プロレスリング・ノア11年ぶりの日本武道館大会(2月12日)が目前に迫ってきた。全盛期のノアはこの会場で頻繁にビッグマッチを開催、数々の激闘が展開されてきた。武道館への“帰還”に深い感慨を抱くファンも多いはずだ。
もちろんそれは選手、関係者、OBも同じこと。全日本プロレスでのデビュー翌年から引退試合まで武道館のリングに上がり続け、この会場での試合でプロレス大賞ベストバウトを受賞したこともある小橋建太氏は、日本武道館を“真の聖地”と呼ぶ。
武道館大会当日は中継の解説を務める小橋氏に武道館という会場について、またノアの躍進について語ってもらった。
――ノアが久々に武道館大会を開催すると聞いての率直な気持ちはいかがでしたか。
「まずは素直にビックリしました。僕も引退試合で経験しているんですが、武道館というのはそう簡単に借りられる会場ではないんです。団体に勢いがあっても、それだけではダメ。武道館で大会をやるというのは、周囲のサポート態勢も含めて強くなっているということでしょう」
――このところのノアの充実ぶりを、小橋さんはどのようにご覧になっていましたか。
「昨年、コロナ禍の中で無観客から始まって、横浜武道館や代々木第二と大きい会場でやってきましたたよね。そういう攻めの姿勢から、会社、選手が前向きになっているのを感じました」
――以前、小橋さんは武道館を「真の聖地」だと語っていました。
「雰囲気、格式、すべてが日本の最高のプロレス会場だと思います。やっぱり他の会場とは違いますね。僕のデビューは1988年。翌年の89年から引退する2013年まで武道館で試合をしてきました。思い出は尽きないですね。ベストバウト? とても決められない(笑)」
――試合以外の部分で、武道館での印象深いエピソードはありますか。
「試合前にリングで練習をしている時に、(ジャイアント)馬場さんが天井から吊るされた国旗を見上げて“あと何回、この国旗を見ることができるかなぁ”と。僕もそういう思いになったことはありますね」
――思い出深い武道館に、ノアが帰ってきたという感慨も強いかと思います。
「全日本プロレス、ノアという流れの中で“戻ってきたぞ”という思いは強いですね。今のノアは武道館を経験していない選手も多いので、経験させてあげたいという気持ちもありました。今回はノアがもう一段階飛躍するチャンスだと思います。団体にとっても選手にとってもね。(武道館は)プロレスラーのパワースポットですよ。ここで試合をすることで1ランクアップできる」
――武道館で初めて試合をする若い選手にアドバイスをお願いします。
「普段通りの自分を出してほしいですね。いつもと違うものを出そうとして緊張してしまうよりも、普段通りの自分を出せばいい。そうすればおのずと答えは見えてくると思います。みんなそれだけの力もあるでしょうし」
――2.12武道館の注目カードは?
「それはやっぱり潮崎豪vs武藤敬司ですよ。豪がチャンピオンになる前に、話をしたんです。“お前が引っ張っていかないとノアは伸びていかないんだ”とね。時代を引っ張る人間がいて、ライバルがいて、さらにその周りにも選手たちがいる。そういう形にしていかないと面白くない。武藤さんとの闘いに勝つことで、時代を作ることにつながるでしょう」
――試合のポイントは?
「武藤さんはキャリアも人気もある。だけど武藤さんにとってこの試合は新しい挑戦ですよね。自分への挑戦という面もある。逆にチャンピオンの豪としては負けられないですよ。負けたら今後の浮上が難しくなってくるでしょう。すべてにおいて豪のほうがきついと思います。武藤さんはここで負けたからって価値が落ちるわけではないですし。これは豪のプロレス人生をかけた試合になると思います」
――武道館大会を経て、今後のノアに期待することは?
「今回は客席数に制限がありますよね。コロナが収まってきたら、いっぱいの武道館でできると信じてます。選手たちには、お客さんがいっぱいの会場で、お客さんの声援を力に変えて闘う経験をさせてあげたいです」
――最後に、会場や中継でこの大会を見るファンのみなさんにメッセージをお願いします。
「プロレスを見て、ノアを見て、今のモヤモヤした気持ちを吹っ飛ばしてほしいなと思います。また大会の前に勉強じゃないですけど、ノアの歴史、昔のことを振り返ってもらえると、より楽しめると思います」