトル獲得数だけ見れば、両者とも3期ずつ。ただし深浦九段は王位、佐藤九段は名人だ。現在8つあるタイトルにも序列があり、最高峰は竜王、次いで名人、王位は3番目だ。また、名人は最も歴史あるタイトルでもあり、それを目指す順位戦はプロ将棋界のベースにもなっている。考えられる理由として、この名人を3期獲得している佐藤九段に敬意を評したというのが最有力だろう。また、順位戦では現在、深浦九段がB級1組、佐藤九段がA級であったこともあるだろう。

 このシーンを見ていた視聴者からも様々な感想が寄せられた。コミカルにも見えるシーンだけに「ウケるw」「譲り合いw」「どうぞどうぞどうぞ」「ダチョウ倶楽部www」といったものから、やはり名人経験者に対してのものだと考える声も多く「実力制名人だもんな」「名人経験者を立てる感じ?」というコメントがあった。

 駒箱と同じく、上座・下座どちらに座るかなども、同様に譲り合いが起きる場面。いざ対局となれば勝利を譲ることはないが、盤外ではそれとは別に、いろいろな気遣いや心配りが生まれている。

ABEMA/将棋チャンネルより)

駒箱を譲り合う両者
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目元を押さえた脳内でイメージ
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人形フリフリする藤井王位・棋聖がかわいい!
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