埼玉県戸田市議選(先月24日に投開票)で912票を得票、見事当選を果たした「スーパークレイジー君」こと西本誠氏。刺青、暴走族、少年院になどの過去を公にし、去年の都知事選では金髪に特攻服で踊るという派手な選挙活動でも注目を集めていた。
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遠い親戚がいたこと、保育園から一緒だった親友がいたことから、戸田市にはよく遊びに行っていたという西本氏。昨年8月頃には出馬を決めていたという。
「歌って踊ってというイメージだった都知事選の時とはわけが違う。新しい方が来ると、なんとなく煙たがる方がいるのかなというのは耳にはていたので、“町を荒らしにきた”とか“売名で来たのか”などと言われないよう、戸田市議選ではやり方を変え、地道に挨拶をした。特攻服は着てしまったが…」。
問題が起きたのは市議選当選後の今月4日、『ABEMA Prime』に生出演して少年の更生について語った直後のことだった。立候補時には家族のことも紹介、度々相談もする間柄だったという市選挙管理委員会の事務局長に呼び出され、「貴方の当選無効を狙った人がいる」「自分から辞職した方が貴方の株があがる」と告げられた(西本氏のTweetより)という。
「実は“大至急、話がある”という市役所からの“鬼電”が出演直前からあった。出演後、“どうしても今日中に”ということだったが、もう夜の11時。8時以降はあまり外にてはいけない時期だし、妻には“写真に撮られて変なことされるぞ”“ハメられているからやめな”とも言われたが、ちょっと深刻そうだったし、寒かったのでドライブをしながら2時間ほど話を聞いた」。
公職選挙法では選挙に出る場合、立候補する自治体に3カ月以上住所があることが要件とされている。西本氏が、これを満たしていないのではないかとの指摘があったという。
「“本当は言ってはいけないことだが、君の当選無効を狙って巨大な組織が動いている。異議申し立てが15日だから、その前に伝えないと思った”ということだった。一部でもいいから証拠はあるかと言われたので、その場で持っていたものを見せた。“僕としては完璧にやっていたつもりなので”と言ったたが、“それでも相手がすごいから時間もかかるし、多分ヤバいと思う”と。最終的には、“選挙では集まってくれていた子どもたちが悲しむから”という、遠回しな辞職の仕方まで教えてくれた。仲良くさせてもらっている方だったので、誰かに言わされている、何か違う力が動いていると思った。妻には“録音しとけ”などと言われたが、そういうことはしたくなかった」。
そして今月15日になると、市民から「居住実態についての疑問がある」という内容の異議申し立てが提出された。18日に会見を開き、住民票は去年10月5日に戸田市に移しており、後輩の家に住んでいたことを説明。居住実態を示す証拠についても、「電気、ガス、水道(明細書)以外にも、スーパーとかコンビニとかのレシートなども、できる限り持っておきなと言われていたのでとってある」と話した。
一方、市選挙管理委員会は「住民票があるだけでは無効で、最低3カ月以上の居住実態がないと公職選挙法違反になることを伝えたかった。深夜に面会したことは不適切であった」とした上で西本氏の居住実態の調査を進めるとともに、事務局長を他部署に異動させた。
「色物だし、もともと戸田市で生まれ育ったわけではないので、想定内ではあった。やはり新しい、若い方が別の町から来れば、“お前は過去にやらかしていることがSNSでバレる。色んな異議申し立てが来るから覚悟しておけ”というのは、去年の8月くらいから言われていた。むしろ選挙管理委員会に“まだ異議申し立て来ていないのか。準備があるので”と言っていたくらいだった。
もともと大阪へ行ったり沖縄へ行ったりもしていたし、異議申し立てに備えて、4カ月前の9月末くらいには引っ越しをしていた。ただ、過去のことがあって自分の名前では賃貸契約ができない。当選してからも審査に落ちているくらいなので、同居人の名義の物件に住んでいる。それでも大丈夫か、というやりとりもしてきた。“スーパークレイジー君が来るのではないか”と噂になっていたというので、選管としてもわかっていたと思う。当選後、僕について調べが入っていたのは気付いていた。大阪に何日いたとか、僕の名義人の地元とか、僕でも知らないことまで調べてられていて、おかしいなとは思っていた。団体の名前は言わないほうがいいなと思っているが、やはり何かの力が動いている」。
選挙プランナーの松田馨氏は「異議申立て自体は、住民や候補者に認められた権利だし、僅差の選挙における事例はたくさんあるので、決しておかしなことではない。やはりスーパークレイジー君に対する見た目や経歴でレッテルを貼り、“どうせちゃんと準備もせずに住民票だけ移してやってるんだろうぐらい”の、舐めた見方をされているのではないかという印象がある。しかし選管の職員が深夜に当選者を呼び出して話をするというのは聞いたことがない。公正公平、不偏不党が大原則の選管の信頼を損なうという意味でも異常事態だと思う」と指摘。
その上で、「選管がこれから調査をして判断をすることになる。過去に居住実態が認められなかったケースを見てみると、本当に住民票を移すだけで、ほとんど居住をしておらず、水道代や電気代も使われていなかったということが証明されている。その意味では、今回はかなり珍しいケースだと思う。選管の審査に不服があれば、最終的には高裁で争われることになるが、どのような判断がなされるかはわからない」とコメントした。
また、ジャーナリスト佐々木俊尚氏は「真相は分からないし、戸田市は荒川を渡れば東京都だし、新宿にも電車1本で行ける、いわば東京のベッドタウンだが、田舎の地方議会を取材していると、中央から回ってくるお金をどうやって農協や土木業界へ分配するかみたいなところで議会や議員の絡む利権があったりもする。しかしそういうものは昭和時代の名残りだし、気にする必要はないと思う」と指摘。
「近年、地方議会が何のために存在するのかがわかりにくくなっていると思う。そういう中で、兵庫の号泣議員の問題なども出てきた。しかし逆に言えば、色々な人が出てきて、試してみる価値のある場所になってきているとも思う。西本さんも、今回のことを突破口にして、新しいことをガンガンやってもらっていいのではないか。居住実態があるかどうかなんて、選管や裁判所できちんと判断してもらえばいい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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