3月20日の修斗・後楽園ホール大会で最大の衝撃をもたらしたのは、21歳の新鋭・平良達郎だった。
平良はアマチュアから負けなし。プロデビュー後も7連勝を飾り、前回の試合では元パンクラス王者で世界フライ級ランキング1位の清水清隆を下している。
今回、対戦したのは前田吉朗。パンクラス、DEEPでベルトを巻いたベテランであり、日本軽量級のレジェンドと言ってもいい。世界タイトル挑戦を目指す平良にとっては、最後の関門だった。
ところが、平良はこの関門をわずか61秒でクリアしてしまう。接近してきた前田にパンチとヒザを返し、首を取って組みつくとあっという間にバックへ。チョークに捕らえると前田は失神した。つけいる隙のないスピードとフィニッシュ力だった。
「ここで勝ったらタイトルマッチいけると思って頑張りました。修斗のベルトをずっと夢見て頑張ってきました」
試合後にあらためてベルト挑戦をアピールした平良。インタビュースペースでは「レジェンドを超えることができました。前田吉朗という人を超えることができたのは自信になりました」というコメントも。
何より驚異的なのは、平良がここまで能力の“底”あるいは限界を見せていないことだ。MAXの力を出した時にどれだけ強いのか、まだまだはかり知れないのである。
「自分はストライカーとかグラップラーと分けられるのが好きじゃないんです。打撃も寝技も楽しめる選手だと思ってます」
そう語る平良に、ここまでの試合で自分の力をどれくらい出したかと聞くと「30%、40%くらいです」。競り合いになった時の底力など、見せていない要素がたくさんあるという。曰く「隠し球もまだまだあるので」。
佐藤ルミナ、桜井“マッハ”速人、青木真也に堀口恭司。これまで修斗は数多くの強豪、業界を代表する選手を生み出してきた。平良達郎はその最新バージョンだ。世界タイトルマッチをも乗り越えた時、果たしてどこまで羽ばたくのか。その未来の明るさは想像もできないほどだ。
文/橋本宗洋