思わず興奮気味に「これだけで私はうれしい!」と声を張った。3月27日に放送された将棋のプロ団体戦「第4回ABEMAトーナメント」のドラフト会議で、14人いるリーダーのうち、糸谷哲郎八段が1巡目で山崎隆之八段を指名した。この2人の組み合わせ、ドラフト前の予想でも熱望していた伊藤だけに「私が推すチームは決まりました!」と感激。服部慎一郎四段を加えた“関西曲者三人衆”を全力で応援することを心に決めた。
結果を見届けると、もううれしさ爆発だ。昨年は実現しなかった糸谷・山崎コンビ。今年度は糸谷八段が棋王戦五番勝負で渡辺明棋王(名人、王将)に挑戦。山崎八段は順位戦A級への初昇級を決めるなど、新型コロナウイルス感染拡大による影響も受ける中、充実の1年を送った。充実期でのチーム結成に「ちょっと胸アツすぎる…」と、つい小声になった。さらには「私は去年、糸谷先生に振られた気持ちでいたので、選んでくれただけでうれしい」と、なぜか山崎八段の気分にもなっていたと明かした。
その他にも、伊藤にとってはうれしい指名があった。山崎八段と同じくNHK・Eテレ「将棋フォーカス」で共演した中村太地七段だ。誰を指名するか注目が集まっていた羽生善治九段の1巡目が、なんと中村七段。「太地先生も選ばれているじゃないですか!すごい!でも、羽生先生はなんで太地先生なんだろう」と、喜びと戸惑いが同時にやってきた。昨年は指名漏れとなった実力者の一人。レジェンド中のレジェンドに指名を受けたからには、使命感にも似たようなものを覚えて、活躍を目指すことだろう。
興奮のドラフト会議を終えて、伊藤の頭は早くも前回大好評だった対局前のチーム動画に。ここでは羽生九段がうさぎを撫でながら「どうぶつしょうぎ」を楽しんだり、藤井聡太王位・棋聖がバナナ当てに挑んだりと、レアなシーンが次々と公開された。「あれ、おもしろいですよね!普段とは全く違う切り口だし、私は対局と同じくらい楽しみです。『観る将』にはあれが必要です!」と、また熱が入っていた。
◆ドラフト会議結果(左からリーダー、1巡目、2巡目。○は重複でくじ当たり、×は外れ)
渡辺明名人 近藤誠也七段 戸辺誠七段
藤井聡太王位・棋聖 伊藤匠四段 ×服部慎一郎四段 → 高見泰地七段
永瀬拓矢王座 増田康宏六段 屋敷伸之九段
羽生善治九段 中村太地七段 佐藤紳哉七段
佐藤康光九段 森内俊之九段 谷川浩司九段
三浦弘行九段 高野智史五段 本田奎五段
佐藤天彦九段 鈴木大介九段 古賀悠聖四段
広瀬章人八段 丸山忠久九段 北浜健介八段
糸谷哲郎八段 山崎隆之八段 ○服部慎一郎四段
菅井竜也八段 郷田真隆九段 深浦康市九段
斎藤慎太郎八段 ×佐々木勇気七段 → 村山慈明七段 ×池永天志四段 → 都成竜馬七段
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。