東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長による問題発言の余波が続いている。
昨日までに大会のボランティアを辞退した人はおよそ390人に上っており、会見での森会長の「老害が粗大ごみになったのかもしれないから、掃いてもらえばいいのではないか」との“開き直り”に対し、JOC・日本オリンピック委員会が入るビルの前ではサイレントデモ「ホウキデモ」も行われている。
■経団連中西会長「SNSっていうのは恐ろしい。炎上するから」
組織委は7日「森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なもの」とするコメントを公式サイトに掲載。一方、森会長の進退については「現時点で議論する予定はない」としている。また、政財界からは、本人の会見を持って問題は終了しており、森会長の続投を容認するとの見解も相次いでいる。
萩生田文部科学大臣は「本人も反省をしているので、残り半年になったオリンピックの大会の成功に向け、引き続き努力をしていただきたい」、自民党の世耕参院幹事長は「日本のどのリーダーよりもIOC等関係者との人脈も個人的信頼関係も強く持っている方。ご本人がしっかり反省の念を述べられているわけだから、開催の責任をぜひとも全うしていただきたい」とコメント。
さらに経団連の中西宏明会長は「日本社会には正直言ってちょっとそういう本音のところがあるような気もしますしね。それがパッと出てしまったということかもしれませんけど、こういうのをワッと取り上げるSNSっていうのは恐ろしい。炎上するから」と語った。
■森会長が逃げられない構造に?
失言が出た当日、森会長と番組で共演したというスポーツジャーナリストの二宮清純氏は、「隣にいらっしゃったので、“認識不足も甚だしい、これはアウトだ”とはっきり申し上げた。戦前の教育を受けた人に特有のものと言ったら怒られるかもしれないが、うちの親父もそうだったし、今さら変われと言っても無理だと思うだからといって許されるものではないが、反省するかどうかも疑わしい」と明かす。
「そもそも男性が、女性が、など言うこと自体が間違いだ。近代スポーツというのは男のカテゴリと女のカテゴリしかないので、どちらにも出られない選手たちがいる。しかもそういう選手たちはスポーツ仲裁裁判所に訴えを起こせば、試合にも出られない。この問題に対して、IOCのバッハ会長は“同情はする”とは言っていても、“改善する”とは言ってない。今回の問題でIOCがいち早く火消しに走った理由の一つには、自分たちとしてもジェンダーの問題には触れられると都合が悪い、という思いもあるのではないか」。
さらに政財界からの反応については、「“辞めてほしい”という声が9割くらいに達すると思っていたので、かなり少ない。身内の人が“辞めてほしくない”と思っている背景には、仮にオリンピックが中止になった場合、多額の協賛金を出しているスポンサー企業などからの提訴の可能性があり、その“敗戦処理”を誰が引き受けるか、という問題があるからだ。
森さんは口癖のように“タダでやっている”と言っているが、事実、秘書や車の費用も全て自分で出している。しかも組織委員会はタイタニック号のように浸水が始まっている。だから“森さん、あんただけ逃げるのはずるいよ”“あんた、最後責任取りなさいよ”という感じで、逃げるに逃げられないようにしている構造があると思う。後任として安倍前総理の名前も挙がっている。たしかに元総理大臣くらいが出てこないことには交渉にならないが、安倍さんだって今ここで火のついたバトンを受け取ってプラスになることは一つもない」」と話した。
■「叩いているメディア企業だって女性の役員は本当に少ない」
組織委内部の人に話を聞いたというジャーナリストの堀潤氏は「政治家から様々なリクエストが寄せられるが、それらに対して時に交渉し、時に跳ねのけられるのは森さんしかいない。森さんがいなくなったら開催できない、とういう空気感が本当にあるようだ。しかし、組織委員会の理事や評議員の皆さんの中には著名な表現者や名だたる企業の関係者の方々もたくさん入っている。沈黙せず、発言を支持するのか支持しないのかの表明をすべきではないか。
森さんに何を言っても変わらないとは思う。しかし、逆にそのことが日本社会はこうだったんだな、ということを再認識させられたし、森さんだけを炎上させ続け、恩恵に預かったまま穏便に、という取り巻きの方が大きな問題だと思った。世界でこれだけSDGsなどが叫ばれている中、オリパラ後のことも考えれば、“やっぱり日本には投資できないよね”というリスクが生じることにもなりかねない」。
お笑いタレントのパックンは「森会長の発言だけでなく、実態にも注目すべきだと思う。ことの発端は女性比率の問題だったが、菅内閣の顔ぶれを見ても、女性は24名中2人だけ。皆さん、なぜ毎日怒っていないのか。そしてアスリート・ファーストの観点で言えば、最近のアスリートの動向を僕らメディアは取り上げない」と指摘。カンニング竹山は「“老害”とかいう言葉はあまり好きではないし、こういう言い方をしてはなんだが、森会長は、だいぶおじいちゃんだ。あの世代の人って結構その考えのままずっときている感はあると思う。でも、時代の流れというか社会への考え方というのが昔と今ではだいぶ違う。僕も来月には50歳になるが、やっぱりここ10年くらいで“こういう考えはいけないんだ”とか“今これは社会には向かないんだ。考え方を改めなければ”という考えでやってきた。森さんは裏側の仕事がものすごくできると聞くけれど、だからといって中心にいていいのだろうか」と疑問を投げかけた。
さらにメディアアーティストの市原えつこ氏は「さすがジェンダーギャップ指数121位の国だな、という感想を抱いた。自分もヨーロッパで展示をする機会があるが、美術館のトップやシニアキュレーターなど、権威があるポジションを女性が務めている。そこにびっくりしてしまった自分に逆にびっくりするというか、小さいことから偉いポジションにいるのは男性で、女性はそのサポート、お飾り、パシリみたいなことが知らず知らずのうちに刷り込まれてきたんだと思う」と話した。
こうした意見に対し、二宮氏も「私も、森さんが辞めて女性の会長になった方がいいとは思う。しかし、それでこの問題は終わりました、ということでは何も変わらない。上場企業の6割には女性役員がいないと言われているし、メディア企業だって女性の役員は本当に少ない。僕も含め、森さんを叩く以上は、叩いている自分たちの手もしっかり見ないといけないと思う。“森辞めろ”と言っているメディアに、一体どれだけの女性の役員がいるのかと。結局は、私たちの社会のあり方が問われているということだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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