前哨戦で際立った武藤敬司の老獪さ 「3・14福岡」マットを叩いて悔しがった清宮はどう挑む?
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 本当に清宮海斗は新GHCヘビー級王者・武藤敬司にとって「安パイ」なのか? 3月14日の福岡国際センターにおけるタイトルマッチを前に、それを見極める最後の前哨戦が3月7日、横浜文化体育館で武藤&丸藤正道&田中将斗vs清宮&潮崎豪&稲村愛輝の6人タッグマッチで行われた。

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 果たして、この一戦は武藤優位を見せつける内容になった。武藤、清宮ともに先発を買って出てグラウンドでの勝負。過去、武藤が得意とするこの序盤の探り合いで、清宮は五分にわたり合ってきた。いや、時に圧倒していたが、この日に限っては明らかに武藤が制した。

 そして武藤の巧さが際立ったのは、劣勢になったと判断するや、サッと場外にエスケープしていたこと。場外へのエスケープは逃げではなく、それまでの試合の流れをリセットしてゼロに戻すためのもの。武藤の盟友・馳浩も得意にしていた戦術だ。

 ただ単に場外にエスケープするだけでなく、そのたびにテレビカメラに向かってLOVEポーズを決めたり、放送席の山田邦子に握手を求めたりして余裕を見せることで、劣勢になったわけでないことをさりげなくアピールするのが武藤の心憎いところだ。

 終盤、久々にスペース・ローリングエルボー(側転からコーナーの相手にエルボーバット)を稲村に見舞おうとして失敗してしまったものの、最後は足4の字をキッチリと決めて稲村にギブアップ勝ち。これといった爪痕を残すことができず、マットを叩いて悔しがる清宮の姿が印象的だった。

前哨戦で際立った武藤敬司の老獪さ 「3・14福岡」マットを叩いて悔しがった清宮はどう挑む?
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 こうしてGHCヘビー級初防衛戦に向けて絶好調ぶりをアピールした武藤だが、実はコンディションは最悪だった。試合の数日前に腸炎を患って食事もままならず、体重が5キロも落ちてしまったという。それでも絶好調にみせてしまうのが百戦錬磨の武藤なのだ。

 そして武藤の強みはどんな状況であっても超ポジティブ思考なこと。体調を崩したことを「タイトルマッチ本番前でなくてよかったよ。ちょっと体調を崩したことで慎重になれるというか」とプラスに転換するのである。

 かつて代名詞のひとつでもあったスペース・ローリングエルボーを失敗したことについても「咄嗟に本番でやって失敗していたら、命取りになる可能性もあるからね。もう狙わないだろう。一瞬だけ盛り上がって、ガクッとなって、エーッて(笑)。まあ、いいや、トランポリン置いといてくれ」と笑い飛ばした。

 武藤の超ポジティブ思考は、もちろん本人の性格もそうだが、それだけの修羅場をくぐってきたからこそ。かつてはアメリカWCWでグレート・ムタとして大ブレイクを果たし、10カ月間ほとんど休みなしで全米を飛び回った。まだ日本では認可されていなかった治療薬を膝に打つために渡米して、とんぼ返りで東京ドームの大一番を迎えたこともある。たとえ体調が万全でなくても戦える術とプロ意識が武藤には染みついているのだ。

 大会翌日の調印式でも「福岡には前日入るんですが、中州の街の誘惑さえ乗り越えられれば、試合は大丈夫だと思います」と余裕を崩さなかった武藤。

 ちなみに福岡国際センターは武藤にとって1999年5月3日に天龍源一郎を下してIWGPヘビー級王座を防衛し、その試合で同年のプロレス大賞ベストバウトを獲得したゲンのいい会場。風はどう見ても武藤に吹いているように思える。

 超ポジティブ思考ですべてを味方につけている武藤敬司を、清宮海斗はどう攻略しようというのか!?

文/小佐野景浩

写真/プロレスリング・ノア

【映像】際立つ武藤の老獪さ
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