先月18日の衆院本会議での一幕。菅総理が施政方針演説で「3月11日であの東日本大震災から10年と…」と、新型コロナウイルス対策から話題を切り替えると、「コロナ対策これで終わり?」「もう終わりですか、コロナは」「黙って聞け」といったヤジが飛び交った。
“議会の華“と呼ばれることもあるヤジ。しかし、それが原因で審議がストップすることもあれば、コロナ対策が叫ばれる中、密になりがちな場でヤジを飛ばすことへの懸念の声もある。
3日の『ABEMA Prime』では、国会の不規則発言について、“ヤジ賛成派”の現職議員に話を聞いた。
■「品のないヤジはやめた方がいい」「褒められたことではないと思うが…」
日本維新の会の片山大介参議院議員は、「ヤジそのものについては賛成派だが、品のないヤジはやめた方がいい」と話す。
「ヤジが国会や法案に影響を及ぼすかと言えば、及ばさない。しかし、委員会や本会議などの質疑では、党を代表して質問に立った同志に対し、ヤジという形の応援で盛り上げることによって、“我々の言っていることは正しい”という雰囲気に持っていく効果がある。あるいは皆さんが笑ったり、相槌を打ったりできるようなヤジが出ることで、審議が円滑に進むこともある。だからヤジの全てを否定するわけではない。
ただ、私はNHK記者だったので言葉遣いは大切にしてきたし、質問に対して、より深い答弁を引き出そういう意味で“もっと答えるべきだ”といったヤジを飛ばすのは良いと思うが、人格を否定したりするような言い方は良くないと考えている。その意味では、ヤジはもっと可視化したほうがいい。なぜなら、委員会も本会議も、マイクは登壇者の声は拾うが、ヤジは拾わないからだ。もっとヤジが皆さんに聞いてもらえるようになれば、いいヤジ・悪いヤジがわかるようになる」。
また、立憲民主党の本多平直衆議院議員は、「正常な運営には議会のヤジも必要だ」と主張する。
「沖縄の米軍機の墜落の問題について、“それで何人死んだんだ?”というヤジを飛ばして副大臣を辞職した議員もいる。僕もネットに汚い場面が流れているが、そこは自分の発言として責任を負っていると考えている。ヤジそのものはそんなに褒められたことではないと思うが、そのようにして多数派が動かしていく中で人の命に関わるような法案が通ってしまうかもしれないとしたら、評判を得ようとか、ヤジを飛ばさないほうがスマートだから、ということではなく、おかしいことはおかしいと言わなければならないと思う。
小さな話だと思われるかもしれないが、これが僕たちにとってはすごく大事なことだ。例えば総理が関係のないことを長々と答えようが、総理に聞いているのに別の大臣が出てこようが、質疑の持ち時間は一定だ。そして、質疑が紛糾したときには各党の理事と委員長が相談をする。このとき、持ち時間が減らないよう時計を止めるのがルールだ。ところが最近の委員長は総理や閣僚が疲れないように、時計を止めないことがある。だから仲間の持ち時間が減っていっている時には、怒って“委員長、時計を止めてください”と5回も10回も言う。そうすることによって、やっと時計が止まる。あるいは予算委員会にしか出てこないので、責任者の総理の答弁が聞きたい。それなのに、委員長がわざと別の大臣を当てることもある」。
さらに本多議員は「切り取られてネットに上がっている映像やテレビのワイドショーに取り上げられた映像を見ると、国会が揉めている場面が多いと思う。しかし国会はほとんどの審議がネットで見られるので、一度で良いので揉めていない、ヤジのない質疑も見て欲しい。そこでは委員長も大臣も真面目に答えている。そういう真剣な戦いの中から出てくる味方へのエールであり、敵への言葉であるヤジもあるということも分かってほしい」と訴えた。
一方、ドワンゴ社長で慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「かつて東京都議会で塩村文夏議員に対して“結婚しろよ”と酷いヤジを飛ばした議員がいた。完全なセクハラだったと思うし、ヤジによってそういう問題や社会背景が浮き彫りになることもある。内容によっては総理が謝罪に追い込まれるケースだってある。飛ばす以上は責任を持ち、何かを動かしたいという意思を持ってやってほしい」と指摘した。
■コロナ禍でもなかなか進まないオンライン化
他方、コロナ対策の観点からは国会内の感染リスクの高さを懸念する声もある。
本多議員は「党内の会議や役所との打ち合わせについてはオンラインも導入されている。衆議院本会議では奇数の番号、あるいは偶数の番号だけ出て、席を一つ空けるという工夫をしたり、委員会の質問がタブレットもOKになるなど、一歩一歩進んではいる。ただ、正直言って、ちょっと遅れていると思うし、もっとできることがあると思う」とコメント。
片山議員は「参議院は約240の定数に対して、貴族院時代の名残りで座席が450席くらいある。だから1つずつ間隔を空けて全員が着席しているが、そもそも広くはないので、確かに密になる。銀座のクラブの問題が出ているが、根底にはこうした密に対する議員の問題意識が足りないのだと思う。また、衆議院は委員会によってはタブレット持ち込みが認められているが、参議院は認められていない。“オンライン国会”というのも法的には可能だと思うが、やはり“前例踏襲”な部分があり、どうしても天井というか、越えられないものがあると感じている」とした。
夏野氏は「企業の取締役会でもオンラインで実施しているところもあるので、実際に集まらないと責任が取れないというのは昭和の考えだと思う。ただ、例えば自民党の部会にZoomで参加してみると、司会に振られないとなかなか発言できない雰囲気がある。多くの人がリアルで集っている場合、やはりオンラインの人が不利になってしまうので、全員がオンライン、と決めない以上、議員さんたちが率先してオンラインに切り替えることは無いのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
▶映像: 「国会にヤジは必要」主張する議員の想いは?
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