「メリットの方がはるかに大きい場合は推奨すべきという理性、知性がないがしろにされてきた」日本人のコロナワクチン不安に岩田健太郎教授
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 7日のABEMANewsBAR橋下』に、神戸大学の岩田健太郎教授が出演。番組のTwitterに寄せられた、「ワクチン接種を恐れています。高血圧、慢性の脂肪肝、喘息、2度の肺炎往診履歴がありますが、ワクチン接種をしても大丈夫ですか?」といった不安の声に回答した。

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岩田氏:結論から言うと、ワクチンはお勧めだ。必要なワクチンはコロナに限らずたくさんあるが、日本は何十年もの間、ワクチンによって健康を増進させたり守ったりする予防接種について、国民に一生懸命啓発することを怠ってきた。定期接種という仕組みもあるが、これもアピールしていないので、ワクチンに対する信用度、信頼度が他国と比べて非常に低い。

例えば昔はワクチンに添付文書という説明書があったが、そこにはよく“高血圧や喘息がある人は接種の時に注意しましょう”といったことが書かれていた。それを読んだ喘息の人が“怖くてワクチンを打たない方がいいんじゃないか”という誤解をするわけだが、感染症になると喘息などは急に悪化し、むしろ危ない。だからそういう方こそ、ワクチンによって感染症から身を守らなければならないということだ。

ところがワクチンで何か問題があると非難される、責任を取りたくない、という無責任体質が続いている厚生労働省がニュアンスとして“怖い”ということを残してしまった。改めて効果的なリスクコニュニケーションに持っていっていただきたいと思っている。これは僕自身の反省でもあるし、感染症の学界についても内輪のサークルに閉じこもり、そのような社会的使命をないがしろにしてきた。

それからメディアにも大きな責任がある。ワクチンの副作用とか、かわいそうな人をことさらにアピールし、メリットの方を無視してきた。政治家も健康問題をどう解決するのかという大局的な観点から考えるべきだが、短期的な人気とか世論におもねり流れに乗ってしまう。つまりみんなの責任ということにもなると思うが、ここに欠けているのが科学性だ。科学的に議論して、何がメリットで何がデメリットなのか。メリットの方がデメリットよりもはるかに大きい場合は推奨すべきだろうという理性、知性がないがしろにされてきた。

もっと言うと、日本にはCDC、それから公衆衛生のためのきちんとした役所がなく、全てが厚生労働省。いわば半分科学・半分政治みたいなところに任せてきてしまったために、政治的などうしても圧力に負けてしまう。そういったことが要素となって、日本の予防接種の政策が弱くなってきた。

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橋下:厚労省が及び腰になっているという意見だが、やはり最終的には政治家だと思う。役人は国民からの批判、特にメディアからバンバン批判されたら耐えられない。そこは政治家が引き受けて、“これは必要なんだ”と強く言っていかないといけない。それから菅さんの息子さんに対する総務省の役人の答えの仕方を見ていても、国民が役所に対する信頼を持てなくなってきている。ここはアメリカのCDCみたいな専門家集団を置いて、そこから発信してもらいたいと思う。

もちろんリスクがあることは間違いない。しかしリスクとメリットを比較して、メリットの方がはるかに大きいんだったら、推奨だと言い切らないとダメだ。それが日本の場合、メリットとデメリットを並べて、“あとは国民の皆さん、自分で判断してくださいね”と言う。しかし国民は専門家ではないから分からない。だからどっちなんだ、と言い切るような科学的、学術的な団体、政治家のメッセージは絶対に必要だと思う。

岩田:打たない自由はもちろん保障されるべきだ。ただ、それはあくまでも個人の選択権の保障であって、我々専門家や行政は“健康増進のためにいいことをやろう”とワクチンを強くお勧めしたほうがいい。タバコについても、行政は“吸わない方がいい”と言うべきで、“個人の自由だからどうぞご勝手に”というのは、公衆衛生の専門家としては無責任だと思う。昨今の官僚を見ていると詭弁を弄する人が多く、しかもそれが常態化している。接待の話についても、“記憶がなくなった”とか。記憶力が自慢の人たちが詭弁を弄してしまう。ああいうことをやっていると、優秀な若い方が官僚になりたいと思わなくなってしまう。

橋下:僕ら素人には分からないけれど、新型コロナワクチンの開発に向けて、トランプ大統領がワープ・スピード作戦ということで、スピード、スピードでやってきた。専門家から見て、新型コロナワクチンは世に出回っているワクチンと同じくらいの安全性はあると感じるか。

岩田:今の段階ではかなり安全だと思っている。今、世界に流通しているワクチンは5、6種類あって、そのうち日本に入ってきそうなものが3種類。アメリカのファイザーとドイツのビオンテックが開発したもの。それからアメリカのモデルナという、比較的新しい会社。これらはメッセンジャーRNAという、新しいタイプのワクチンを作っている。それとイギリスのオックスフォード大学とアストラゼネカが開発した、ベクターワクチン。この3種類の効果はかなり高く、率直に言って、こんなに効くとは思ってなかった。いわゆるアレルギー反応というのが相対的には起きやすいと言われているが、それとて何十万回に1回あるかないかということだし、医療対応もできるので、お亡くなりになったケースはほとんどない。

メッセンジャーRNAワクチンというのは遺伝子を使うわけだが、実際に人間の遺伝子に組み込まれたりはしないし、比較的短期間に壊れてなくなってしまう。水俣病のように、有機水銀が体に蓄積して、それが長期的に慢性の病気を起こすといったことも理論的にはまずない。子宮頸がんワクチンもそうだったが、予防接種の痛みが色んな理由で長い症状の原因になることはある。実際にそういう方は出てくると思うが、現段階ではメリットの方がデメリットよりもはるかに大きく、安全性という意味でもかなりクリアできていると考えるべきだ。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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