74秒で3ダウン…壮絶な打撃戦で“劇的”復帰の鈴木真彦、那須川戦への思い「間に合うかは分からない。でもあきらめてはいない」
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 これ以上ないほどのインパクトをもった復帰戦だった。そもそも、復帰自体が大変なことだった。

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 RISEバンタム級チャンピオンの鈴木真彦は、2015年に黒星を喫して以来20連勝を飾っていた。敗れた相手は那須川天心。それ以来、打倒・天心のために力をつけ、勝ち星を重ねてきたと言ってよかった。

 昨年11月に出場した那須川天心への挑戦者決定トーナメント。1回戦では国内を代表する強豪の1人、江幡塁に勝利した。これで20連勝。あと一つ勝てば、念願のリマッチにたどり着く。そんな試合で、鈴木は敗れてしまった。勝った志朗は、2月28日の横浜アリーナ大会で那須川天心と対戦。鈴木は志朗戦を終えた瞬間「終わった」と感じたという。それまでの20連勝、その意味が失われたような敗戦だった。

 だが、そんな絶望から鈴木は立ち上がる。20連勝の実力、その格闘技にかける思いを周りが放っておくはずもなかった。再起戦が組まれたのは、那須川vs志朗と同じ2.28横浜アリーナ大会だった。メインのリングに立つはずだった横浜アリーナで鈴木の出番はセミファイナルの前。対戦相手は溜田蒼馬。KO率の高いハードヒッターだ。

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 打ち合いが予想されたこの試合、いきなり鈴木がダウンを奪う。しかし立ち上がった溜田に追撃しようとしたところに隙が生まれた。今度は鈴木が倒れる。一気に形勢逆転。まさかここで連敗なのか。鈴木の格闘技人生はどうなってしまうのか。

 熱狂と混沌が渦巻く場内、クライマックスは直後に訪れた。今度は溜田が突っ込む。そこに鈴木がカウンターのストレートだ。逆転また逆転。1ラウンド1分14秒でのKOは、おそろしく濃密で激しかった。倒す闘いを身上とし、屈辱を乗り越えてリングに戻ってきた鈴木らしい試合だったかもしれない。

「無傷で勝ちたかった。反省しかないです」

 そう語った鈴木だが、観客に与えたインパクトは絶大だ。やはりこの男は、RISE55kg戦線の中心人物の1人。「リングで失ったものはリングでしか取り戻せない」という覚悟の言葉もあった。

 インタビュースペースで、鈴木に復帰までの心境を聞いた。

「負けた後は練習もろくにできなかったです。心のダメージも大きかったですね。そういう時に周りの人とか、いろんな人が支えてくれた。1人で闘ってるんじゃないなと思ったし、原点を思い出しました。僕が格闘技をやっているのは“一番強くなりたい”からなんだって」

 リングでは「僕のストーリーを見てください」と鈴木。今はとにかく勝ち続ける。その先に那須川天心との闘いがあると、今も信じている。

「間に合うかは分からない。でもあきらめてはいないです」

 ファイターには、リングに上がって闘うことでしか得られないものがある。一夜明け会見で鈴木は言った。

「あらためて、自分は闘うのが好きなんやなって感じました」

文/橋本宗洋

写真/RISE

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