激動のKrushバンタム級に新チャンピオンが誕生した。3月27日の後楽園大会、そのメインイベントで行なわれたタイトルマッチ。王者・吉岡ビギンに挑んだのはここまで9戦全勝の壬生狼一輝だ。接戦の連続となったトーナメントを制し、ベルトを巻いた吉岡。対する壬生狼は前回の試合で松本日向を下している。
Krush、K-1の未来を担う若者同士のタイトルマッチだったが、前日計量で吉岡が規定体重をオーバー、減点2とグローブハンデが課せられる。壬生狼が勝てば王座移動、吉岡勝利の場合は王座剥奪というルールになった。
ポイントで優位な状態からの試合スタートは、壬生狼のメンタルにも影響があった。「甘えが出てしまったかもしれない」と試合後の壬生狼。それでも軽快なステップからジャブ、ローキックを繰り出していった。
だが吉岡も意地を見せ最後まで前進、強烈なパンチを繰り出していく。吉岡がポイントを取ったラウンドもあった。中継の解説を務めた佐藤嘉洋氏も、吉岡のポテンシャルを高く評価している。
結果としては減点分の優位で壬生狼の判定勝ち。デビュー10連勝でのタイトル獲得だ。試合後には涙を見せた壬生狼。昨年、故郷の福岡を出て力道場静岡に入門してちょうど1年での戴冠だった。
故郷を出たのは、自分に厳しい環境に身を置いて格闘技に集中するため。試合後にインタビューすると、壬生狼はこう語った。
「去年の3月22日に静岡に来て、ちょうど1年。地元を出たかいがあったし力道場静岡に入ってよかったです」
ただもちろん、試合内容には満足していない。選手としては「まだまだこれから」と本人も言う。リング上では、K-1でのバンタム級トーナメント開催をアピールした。曰く「役者は揃ってる」。
確かに、吉岡もこのまま終わらないと思えるだけの力を見せている。トーナメントで敗れた選手たち、壬生狼に負けた松本の逆襲もあるだろう。彼らがK-1の大舞台でしのぎを削り合う日も遠くないはずだ。
「ベルトを獲ったからには自分がこの階級を背負います。ベルトが僕を強くしてくれるし、僕もベルトの価値を上げていく」
そのためにも、よりいっそう自分に厳しくしていくつもりだ。この1年、試合と雑誌の企画以外、プライベートでは地元に帰っていない。
「帰省すると里心が出てしまうような気がして。今は静岡で毎日、練習漬けですね。だからこそもっといい内容で勝たなきゃいけない」
ベルト獲得につながったまっすぐな思いは、これからも変わらない。
文/橋本宗洋