「彼女のことは嫌いではなく、ただ暴力が嫌いなだけだったから」コロナ禍で顕在化するDV…被害を訴えられない男性たちに経験者「一歩踏み出して」
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 去年1年間に全国の警察に寄せられたDV(ドメスティック・バイオレンス)の相談件数は8万2643件と、DV防止法が施行された2001年以降、最多となったことがわかった。

・【映像】DV男性被害者に聞く「言えない現実」

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 11日の『ABEMA Prime』に出演した女性・人権支援センター「ステップ」栗原加代美理事長は「増え続けている、というよりも、元からあったものだと思う。マスメディアなどを通じてDVという言葉を聞くことによって、被害者たちが“もしかしたら私も”という意識を持ち始めたということだと表現したほうがいいのではないか」と指摘する。

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 昨年12月、橋本聖子男女共同参画担当大臣(当時)は「やはり生活、経済の問題があったりして、被害者のうち相手と別れたという方は本当に1割もいない。しっかりと法制化に結び付けていかなければいけないと強く感じている」と語っている。

 また、後任の丸川珠代男女共同参画担当大臣も5日、「ステイホームが長引く中で家庭の中の問題が非常に大きくなっているのではないかと受け止めている」と指摘。警察庁も、コロナ禍で加害者が家にいる機会が増え、被害者が通報しにくくなる恐れがあるとみている。

 「暴力・暴力の頻度が週に1回とか、月に1回というサイクルの場合もあり、それ以外は”ハネムーン期”ですごく楽しかったりする。あるいは謝ってくれたり、優しくしてくれたりするので、“私の方が変われば加害者も変わるかもしれない”と感じ、なかなか別れられないという側面がある。また、私たちの更生プログラムへの申込者は、コロナ禍で3倍くらいに増えた。DVというのは支配の関係性であって、行為ではない。叩くとか怒鳴るというのは支配するための道具でしかないが、その機会がステイホームによって増えたと考えられると思う」(栗原氏)。

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 そして近年注目されているのが、男性の被害者の存在で、実に全体の24%に上っている。

 栗原氏は「専業主婦が多かった時代は、男性の方が経済的な力を握っていたので、“誰のおかげで飯を食わせてもらっているんだ”というところから支配が始まることがあった。しかし最近では対等な関係になってきたということで状況が変わってきているのだと思う。そして、男性には“女性よりも強くなければいけない”という思いから、自分は被害者であるということが自覚されにくい。加えて、“相談するのは恥ずかしいことだ”というようなジェンダーバイアス的な思考から、一人で悩んでしまう、そして鬱になっていく。あるいは自殺ということもある。だから妻が出ていったとしても、“俺の人生、終わりだ”という崖っぷちに立つまで相談に来ない。自分から進んで来る男性は1割にも満たないと思う」と話す。

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 元妻から8年にわたってDVを受けていたというAさん(仮名)は「同棲はしていなかったので、お互いの生活感を見ていなかったというのがあるかもしれないが、結婚前はそういう気配はなかった。しかし結婚して一緒に生活し始めると、床が汚れているとか、食器の洗い方がおかしいとか、些細なことで“なんで言うことができないんだ。役に立たないんだ”などと暴言がエスカレートし、手を上げられたり、蹴られたり、物を投げられりたりしたこともあった」と振り返る。

 「何に腹を立てていたのかはいまだにわからない。むしろ、怒りを探しているという感じだった。だから、“こういうことをしたら怒られるんじゃないか”という思考になっていった。彼女のことが嫌いなわけではなくて、ただ暴力という行為が嫌いなだけだったし、雪解けじゃないが、機嫌が良くなるということもあったので、それに振り回され、本当に支配されるようになってしまった。

 そして、やっぱり男性だからということもあった。おかしいんじゃないかと感じてはいたが、それを外には出せず、強くあらねばならない、なんとかなるだろう、というゾーンに入っていたようなところがあった。それでも違和感を感じた同僚が“何かあったのか”と声をかけてくれたりする中で、徐々に相談したほうがいいんじゃないか、という思いが芽生えてきた」。

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 その後、カウンセリングに通い、解決に向かっていったというAさん。「やはり風通しのいい家庭、家族になればいいと思う。自分の状況を客観視してくれる方がいるだけで全然違うし、逆にそれがないと加害者側も被害者側も気付かない、止められない。今は色んな相談窓口もあるし、一歩踏み出して5分、10分話をするだけでも状況は変わると思う」と語った。

 栗原氏も「暴力の末にあるのは、関係性が壊れるというだけだ。そして、“天気と同じで、相手は変わらないのでやめよう”というところから始めなければならない。そして、自分の思考と行為は変えられるので、今と未来に焦点をあてようと。そうすると、8割、9割の方は状況が改善する。ただし、1年程度はかかる。マイナス思考が行動を生み、そして習慣化していくので、変えていくのには時間がかかる」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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