日本で暮らす外国人が増え続ける一方、犯罪に手を染めてしまった外国人が公平な裁判を受けるために必要な「法廷通訳人」が減少しているという。
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実際に法廷通訳も行っている名古屋市立大学大学院の毛利雅子准教授は「日本語が通じない場合、何語であれば話ができるのか、そして通訳人が必要なのかを捜査の段階、公判の段階で本人確認し、要望に沿って裁判所が手配する。登録されている言語は38言語だ」と話す。
法廷という場所での通訳ゆえの難しさもある。しかし特別な資格が必要というわけではないため、力量にもばらつきがあるあり、過去には、誤訳や訳し漏れが200カ所にのぼったケースもあったという。
「まず正確性が重要だ。例えばスーツケースに違法薬物が入っていたので最終的に有罪にはなったが、“抗生物質”について被告人が“Antibiotics”と言ったのを“違法薬物”と訳してしまったことで大問題になったことがあった。また、等価性も重要だ。違う言語であっても同じ意味、同じ重さを示さなければならず、被告人、証人が同じ話や単語を繰り返した場合も、法廷通訳人は絶対に追加せず、省略せず、編集せず、という姿勢が求められる。さらに法律制度が国によって違うので、被告人の国には無いが日本にはある、日本には無いが被告人の国にあるような制度、法律用語について伝達するというのも大変だ」。
正確な翻訳のためには、事前の準備も欠かせない。裁判員制度の導入以降、負担はさらに増したという。「ベテランになってくれば、入管法違反や不法滞在といった事案は前の日に半日くらい使えばいけるかもしれない。しかし殺人、放火といった裁判員裁判になるような重大犯罪に対して適用されることもあるし、否認事件になると1週間、2週間とかかるということもありえる」。
他方、こうした労力に対して支払われる対価は決して大きなものではないようだ。裁判が開かれる地域や言語によっても違うが、1時間の公判の通訳で支払われるのは、平均1万5000円ほどという報道もある。
「報酬の水準については明文化されて開示されているものではないのでコメントを差し控えさせていただきたいが、問題は確実にあると思う。特に裁判員裁判になると大量の書面を読み込み、翻訳、通訳しなければならないので、事前準備には恐ろしく時間がかかる。ただ、我々法廷通訳人の報酬は法廷に行った時間に対して支払われるものなので、いわば膨大な事前準備は全くの無報酬。実際の労働時間を労働対価で割った場合、非常に低いものになってしまう」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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