今月5日、1都3県の緊急事態宣言延長とともに発表された、「GoToトラベル」の一時停止期間再延長。各地で桜が咲き始めゴールデンウィークも近づく中、思うように旅行もできないもどかしい日々が続いている。一方で、その狭まった行動範囲がきっかけの1つとなり、地元の魅力を再認識した人もいる。
「前前前世やカントリーロードが聞こえてきそう」
「遠くから見るとアニメ風 拡大して見ると現実風に見えてとてもすごいですね!!」
SNS上でこのような大反響を呼んでいるアニメのような写真。8万以上のリツイートや40万を超えるいいねを記録するなど、連日投稿される写真に大きな注目が集まっている。
その幻想的な美しさから、一から作画した絵のようにも見えるが、実はレタッチなど加工はされているもののすべて現実の風景を撮った写真だ。
「基本福井なので車での移動がほぼなんですけど、グルッとまわりながら『この風景いいな』と思ったら、車を停めて歩いてみたりといった形ですね」
そう話すのは、撮影者のAkine Coco(アキネココ)さん。地元・福井県の風景を写真におさめる傍ら、普段は会社員として働くため、顔も声も隠した状態で特別に『ABEMAヒルズ』の取材に応じてくれた。
「ある仕事帰りにすごく夕日がきれいで、パッと撮った1枚が新海誠監督の作品のように写った。元々アニメが好きだったので、そこと自分が好きなものが合致したという形です」
観光地のような定番の撮影スポットにはあえて行かず、身近な風景を大事にしているというAkine Cocoさん。夏の田舎道や夕暮れ時の街並みなど、“何気ないまちの景色”を投稿し続けている。
「行ってみたい」という声も上がるほど、福井を魅力的に写すこの写真。Akine Cocoさんの地元への価値観もこの写真を通して変わったという。
「もともとは県外とか、大阪とか京都とか街の方も撮ってはいたんですけど、コロナの関係でなかなかそれができなくなってしまったので、基本的には身近な場所で撮るようになりましたね。(写真をきっかけに福井へ行こうと)そういう声もいただきます。福井は昨年の魅力度ランキングで44位だったんですけど、そんな影の薄い県に写真を通じて魅力を感じて来ていただけるのはすごくうれしいです。元々は県外への憧れだとか本当に遊ぶところがないというネガティブな部分がすごく強かったですけど、写真を撮るようになって福井の魅力というか良さに気づけたというのはあります」
コロナ禍で狭まった行動範囲が、地元の魅力に気づかせてくれたという。今後について聞いてみると次のように話してくれた。
「正直まだ行けていないところとか気になる所とかもたくさんあるので、そういった部分もアニメのワンシーンのような風景を見つけていきたいなとはまだまだ思っています。もちろんバズるのは嬉しいんですけど、実際それを狙っているというのは特になくて。どちらかというと自分の好きなものとか世界観を大事にしていきたいという思いがあって、それを喜んで見てくださる方がいればすごくうれしいし十分だなという思いはあります」
なぜAkine Cocoさんの写真はSNSでヒットしたのか。臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は次のように分析する。
「TwitterやInstagramなどSNSでは、画像で『おっ』と思わせたりはっとさせたりするようなものを、見る側も求めているということがある。最近アニメも実写に近づいてきて、境界線が曖昧になってきている。特に新海誠監督の作品は風景だけ見たら実写化と見紛うような声があがるわけで、『これって絵なの?写真なの?』と我々の心が立ち止まって、惹かれているところがあるのではないか」
Akine Cocoさんの写真に寄せられるのが「懐かしい」「ノスタルジック」な気持ちになるという声だ。こういったものはなぜ人の心に響くのだろうか。
「写真に写っている土地で暮らしたことがない人でも、地方出身者はどこかで見たことがあるような光景で懐かしく思うだろうし、逆に都会で生まれ育った人も『こんなところがあるんだ』という新奇性で魅力を感じると思う。懐かしさをポジティブに感じる基本的な心理としては、やはり自分の過去の肯定と、もう一つ言われてるのが自己連続性。自分は過去からずっと繋がってきていて、その蓄積が今の自分をつくっていると思いたいという心理がある。その2つが感じられることで、現状の自分に対する自尊心が高まったり、アイデンティティが確立されたり、さらには未来への見通しがつきやすくなっていったりするので、その辺りがノスタルジックなものが及ぼすプラスの特性と言えると思う」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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