東京都では27日に新たに430人の感染が確認されるなど感染者数が増えつつあるが、宮城、山形、そして愛媛が相次いで過去最多の感染者数を記録している。
【映像】「夜の街で働かなければ食べていけない人もいる」感染拡大は“気の緩み”ではない?
特に宮城県では、感染症対策分科会の尾身茂会長が「私自身は、宮城県それから国に、まん防(まん延防止等重点措置)を含めた感染対策、強力な対策を検討して、それから実施していただきたい」と述べた。まん延防止等重点措置は、命令に従わなかった場合、罰則が適用される。
地方で今、起きているのは、リバウンドなのか、それとも第4波なのか。
この感染拡大について、東北大学大学院教授で厚生労働省のクラスター対策班メンバーでもある小坂健氏は「いろいろな要因が考えられる」とした上で、人の流れに言及。
「感染が増え始めたのは、時短営業をやめてからだ。それ以外に、3.11が発生から10年を迎えて、メディアだけでなく、いろいろな人が被災地に来ていただいた。仕方がないことだが、壊れている建物を多くの人が見にきて、タクシーを借りきって回った。人の流れが多くなると、感染も増える。仙台は(新幹線に乗れば)東京とも近く、東北のハブにもなっている。一旦、ウイルスが入ってきてしまうと、広がりやすいだろうと思う」
感染状況に関する国のステージ分け6指標を見ると、宮城県は5項目でステージ4相当だ。現時点で、医療体制はひっ迫しているのだろうか。この数字に、小坂氏は「数字だけ見ると『3割なら大丈夫では』と思われるが、仙台市内では5割を超えている。確保病床は実際すぐに入れる病床とは別だ。スタッフが揃っていないと、新しく入院してくる人にすぐに対応できるわけではない。感覚的には、仙台市内はほぼいっぱいという状況だと思っている」との見方を示す。
感染者を減らすには、陽性者の感染源を突き止め、広がりを抑えていく必要がある。しかし、宮城県では感染者の増加で保健所の機能が疲弊。小坂氏は「全国から人が支援に入って、なんとかやっている状況だが、感染経路不明者が5割を超えて、6割、7割となってしまっている。保健所の機能が限界になりつつある。なかなか抑えきれていない」と指摘する。
また、厚生労働省のクラスター対策班のメンバーであっても、感染経路の情報がなかなか集まらない現実もある。
「現地の人たちはそれぞれわかっている。ただ、全部情報が、国に公開されているわけではない。個人情報保護という名のもとに、市町村や県のデータが国になかなか集まらない。我々の情報はダダ漏れのくせに、感染場所含めたクラスター情報など大事なことが、国に集まらない。(宮城県の感染拡大は)東京からの出入りで感染した人もいるが、多くは地元の人たちだと思う」
厚生労働省のクラスター対策班のメンバーであっても「情報が来ない」と感じている状況。感染拡大を防ぐためにも、個人情報を守りながら、どこで感染したのか、国が把握できる仕組みを早急に作る必要がありそうだが、小坂氏は「壁は厚い」と話す。
「アプリを作ったときも個人情報保護の壁があって、何もできないことがあった。例えば東京23区だったら、それぞれが個人情報の諮問委員会のような組織を持っていて、その委員会が会議で許可しないとダメ。これは東京都庁が許可を出しても、区の単位で委員会がある。すべての自治体がそんな感じだ。4月くらいに、非常にいいアプリができていたが、それが『普通のクラウドを使ってはいけない』など、いろいろな規制が出てきて、広まらなかった」
日本で新型コロナの感染が広がっておよそ1年。行政の対策はなかなか変わっていかない。小坂氏は「山形県の県庁所在地である山形市は仙台市と地理的に接している」とした上で、「県境で一緒に(感染が)起きたとしても、両方の都道府県で情報を共有することすら困難だ」と明かす。
「通勤圏内でうちの大学院生もアルバイトで山形市に行く。ウイルスは県境関係なく、人の出入りがあるところに感染が広がる。今回の特措法の改正の中では、市町村、都道府県からの情報共有を謳われているが、なかなか難しい」
長く続く感染増加に、仙台市長や尾身氏は「まん延防止等重点措置」も視野に入れている。小坂氏は「当然、緊急事態宣言の時に申請していると思っていた。これは様子を見ている必要はない。すぐ申請いただくことが当然だと思う。正直なところ、一刻も早くやってほしい」と、一日も早いまん延防止等重点措置の実施を希望する。
宮城県内で感染者が増えているのに、なぜ政府はまだ“検討中”なのだろうか。小坂氏は、まん延防止等重点措置の条件に着目。
「まん延防止等重点措置を出すにあたって、感染の状況と、もう一つは医療機関のひっ迫が条件になっている。数字だけを見ていると、あまり医療状態がひっ迫しているように見えず『まだではないか』という判断になっているのかもしれない」
一旦感染拡大を抑えたものの、GoToイート再開後に増え、再び停止する事態になった宮城県。今後について、小坂氏は「お店を使う側」への施策が求められると語る。
「海外の文献や世界中の情報では、感染者数をとにかく減らしていくことが重要で、10人以下に減らしていくのが一番効くとわかっている。今回も分科会が『お店に行くなら4人まで』と言ったが、たとえばQRコードをかざして自分のメールアドレスを登録するシステムはどこの県も持っている。今まではお店側に迷惑をかけていたけれど、お店を使う側がシステムを使って登録しないとGoTo商品券が使えないようにするなど、いろいろなやり方がある。もっとITを使って、お店ではなく、使う側に制限をかける必要が出てくると思う」
■ お金と権限だけを渡して“独自施策”の方が効果あり?
新型コロナの封じ込めに苦労している日本だが、小坂氏によると台湾やニュージーランドなどは、独裁的に1人がリーダーシップを持って感染を抑えているという。小坂氏は「本当は都道府県の単位で、お金だけ渡して『なんでもやってくれ』というとそれなりにできる」と話す。
「国が新型コロナの病床に少しお金をつけたけれど、病院長たちに聞くと『国からいつお金が入るかわからないのにできない』と言う。こういうのは災害対応と一緒なので、本当に現場の最前線にいて、一番わかっている人が最善策をとれるようにしないといけない。国が全部コントロールすることが、いいというわけでは決してない。現場に権限とお金だけを渡して、独自にやってもらう。うまくいった自治体の施策をみんなが真似すればいい。そういう多様性が全然ない。いちいち申請して文句を言われながら出して、本当に公務員の仕事を増やすだけ。誰もハッピーにならない」
「公務員の制度や国のお金の使い方、財源のあり方など、独立して自由にできる自治体なんてほとんどない。そこから変えていかないといけない。東日本大震災を経験して、復興ですら『横並びにしろ』という感じだった。危機管理やこういうことは国がコントロールするよりもまず地域を信頼して、お金を渡して『対策を好きにやってくれ』と言わないと、なかなかうまくいかない」
地方で目立つ感染者の急増。全国で足並みを揃えるのではなく、その地域に合わせた対策が求められている。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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