本革を使った財布やキーリングなどを製造する従業員13人のベンチャー企業、UNROOFの久米川工場(東京・東村山市)。ここでミシンや工具を使い作業する従業員たちの半数が、うつ病、統合失調症などの精神障害や発達障害の当事者だ。「平日にお休みをいただいて通院しているが、“休みを取る”と言って嫌な顔をされないのはすごくいい」「障害があることを隠さない状態でものづくりができることが、すごくありがたい」。

・【映像】病気を伝えたら働きにくい環境に?障害や難病を持つ人の就活と課題

 2016年の厚生労働白書によれば、全国およそ3300ヵ所の事業所で障害や難病のある人の就職をサポートする「就労移行支援事業」が行われているが、実はそのうちの3割ほどの事業所では就労率が0%、つまり施設に通っても就職には至らないのが現状だ。

 いつ、誰の身にも起こりうる病気や障害。就職活動が本格スタートした1日の『ABEMA Prime』では、この問題を考えた。

■「どんな仕事が合うのか、お互いに向き合って」

 見た目には分からない障害の場合、面接時にそれを説明するか、ということも悩みの種だ。

 「人と話すことってどこでも使うスキルだし、それが欠けているってなると、すごく大変。苦労する場面が多い」。言葉をスムーズに発することができない吃音症の本多駿さんは、就活での困難をそう振り返る。

 また、大勢の前で話をしたり、人から注目を浴びるような場面で極度の緊張を感じてしまったりする、あがり症。克服するための講座を受講する学生は「喉が苦しくなって震えてしまい、上手く声が出ない」「頭の中が真っ白になって、汗がすごく出てしまって。言葉に詰まってしまう」と明かす。

 大和田真琴さんは、人の顔を覚えることが出来ない失顔症を抱えている。100社近くに応募したが、病気について話すと、ことごとく落とされてしまったという。「“どうしたもんか、こいつ”というような反応はしょっちゅうされた。病気を隠したら内定が出た」。

 それでも「遅かれ早かれ職場の人が気付くと思うので、バレたらバレたで仕方ないかな」と、番組の取材に応じてくれた大和田さん。「ただ、病気について話すと、“ああ、そうなんだ…”みたいな空気になってしまうので、今も不安しかない。人と接する機会が格段に増えるので、そればかり心配している状態だ。ただ、障害があるというだけで難色を示したり拒否したりするのではなく、どんな仕事が合うのか、ということを雇う側はもちろん、雇われる側も考えた上で向き合って行けるようになればと思っている」。

■「これができます、というところを評価して」

 強い日光を浴びると皮膚が赤くなったり、発熱、倦怠感などの症状が現れたりする難病、全身性エリテマトーデス(SLE)の村山優子さんは、外出時には帽子とマスクとサングラスが欠かせない。

 学生時代に作業療法士の国家試験に合格、複数の病院の面接を受けるも、健康状態について問われたためSLEであることを説明すると、4回連続で落とされてしまったという。「えっ?て感じになっちゃって、そのまま面接が終了して、結果はダメでしたって」。

 最終的に作業療法士として勤務できることになった病院の面接でも、「アレルギーについて聞かれたので、“正直に日光がダメです”と答えた。他の病院ではそこから深掘りされたのでSLEの話もしたが、“日光がダメなんだ~”と流されて終り、そのまま就職できることになった。ただ、あとでSLEのことがバレると、“面接時になんで詳しく説明しなかったんだ”と言われてしまった。嘘はつきたくないけれど、言い過ぎちゃうと空気がどよんとなってしまうと思ったので…」。

 今は勤務時間の調整などを行い、問題なく働くことができているという村山さん。大和田さん同様、「“難病でもこれができます”とか、“こういうことが得意です”っていうところを評価してほしいと思う。なおかつ当事者も、自分しか持っていないものが絶対にあるので、ぶれずにそこをアピールをしてほしい。絶対に伝わると思う」と訴えた。

■ある日突然、当事者に…働きたくても働けない中途障害の悩み

 内定を経て働き出しても、突然の病気や事故で仕事ができなくなることもある。中途障害の問題だ。松林順一さんは39歳だった7年前、徐々に体が動かしづらくなる多発性硬化症を発症した。神経障害により、目のかすみ、手足の痺れ、歩行の困難、排尿障害などの症状を引き起こす難病だ。

 発症当時は肉体労働の派遣社員だったこともあり、最終的に復帰は叶わなかった。また、歩行ができる間は別の企業で働いていたが、病状が悪化すると退職を余儀なくされ、電動車いすでの生活を送る現在、就職はできていない。

 「仕事をしたいという気持ちは常に持っているし、ハローワークにいる難病サポーターの方とも相談を重ね、“こういう就職場所がありますよ”という紹介も受けている。ただ、例えば多目的トイレとエレベーターの両方を備えている、というような職場がなかなか見つからない。“多目的トイレはありますが、そこに行くまでに段差があって”ということもある」。

■就労支援のゴールを見直す時?

 株式会社ワーク・ライフバランス取締役の大塚万紀子氏は「病気や障害といっても一括りにはできないものの、企業が採用に二の足を踏む背景には、マネジメントへの不安があるということ、設備などを整えることにお金がかかってしまうということがあると思う。そこは国として資金面で支援することが必要だ」とコメント。

 学生時代に障害者の就職支援に携わっていたという慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「企業は障害者手帳を持っている人を一定数雇わないといけなくなっているが、“手帳があるから就職できたと言われるのは嫌だ”という意見もある。それでも自分が人生の中でいつ当事者の側になるか分からないと考えれば、手帳を持っている人が仕事をできる場所があらかじめ用意してある社会にしていくことが必要だと思う。それは差別ではなく、いい意味での区別だ。そうすれば、面接で説明しても問題ない、という社会になっていくと思う。加えて、健常者と社員と同じような就労状態に近づけてはじめて就労支援だ、みたいな雰囲気もあるが、そこをゴールにするのではなく、社会保障の手当てとやりがいを前提に、報酬が少ないものや、家でできるテレワークみたいなものも含めて考えるべきだと思う。これはフリーランスや起業が正社員として雇用されることよりも低く見られていることに繋がっている気がする」と指摘した。

■テクノロジーによる課題の解消にも期待

 また、ワンキャリア取締役の北野唯我氏は「面接で言いたくなければ言う必要はないと思う。新卒で入った博報堂には障害のある同期がいたが、バキバキに活躍している。学生側は“自分にはこういう特性があるから、こういう準備をすれば対処できる”ということを知っているが、やはり企業側は知らないから怖い、ということだろう」とした上で、「ある時、僕がタクシー配車サービスUberを使って車に乗ると、後部座席にホワイトボードと黒いペンがあり、“私は耳が聞こえませんが、おもてなしの気持ちは持っているので、もし何かあればここにコメントを書いて下さい”とあった。実際、その運転手さんはめちゃくちゃ丁寧な運転をしてくださったし、レビューの評価もめちゃくちゃ高かった。これはアプリで行き先を設定しておくUberというサービスだからこそできることだと思った。テクノロジーによって、“私はこういう特性があるけど、こういう条件があったらちゃんと仕事できます”という世の中に変わっていくと思った」と期待感を示した。(ABEMA/『どうする?withコロナの就活&働き方』より)

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