“米中対立”と報じること自体が中国の宣伝戦略にハマっている証拠? 日本の取るべき戦略は
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 18日にアメリカ・アラスカ州で開かれたアメリカのブリンケン国務長官と中国の外交トップ・楊潔篪共産党政治局員の会談で、初日から激しいやりとりが展開されたことが注目を集めている。

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 冒頭5分間にわたってブリンケン国務長官が「新疆ウイグル自治区、香港、台湾への行動、アメリカへのサイバー攻撃は、どれもがルールに基づく国際秩序を脅かしている」などと中国を非難。すると楊政治局員は20分にわたり「以前から黒人への虐殺行為が存在する。お互い自分の国のことだけを考えましょう」と反論した。これに対しアメリカ側は退出しようとしていたメディアを呼び止め「もう少し言わせてほしい」と中国を論難、中国側もメディアを呼び戻して再び反論するという、異例の展開を見せた。

■「“米中”にフォーカスされている。これ自体が中国の思惑、プロパガンダだ」

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 中国に詳しい戦略科学者の中川コージ氏は、中国側の思惑について「結局、一国主義だったトランプさんは中国を叩く一方、中国はみんなで仲良くしていくんだからと多国間協調を主張していた。それがバイデン政権になると、アメリカも多国間協調を言い出したために、戦うツールが無くなってしまった。そこで中国としては改めて米中の枠組み、“G2”で世界をどうするか考えていこうと言いたいということだ。今回の報道を見ても分かるとおり、実際に“米中”にフォーカスされている。これ自体が中国の思惑、プロパガンダだ。そこを見ておかなくてはならない」と主張。

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 また、経済問題が前面に出ていたトランプ政権とは打って変わって、バイデン政権が人権問題を押し出している点については、「米国としては、これをプロパガンダとして使いたいという動機がある。中国が言うように人権弾圧が全く無いということはないが、逆にアメリカは膨らましている部分もあるので、両方ともウソが混じっている。また、アメリカの主張を簡単に説明すると、“君は大変なことをやっている。俺のグループにいる日本と韓国も文句を言っているぞ”と文句を言い、みんなで平和的に協調してやろうと言ったということだ。実はこの2つのロジックには矛盾あって、“自分たちはグループを作っている”と言っているのに、“みんなで仲良くしましょう”とも言っている。中国側の外交トップである王毅さんは、そこを指摘した。結局、自分たちにとって痛いところは全てスルーして自分たちの主張を言っただけの、非常に大味で具体的な成果のない会談になってしまった」との見方を示した。

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 一方、元経産官僚の宇佐美典也氏は「トランプ時代のアメリカはアメリカのみで考えていたが、今は世界でグループを作ろうとしている。そのためには大義名分が必要なので、プロパガンダとして人権問題を扱うことにより、ヨーロッパも日本もついてこい、と言っているということだろう」とコメント。

 さらにパックンは「アメリカではオバマ政権の後半からトランプ政権を通して、“反中”の国民感情が高まっていた。だから中国に対して融和策を進めようと、国民が反発する。特にトランプの賛同していたタカ派、保守派に“弱腰外交“だと見られたらバイデン政権は終わりだ。だから強く出なくてはいけない。そして自分の支持者、左派のみなさんにとっては、トランプのように金、大豆などの経済問題よりも人権問題を扱った方がいい。つまり普遍的な人権問題なら右にも左にもアピールでき、一つにまとめることができる。それを使って中国を牽制しよう、ポイントをついたと思う。

 ただ、楊潔篪氏が“自分の国のことを自分で考えよう”と言ったのは、トランプ大統領の言葉を繰り返しているわけで、アメリカの矛盾、痛いところを突いた。それでも黒人の問題について指摘されたブリンケン国務長官も、“確かにアメリカは完璧な国ではないが、オープンに批判を受け止めながら改善しようとしている”と答えた。問題があることさえ認めない中国とは違うぞということだ」と説明した。

■「日本は欧州・ASEANと経済的な繋がりを作っていった方がいい」

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 米ホワイトハウスのサキ報道官は、「我々は引き続き、新疆ウイグル自治区のウイグル人に対する中国の人道に対する罪と大量虐殺について深い懸念を持っている」と表明するなど、アメリカ、イギリス、カナダも中国当局者に対する制裁を発表。22日にはEUもウイグル族に対し強制労働など人権侵害が行われているとして、関与した人物や団体の資産凍結や渡航禁止などの制裁を発表している。

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 中国側はこうした動きに対しても激しく反発。楊暁光・駐英中国代理公使は、「まず虐殺や強制労働、大量避妊手術などと言われるものはない。我々は“世紀の嘘”と呼んでいる」、中国外務省の華春瑩報道官も「自らの愚かさと傲慢さのため、最後に代価を支払うことになる」と強い口調で述べている。

 このような国際状況の中にあって、日本はどのように振る舞えばいいのだろうか。

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 中川氏は「自分のいないところで“日本と韓国がこう言っていた…”とアメリカに言われてしまうと、日本側としては“いやいや…”ということになってしまう。ここがある意味でアメリカの“ずるさ”だ。年末、日本政府が情報ソースを明かさない条件でウイグル問題に関する文書を米英に渡したと共同通信が報じたが、やはり日本が矢面に立たされてしまう。そして中国に経済で報復されるのは怖い。一方、中国としては欧州を仲間につけることで米国を超えていきたいという思惑があるので、日本としては環境政策で中に入っていく。あるいは中国との貿易輸出入が多いASEANとがっちり組んでいく。人権だけ言っていても中国には効かないので、そのようにして欧州・ASEANと経済的な繋がりを作っていった方がいい。また、日本は防諜が非常に弱いので、その能力を高めていかないと、これから中国と対峙していくのが難しくなるだろう」とコメント、

 宇佐美氏は「日本がどういう立ち位置を目指すかということを考えなければならない。軍事的には打つ手がないし、経済的にも沈んでいく状況にあるので、やはり半導体の技術管理を強化していくしかないと思う。すでに日本には中国の技術スパイがすごく入ってきているし、アメリカにとって使いやすい立ち位置も取らなければならない。台湾も含めて技術が漏れないようにするための関係作りを日韓台でやらなきゃいけないと思う。そのためには韓国との関係を修復することも重要だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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