「うんちで世界を変える」約3000の検体を取集 サッカー元日本代表・鈴木啓太氏の挑戦
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 マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏が、トイレの開発に力を注いでいる。金額にして2億ドル、日本円でおよそ200億円も費やし、トイレを開発しているのだ。一体、なぜなのだろうか。

 世界のトイレ事情を徹底的に取材した『うんちの行方』の著者、神舘和典氏は「アフリカやインドなどの開発途上国では、トイレが整備されておらず、細菌感染で(年間)300万人が命を落としている」と話す。

「トイレでうんちしても下水がない、浄化する施設がない、底がぐちゃぐちゃになっている。そんな汚いところでしたくないから、そこの地域に住んでいる人は川でうんちをする。でも、その川の水は飲み水にもなっていて、しかも子供がピチャピチャ遊んでいる川。それによって細菌感染で300万人が死んでいる。それを何かの方法で解決できないかとビル・ゲイツ氏が考え始めた」

 現在日本でも、トイレに関連したさまざまな研究が行われている。浦和レッズでキャプテンも務めたサッカー元日本代表の鈴木啓太氏は、2015年の現役引退後、セカンドキャリアとして「うんち」を研究する会社、AuB株式会社を設立した。

【映像】「痩せる腸内菌はないのか?」視聴者の疑問に鈴木啓太氏が回答(17分ごろ~)

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 起業の理由について、鈴木氏は「うんちで世界を変えようと思った。それを聞くと『何を言ってるの』『こいつは頭大丈夫か?』と思うだろう」と笑う。

 鈴木氏が設立したAuB株式会社では「アスリートの“うんち”」を研究している。

「僕は研究者ではないが『いろいろ調べていったら何か面白いことがわかるのではないか』と思った。(うんちを調べることで)選手のパフォーマンスがセグメント(区分け)できる。競技によっても違う。それから腸内細菌と掛け合わせて、新たな発見につながっていくんじゃないかと思っている」

 つまり、鈴木氏はアスリートのうんちを集め、中に含まれる腸内細菌を研究、解析、そこで得たアスリートの腸内環境のデータをさまざまな分野にフィードバックする事業を行っている。

■「僕だったらできる」集めたうんちはおよそ3000検体

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 しかし、どうやってアスリートのうんちを集めているのだろうか。鈴木氏は「選手にくださいって言って集めている」といい、最初は、ラグビー日本代表の松島幸太朗選手に依頼したという。

「創業のとき、たまたま一緒にご飯を食べていて『あの、ちょっとうんちちょうだいよ』と話したら『何言ってるんですか?』みたいな反応だったが、こういうことで、これからのアスリートのためにも研究していきたいと伝えたら『わかりました』と言って、持ってきてくれました」

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 なぜ、うんちにこだわる会社を作ったのか。鈴木氏は「子供の頃から母に『人間は腸が一番大事』と言われて育った」と明かす。

「母の言葉で、食事も気をつけるようになったが、アスリートの腸内細菌を調べているところがあまりなかった。腸内細菌は世界中でさまざまな研究がされているが、アスリートの研究は少なかった。『僕だったらアスリートのうんちを集められる』と思った」

 サッカー日本代表時代は“水を運ぶ人”と呼ばれていた鈴木氏。その経験は仕事にも生きているという。

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「“僕、経営者です”みたいな感じではなく、従業員の方たちがポテンシャルを発揮できるように、とにかく水を運ぶ、お茶を汲む、みたいな。(働き方も)サッカーのプレースタイルと似ているかもしれない」

■オリンピック選手から“新種の菌”を発見

 アスリートたちに協力してもらい、現在はおよそ1400検体ものうんちを集めることに成功。鈴木氏は「一般の方を合わせるとおよそ3000検体が集まっている」と話す。

 昨年、AuBでは「元オリンピック選手の腸内から新種のビフィズス菌を発見した」と発表。

「創業より少し前にデブ菌・痩せ菌の発見が海外であって、特徴的な被験者を調べることで、大きな発見が生まれた。そういった意味では、アスリートも特徴的な生活をしているし、アスリート菌が見つかるんじゃないかと思った。昨年に、アスリートから見つけた特有の菌があって、今は国際特許を申請している」

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 アスリートのうんちを一般の人に移植することで、アスリートのようになれる可能性はあるのだろうか。

 鈴木氏は「身体的なスキルもあるので、さすがにアスリートのようになれるかどうかはわからない」と述べた上で、「病気疾患の方に対しては糞便移植という治療もある」とコメント。病院の中で便のいい菌を取り出して精製、綺麗にしてから、直接腸に送り込む治療だという。

 元経産省キャリアで制度アナリストの宇佐美典也氏は「小さい子供は話せないので、うんちで健康を測るのは日常だ。子供のうんちをアプリで診断できれば、すごく使われると思う。鈴木さんの研究にはとても期待している」と話す。

 鈴木氏は「腸内細菌の研究がまだまだこれからの分野。アプリを作って診断できるところまではいかないが、データが集まってくることによってアプリも可能になってくると思う」と今後の研究に意欲を示した。

 新型コロナをきっかけに衛生に関する注目度が高まる昨今。トイレやうんち、そして腸内細菌についても今後の研究に期待が高まりそうだ。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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