「レクサスを買った」「“焼肉ハウス”を建ててくれという人もいた」東電の賠償金で生じる被災者間の“経済的格差”をいかに議論すべきか
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 先月末に東京電力が発表した、福島第一原発事故に伴う賠償金額。避難への慰謝料、家族や家を失った人々への見舞金などを含め、来年度までに累計で10兆円以上が支払われるという。また、2019年末に公表された資料では、東電と合意した帰宅困難区域の4人世帯の場合、10年間で個人賠償額は7370万円となっており、住居や財産なども含めると1億円を超える計算になるようだ。

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 福島県を度々訪問しているカンニング竹山は「“土地を売って出ていかないといけない”と言っていた人が、よく聞いたら何億円ももらっていたとか、他の自治体に家を立てたけど住民税を払っていないので、行政に言わせると“おい”っていうケースもあるとか、根深い、人間臭い話を現地でいっぱい聞いた。もちろん困っている人もいっぱいいるが…」と話す。

 事故発生から10年。「本当に必要な補償はしてあげてほしい」という意見がある一方で、「そろそろ補償は十分でしょ」「元の生活より良い暮らししている人も多いのが実態」といった厳しい声もある。

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 そもそも、この賠償対象になるのは福島第一原発から30km圏内の避難指示区域のみ。そして、その境界線の外側にあるのが福島県いわき市だ。そのため、元々いわき市に住んでいる人は賠償金をもらえない一方、いわき市に避難してきた人たちがずっともらい続けるということも起きている。

 東電はあくまでも「最後の1人まで賠償貫徹」を掲げるが、現地で住宅メーカーの営業マンとして勤務、震災後は賠償金問題などを本に纏めた一般社団法人「建物災害調査協会」理事の屋敷康蔵さんは、被災者の間の格差や“震災バブル”の問題を指摘してきた。

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 「原発からの距離で区切ったものだから、極端な話でいうと境界線上で隣の人はもらえたがその隣はもらえないような現象もあった。その境界線がいわきになったこと、なおかつ避難の方の4割くらいが一斉にいわき市に入ってきてしまったもので、そういう問題が起きると思う。賠償金は必要なものだが、やはり一部の方の使い方や生活が、元々いわきに住んでいた人を刺激してしまう部分があると思う。当然、やっかみもあるかもしれないが、口には出せなくても共通認識ではあると思う。

 例えばレクサスが多く、逆に反社の方が“被災者に見えちゃうから買いたくない“って言うくらい。びっくりしたのは、建物が豪華なだけでなく、焼肉が大好きだから横に“焼肉ハウス”を建ててくれという人もいた。それなりの損害を受けたわけだから補償は絶対必要だと思うが、補償の金額とか期間とか支給方法については問題があったと思う。家内の弟も賠償金で生活ができるので、もう7年くらい仕事をしていないし、探してもいない」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「これは僕の持論でもあるが、やはり“被災地”とか、“被災者”というくくりは“主語”が大きすぎる。それが大きな差別や分断を生んでしまっている。当然、こういう人もいるけど、そうじゃない人もいるよね、という問題。こういう問題について話をするときには小さい“主語”を使い、もっともっと個人のことにまで落し込んだ上で議論しないと、受け取る側は“やはりそうなんだ”と思い込んでしまう。

 その上で、賠償金がもらえる・もらえないを国や東電で決めてしまったために、“うちはこれだけ被害を被っているのにも関わらず、なぜ対象から外れているのだろうか”という国賠訴訟が今も続いている。被害の線引きを誰が、どのようにするのかということは、今回の教訓を踏まえ、徹底的に議論をしないといけないと、また同じ過ちを繰り返すことになる」とコメント。

 一般社団法人「RCF」代表理事の藤沢烈氏も「今日も福島県の双葉町に行って町民の方の話を聞いていたが、町役場に“とりあえず避難してくれ”と言われたので乾電池とかだけを持って行ってみたら、そのまま何年も戻れなかったという人もいる。しかも立派な家を建てて暮らし始めようと思った矢先にだ。まさに何も悪くない方が事故により家を失ってしまったことに対してどの程度の賠償が払えるか、という裁判が今も続いているが、責任があるのであれば払うべきだ、というところからスタートしなくてはいけない。そこ抜きにして、もらった・もらっていないという争い、賠償金で車を買った、といった話ばかりしまうと、全体が不幸になってしまう」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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