「女の子が博士課程に行ってどうするの?」男性が“高下駄”を履く日本社会の現状
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 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長が24日、就任後初めてIOCの理事会に出席した。

「会長として取り組むべき3つの重点施策について、理事会に報告しました。最重要課題である『コロナ対策』『ジェンダー平等の推進』そして、史上初の大会延期という経験を踏まえた『東京モデルの将来への継承』についてです」(橋本聖子氏)

 就任のあいさつと共に、ジェンダー平等推進チームの発足を明らかにした橋本会長。皮肉にも森前会長の発言によって、組織委員会がジェンダー問題の解決に本腰を入れ始めた。

■安倍前総理が掲げた「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性に」 現実は?


 今回の一連の動きについて、国連で国連事務次長・軍縮担当上級代表を務める中満泉さんは「森前会長だけではなく、社会全体の問題だと感じた」と話す。

「一番がっかりしたのは、発言があったときにその場で『それは違うんじゃないですか』と指摘する方がいなかったようだと。『その場では笑いが出た』ということも報道されていて、すごく残念に思った」(以下、中満泉氏)

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 中満さんは、2017年に日本人女性として初めて国連のナンバー3の事務次長に就任。軍縮部門でトップを務めている。

「ただ、いろいろ考えてみると、その場で声を上げる方がいなかったというのは、おそらく、女性がまだまだ少ない、声を上げづらい雰囲気があったのかと思った。結局のところ、一番考えなければいけないのは、必ずしも発言されたご当人の問題ではなくて、私たち社会全体の問題なんだろうと強く感じた」

 これまで、国連の人道支援や国連平和維持活動(PKO)などで世界中の紛争地を歩き、危機対応に取り組んできた中満さん。まさに、国際社会の最前線で活躍する女性リーダーの1人。また「差別のない活力ある日本を作るための行動宣言」を取りまとめた1人でもある。

【映像】世界中の紛争地を歩いてきた中満泉さん 両側に銃を持った男性と3ショット(2分30秒ごろ~)

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「私たちが今回の『行動宣言』でやりたかったことは『持続的にみんなで変えていきましょう』『そのために持続的に行動していきましょう』ということ。こういう発言があった場合には、それぞれの場で、その場で声を上げて『それは違うんじゃないか』と。対話によって発言をされる方の意識の変革を求めていく」

 近年の日本で、ジェンダー・ギャップの解消に向け大きく動き出そうとしたのが「女性の活躍推進」を成長戦略に掲げた安倍政権だった。2014年のダボス会議では、安倍前総理自ら「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を女性にします」と、女性登用の数値目標を高らかに宣言した。

「女の子が博士課程に行ってどうするの?」男性が“高下駄”を履く日本社会の現状
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 しかし、2019年度の「雇用均等基本調査」によると、企業の課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は11.9%。目標には程遠い現状だが、中満さんは「ジェンダー・ギャップの解消は国際的に見ても時間がかかる問題」と指摘する。

「国連が設立されて去年で75年。70年以上経ってようやく男女同数が幹部レベルで実現した。トップの意思によって、かなり早いスピード感で達成することができたが、国連組織全体で見ると、達成するのに70年以上かかったということ」

 日本で女性の登用を後押しする動きを進めようとすると、聞こえてくるのが「それは女性を優遇しているだけではないか」という反論の声だ。これについて中満さんは「いろいろな意味で、男性の方が下駄を履いている」と語る。

「こういった議論を男性とすると『じゃあ、女性に下駄を履かせろって言うのか!』と言う方がよくいるが、私の反応は全く逆。そうではなくて、これまで日本の社会で、男性がいかに『高下駄』を履いていたか。私たちがしなければいけないのは、これまで男性が気が付かないうちに履いていた『下駄』を脱いでいただくこと」

「例えば、高校の入試で、男女別に募集しているところは、女子の倍率は男子学生の倍率に比べて高くなっている。つまり女子の方が入りにくいということ。医学部の入試の話はまさにそうだが、そういった意味で気が付かないうちに、小さい頃から刷り込まれ、いろいろな意味で男性の方が下駄を履いている。それが今の日本の現状。それを脱いでいただくだけでいい。その結果、女性もフェアな形で、社会のさまざまな競争に参加し、正当に評価されることが必要ではないかと思っている」

■「女の子が博士課程に行ってどうするの?」時代背景、幼少期の教育…根深い“男女格差問題”


 日本初の個人向け大規模遺伝子解析サービスを手がける「ジーンクエスト」代表取締役の高橋祥子氏も中満氏の意見に「おっしゃる通り」と共感を示す。

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「私自身も昨年、妊娠と出産を経験して身体的な大変さをものすごく感じた。それを『女性のものだから』と切り離して社会的な支援を行わない。これでは、女性の社会進出が遅れるのは当然」(以下、高橋祥子氏)

 京都大学を卒業後、東京大学大学院で修士・博士課程に進んだ高橋氏。親からは「女の子が博士課程に行ってどうするの?」と言われた。

「別に性別は関係ないと思ったが、やはり昔の世代の『女の子だから』という空気感が伝わってしまっていると感じた。単純に女性のリーダーやリーダー候補が少ないという話ではなくて、元々日本が持っている時代背景や幼少期の教育からの根深い問題。そういったところから見直していかないといけない」

 世界経済フォーラムが2019年に発表した各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」では、153カ国中121位と、過去最低の水準に落ち込んでいる日本。今後、時間をかけてどのように変わっていくべきか、耳を傾ける必要がありそうだ。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】安倍前総理が掲げた目標、現実は? 日本社会の男女格差問題
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