16日、自民党所属の若手議員が会見を開いて創設を訴えた「こども庁」。会見の席上、自見英子参議院議員は「チルドレンファーストの行政を実現するために巨大な権限と予算を倍額にした子ども政策を実行するという目的を非常に重要視している」と強調した。
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17日の『ABEMA Prime』に出演した提唱者の一人、山田太郎参議院議員は 「こども庁」創設の意義について次のように説明する。
「今、子ども中心に物事を考えている部署が本当にない。これまでは高度経済成長後、どのように日本を発展させるのか、ということでサプライサイド、産業別に省庁が組み立てられてきた。だから市民、消費者のサイドの省庁は消費庁くらいしか無く、虐待の問題は厚生労働省子ども家庭局だけではなく、内閣府子ども・子育て本部でも扱っているし、一部は文科省でも扱っているので、例えば子どもが虐待で亡くなった場合も、場所によって担当の省庁や部署が違うなどということが現実に起きている。中には、どこが担当かを決めるだけで時間がかかってしまったり、放置されてしまったりしてしまうケースもある。
それはまさに行政が“縦割り”になっているからだ。そうではなく、どこであろうとなんだろうと一元的に解決できる司令塔、責任部署があり、国民から見て、“ここにアクセスすればいい”という“チルドレン・ファースト”な部署が必要だということだ。そして解決しなければいけない課題に関する情報を集めて分析、なおかつ強い総合調整機能を持って実行ができる。当然、予算や人員の権限も持っているということだ。一方、解決にあたるのは現業部門になるので、大きな組織であればいいということではない。現場に下ろして循環を作っていくというのが大事なので、そこは皆さんからの知恵もいただきながら設計していくことが重要だ」。
山田議員が指摘する通り、虐待、いじめ、自殺、貧困、さらには教育格差など、子どもをめぐる問題は厚生労働省や文部科学省、地方自治体など複数の省庁に担当がまたがっているため、柔軟な対応ができていないとされてきた。
「これまでの議論というのは、あくまでも“子どもの課題”が中心だったが、“生まれてくるまでの環境”もある。例えば産後うつに端を発する虐待というケースも出ているので、周産期のケアの問題も重要だ。子どもを守るためには子どもだけを見ていてもダメで、家庭環境にまで広げて見ていこうという思いもある。
一方で、ゴール意識がちょっと違うので、あまり少子化対策と一緒にはしたくない。もちろん、政策を考える中で、7割くらいは一緒のものが出てくると思う。貧困、いじめ、教育の質の問題もそうだ。ただし国としての少子化問題というのは、“将来の経済力をどうするのか”ということが主眼になりがちだ。その点、こども庁は子どもが減ろうと増えようと、生まれてくる子ども一人一人を大切にする、ということが主眼になる」。
また、対象となる年齢についても、未就学、自己形成がされる小学校、実は18歳までは子どもだ、というように、いくつかの案がある。ただ、できるだけ小さい頃についての問題を集中して設計するべきなのだろうと考えている。その意味では文科省との棲み分けという縦割りの問題だけではなく、横割りの問題もある。学校も児童相談所も地方自治体のもので、予算や人員にも格差がある。そこに対して、国が全体を標準化して介入していく、少なくとも問題解決のプラットフォームにはならなければいけないと思っている」。
■まずは立ち上げて離陸させることが重要
ただ、民主党政権下で打ち出された「子ども家庭省」のように、同様の構想はこれまでも浮上しては潰えてきた歴史がある。
「どの政権でも一度は議論したはずだが、なぜできなかったのかと言えば、全部署が納得してやらなければいけない、ということで詳細を詰め、法律に仕立てようとしてしまったからだ。特に“厚労マター”と“文科マター”には重なる部分が多く、“結局どうなるのか”ということがなかなか解決できなかった。組織の設計は慎重にやらなければいけないというふうに思っているが、全部決めてから立ち上げようとすると、また同じことになってしまうと思う。
もちろん省益の問題、あるいは総論賛成・各論色々ということに巻き込まれていくことも予想されるが、私は党内でデジタル社会推進本部の役員もやっているので、デジタル庁の作り方のモデルも議論してきた。こども庁についても、まずは立ち上げて離陸させ、“どういう仏を作ってどう魂を入れていくか”という議論を、期限を切ってしていくのがいいのではないかと考えている」
山田議員は今年1月、菅総理に「こども庁」創設について直接提案をしている。
「菅政権としても不妊治療や待機児童の問題解決をしたい。ただ、どうしても点の議論になってしまっていたので、もうちょっと総合的に議論する必要があるだろうということで、総理とお会いする機会にぶちまけた。総理には事細かに聞いていただいたし、“それはその通りだよね”ということだった。縦割りとどう戦っていくかというのが菅政権の真骨頂でもあるので、デジタル庁同様、ぜひ総理主導でやっていただきたいと思っている。
私が若いかどうかは別にして、若手議員を集めて重鎮を置かなかったのも異例中の異例だ。重鎮を置くことで“誰がやった改革なのか”という色がついてしまい、派閥の問題にもなってくる。そこで3期生以下くらい、ただし各部会の副部会長以上を集め、党の公約になった場合には各部会から全部上げられるように、割としたたかに作ったつもりだ。他の議員としても、“選挙のネタになる”と言うと怒られてしまうが、子どもの問題は身近なものなので、今回の提言についても、“あれを入れてくれ、これを入れてくれ”と色んな人が色んな意見を言ってきた。これは野党の協力も得なければできないことでもあるので、タイミングを見て呼びかけていきたい」。
■夏野氏「財源を全て集めることが必要では」
ドワンゴ社長で慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「縦割り打破のためには国家公務員の終身雇用をやめたほうがいいと思う。総務省の接待問題だって、同じ所で長くやり過ぎているからだ。22、23歳で入省してずっと同じ省にいると、どうしてもそこの利害を守るために必死になる。だったら10年経ったら辞めなくてはいけないような制度にして、人が入ったり出たりするようにすれば、そんなに縦割りは生まれないと思う。加えて、窓口が自治体になっている以上、やはり横の割り振りも必要だ。規制緩和など、あらゆる制度変革の時も必ず問題になるが、首長の権限が大きいので、サボタージュされると全く広がらない。
実際のところ庁には権限がほとんどないので、デジタル庁も総理直轄にするという特別な形になっている。あるいは警察権まで持たせようとすると、かなりハードルが高いと思う。それでもデジタル庁が注目されている最大の理由は、国のデジタルの予算を全て集めているからだ。こども庁に関しても、子どもに関する政策の財源を集めると言えば、現場が一気に動く気がする」と指摘。
「子育てをしている者としてお願いしたいのは、幼稚園、保育園の議論はされていても、そこから12歳くらいまでの面倒を見る人がいないということだ。一方、規制改革会議の教育のワーキンググループに出席した経験からすると、中教審では小中のことなんかほとんど議論されていない。メンバーを見ても、女性はバリエーションがあるが、男性は大学の学長とか、子育てが終わったおっさんとかばかりで、本当に子どもについての議論ができるのかと思う」とも話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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