「商業主義で当たり前だ。いざ始まればみんなも応援する」猪瀬直樹氏と考える、いま東京でオリンピックを開催する“意義”
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 新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念される中でスタートした聖火リレー。東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた節目の行事だが、未だ再延期や中止を求める声も少なくない。

・【映像】東京五輪どうするべき?猪瀬元都知事と議論

 25日の『ABEMA Prime』では、東京都知事として招致活動に携わった作家の猪瀬直樹氏、『東京オリンピックの社会学: 危機と祝祭の2020JAPAN』の著者で関西学院大学教授の阿部潔氏、そしてキャスター取締役COOの石倉秀明氏が議論した。

■猪瀬氏「いざオリンピックが始まればみんな応援するようになる」

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猪瀬:今はコロナでみんなの気持ちが塞がっているので、アンケート結果にも気持ちが乗ってこないというところが出てきてしまう。でも、いざオリンピックが始まれば、選手たちが頑張る姿を見て興奮し、応援するようになると思う。

オーストラリアでは全豪オープンテニスが開催されて大坂なおみ選手が大活躍したが、日本でも昨年は中止になった春の選抜高校野球も開催されている。大相撲の春場所もやっているし、プロ野球の開幕を待っている人も多いはずだ。夏の時点でコロナの問題がどのように展開しているか分からないところもあるが、基本的には10万人に数人というレベルの感染者数なわけで、工夫すればやれるはずだ。オリンピックには国際交流という側面があり、ボランティアもたくさん参加する。アメリカではすでにワクチン接種が1億回行われているわけだし、ワクチン接種率が高い国や地域、ワクチンを接種した人についてはハードルを下げて受け入れてもいいんじゃないか。だから海外からの観客の受け入れをやめるという決定も、僕は早計だったと思っている。

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阿部:昨年夏ごろの世論調査では、“1年延期すればいけるんじゃないか”という機運があった。しかし昨年暮れ以降、感染者数の増加とともに“延期”、あるいは“中止”というのが世論になってきている。しかも“中止”が選択肢の中でも最も大きくなっている。これは気分が落ち込んでいるというだけではなく、“これではやはりできない”と皆が考えている証拠だと思う。

確かに全豪オープンテニスは開催されたが、選手たちには事前のコンディショニングも含めて、非常に厳しい制約が課されたことも事実。“アスリートファースト”を謳う以上、そのような負担を強いてまで国際大会、オリンピックを開催するというのはどうなのだろうか。また、大会組織委員会はワクチン接種を条件にはしないという姿勢で一貫している。

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猪瀬:例えば1980年のモスクワオリンピックに日本は参加しなかったが、出場のために全てを賭けていた若者たちにとっては一生悔やまれることになった。2020年にピークを合わせるために頑張ってきた選手たちも、1年だけなら何とかなるかもしれないが、2年延期というのは、他の国際大会との兼ね合いもあるし、ないと思う。

さらにインバウンドがものすごい勢いで伸びてきていて、2020年を勝ち取れば、北京やロンドンのように海外からの観光客が増えていき、経済効果が30兆円に達するとの試算もあった。リーマンショックと東日本大震災による閉塞感、経済の落ち込みの中、2020年という一つの大きな希望を作ることができれば、という思いがあった。

来年の2月には北京で冬季オリンピックがある。彼らは実行するだろうし、その時に東京オリンピックの映像が流れなければ、北京はやったのに、なんで東京はやらなかったんだろうとなる。その時に後悔しても遅い。そこを忘れてはいけない。だからどう困難を乗り越えていくかを考えるのが大事であって、ただ気分で反対と言うのではなく、代わりにどうすれば希望のある世界を作れるのか、対案を出すべきだ。

■阿部氏「なぜ商業主義化されてしまったオリンピックでなければならないのか」

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阿部:16年の時も20年の時も、なぜ今、東京でオリンピックをしなければならないのか、という点についての国民的な議論がなかった。加えてオリンピックの理念やスポーツを通じた国際交流や平和よりも、インバウンドを高めていくことや、ある種のナショナリズム的な論理のために利用できる道具としてオリンピックを用いようとしていたのであれば、なおのこと開催の理由がわからなくなる。

猪瀬:もちろんスポーツを通じて都民、国民が健康になろうということも一つの大きなテーマだ。僕も月に50kmのランニング、週に1回のテニスをしているが、年間43兆円に達する医療費を少しでも減らしていくためには、国民の健康寿命を延ばす努力が必要だ。そのためにも世界のスポーツ選手の筋肉の躍動感みたいなものを日本の若者が間近で見られる機会は重要だ。

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石倉:僕は大学の専攻がスポーツ科学だったのでスポーツマネジメントの勉強もしていたし、友人にはオリンピック選手もいる。それも踏まえて言えば、選手たちには一生に一回のような、世界一を競うこの大会に参加させてあげたい。もう一つ、オリンピックというのは競技のエコシステムに組み込まれている。IOCに入った放映権料やスポンサー料などがJOCや日本の組織委員会に入り、さらに各競技団体に配られる。マイナーな競技の中には、それによって得られる収入が全体の3~4割というケースもあるので、中止になれば競技の強化ができなくなる可能性が出てくる。“アスリート・ファースト”には、そのような考え方もあると思うので、無観客かつ医療体制を整えた上での開催が望ましいのではないか。

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阿部:それはおっしゃるとおりだと思う。ただ同時に、それがあまりにも商業主義化されてしまったオリンピックでなければいけないのかというところも考えていかなければならないというのが、オリンピックの研究をしている研究者の間で出てきている議論だ。

「商業主義で当たり前だ。いざ始まればみんなも応援する」猪瀬直樹氏と考える、いま東京でオリンピックを開催する“意義”
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猪瀬:スポーツで仕事をしていく上では、他の世界大会で優勝するよりも、オリンピックで金メダルを獲った方が知名度は高くなる。ブランド力というのは大変なものだ。そこに4年に1回という希少性、そしてそこに賭けるという意気込み、決意があって新しい記録も生まれていく。“商業主義”という言い方をする人がいるが、当たり前だ。ビジネスに決まっている。マイナーな競技の人はオリンピックがなければやっていけないわけで、むしろいかに商業的に成り立つかということを考えるのが大事だ。

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阿部:確かに様々な競技が見られるイベントとしての意味はあった。ただ、パッケージとして開催するということに伴う肥大化、費用の増大を考えれば、果たして今のオリンピックという形でなければいけないのだろうか。世界で一番すばらしいスポーツの大会がオリンピックというふうに考えてしまっているけれども、最もいい記録が出るのはオリンピックではない競技大会という場合も多い。トップアスリートがパフォーマンスを発揮させる場と考えれば、どうして夏の暑いところでマラソンをしなければならないのか。若い人たちの多くは、“どっちでもいいんだ”と思っているのかもしれない。ただ、東京でオリンピックをするかしないかという議論と同時に、そもそもオリンピックってなんだろう、ということを考えていくきっかけにすることが大事なんじゃないか。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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