週1休めるかどうかの最前線にいる研修医、“白衣”が心の支えに「ボタン1個でもテンションが上がる」 コロナ禍のモチベ向上術
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 「私たちも検査をしたり治療したりしているので、精神的な部分でも緊迫した状況が刻々と迫っている感じ」

 そう話すのは、愛知県の市民病院で働く前島貴子さん。研修医2年目として、内科診療全般の診察にあたっている。緊急事態宣言真っただ中の今、愛知の医療現場もひっ迫しているという。

【映像】「テンションが上がる」前島さんの白衣

 「部屋の数も満床状態で、改築して新たに陰圧室を増やして、コロナ患者さんをたくさん受け入れるようにしている」

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 さらに、足りないのは病床だけではない。新型コロナ以外の患者も診ているため、病院のスタッフの数もやはり不足しているという。そして、前島さん自身も研修医でありながら、新型コロナの最前線での診療にあたっている。

 「コロナの患者さんを入院させるまでの手続きや診察、あと入院するのか自宅待機なのかといった入院の可否についての診察をしている。手袋を二重にするとか、マスクはN95の上にサージカルマスクをするなど、国が定めた感染防御に関しては着方から脱ぎ方まで全部私たちは徹底している。そういう点ではいいと思うが、第一線にいる場合は非常に緊迫している状況になる」

 感染の恐怖と隣り合わせでの病院勤務。さらに、当直の態勢も増えたことで、土日も出勤。週に1回休めるかどうかという状態で、患者と向き合う日々が続いている。そんな前島さんにとって、働くモチベーションのひとつになっているのが、ある白衣の存在だ。

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 「日中余暇はあまりないが、せめて少し気持ちを高めたいと、支給されている白衣は着ずにクラシコの白衣を着ている」

 クラシコというメーカーが作る「白衣」が心の支えだという前島さん。白衣というと病院から支給されるものが一般的だが、クラシコは「ジェラート ピケ」などの有名ブランドとコラボ。機能性だけではなくデザイン面でも優れた独自の白衣を作っている。

 「例えば、手を洗う時とかにボタン1つを見るとか、ボタン1個でもテンションが上がる。1枚着ることによって、やはり自分の身が引き締まるし責任がすごく出てくるので。こう言ったら失礼だが、しわがよったダラっとした白衣を着ているよりは、きちっとした白衣を着て自分の身を律するといった意味ではいいと思う」

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 『ABEMAヒルズ』はそのクラシコにも話を聞いた。商品企画を担当する中尾妙さんは、以前看護師として働いていた時に感じた思いが白衣作りに生きていると語る。

 「当時はちょっと気持ちが惨めになっちゃう時があって、でもそれって何でなんだろうと。CAさんとか憧れの職業として挙がってくるけど、ナースは手に職という意味では挙がってくるけど“かっこいい”とか憧れるような感じでは挙がってこない。すごくいい仕事だし、みんなかっこよく誇りを持ってやっているから、そこはずっと思ってるところはあった」

 一般の支給される白衣に比べれば値段は高いが、価格帯を抑えたものや他業種とコラボした「かっこいい白衣」を今後も作り続けたいと中尾さんは話す。

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 「本当に過酷な状況の中で働かれている方など、いろんな状況があると思うが、医療従事者の方だからこそ、快適にかっこよく仕事をしていきたいのではないか。それを少しでも助けられるポジションにいるんじゃないかという思いでやっている」

 仕事場の制服や服装で働くモチベーションに影響はあるのか。同じくクラシコの白衣を着ているという臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「僕も病院で仕事をする上で、(服装は)モチベーションに関係すると思う。心理学の研究でこれまでに多くの検証がされてきていて、2006年のコネチカット大学の研究では、服装によってパフォーマンスが変わると。特に女性でその差が大きいことが指摘されている。仕事上限られた範囲ではあるが、できるところで工夫して、自分の気持ちを整えたりモチベーションをアップさせたりするのはすごく大事だ」と話す。

 また、コロナ禍で働くモチベーションを向上させる方法として、「選ぶことを楽しめる環境」「ハッピーな組織とハッピーな同僚」「報酬に直接関係しない作業の充実」の3つをあげた。

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 「『選ぶことを楽しめる環境』は、まさに服装のこともそうで、学生なんかも縛られる環境や校則が多すぎるとなかなかモチベーションがあがらないということがある。可能な範囲で身の回りのもの、日常的に使うものの選択の幅を広げることは一番簡単にできるモチベーションを上げる術。

 『ハッピーな組織とハッピーな同僚』は、アメとムチで人を育てるという発想は昔からあるが、これは学術的には崩壊している論理で実はうまくいかない。同僚や組織の中でお互いにポジティブなストロークを送り合うサイクルができている方がよりモチベーションや生産性はあがる。

 『報酬に直接関係しない作業の充実』は、多くの人が職業を選ぶ上でお金を気にするのは当たり前だが、一方で仕事はお金だけではない。例えば、なりたい自分になる自己実現や自分が何者であるかという自己同一性、さらには自尊心にも関わってくる。そういう意味ではお金は外発的動機づけで、内発的動機づけの方が仕事に向き合うモチベーションに大きく関わる。同じお金をもらっていても、やりがいのある仕事や立場、チャンスを与えられるといった環境は本質的なモチベーションにつながる」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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