くじ運の悪さまで継がれるものなのか。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の大会に先立ち行われたドラフト会議の模様が3月27日に放送された。リーダー棋士の一人、斎藤慎太郎八段(27)は1巡目、2巡目ともに指名が重なり、くじによる抽選に。まさかの2連続外しと、前年の佐藤天彦九段(33)に続く不運に見舞われた。それでも、穏やかな性格と話し方が特徴的な斎藤八段は「ドラフトの醍醐味を味わえた」と“はんなり笑顔”を見せ、固まった布陣についても自信を見せた。
くじを続けて外しても、斎藤八段の穏やかさは変わらなかった。自身も前年、2連続でくじを外した佐藤九段から「外れ1位」という形で指名を受けた。「天彦さんを受け継いだ、引き継ぎましたね(笑)」とショックどころか、楽しんだ様子も見せていた。
指名がかぶったのは、いずれも木村一基九段(47)。斎藤八段の関西出身の血が騒いだか「木村先生と2度連続の重複だったので、おもしろい話題になればいいなと。自身もおもしろかったですし、外した方が流れとしては笑えるんじゃないかと(笑)」とにっこり。1巡目と2巡目、くじを引く手を変える験担ぎまでして外したところも、笑いを取るという点においては、十分に効果を発揮した。
1巡目に指名したのは、B1昇級を決めた勢いのある佐々木勇気七段(26)、2巡目には2020年度の勝率が7割を超える池永天志四段(27)を指名、いずれも木村九段に奪われた。代わって指名し直したのが、村山慈明七段(36)と都成竜馬七段(31)。高い棋力はもちろんながら、ルックスの整った3人が揃った。「くじを2回外してこのチームを作れたのは、個人として素晴らしく満足がいく編成になりました。当初予定していたチームの1つだったので安堵しました」と納得もしている。事前に20人以上の棋士をリストアップし、組み合わせまで熟考してきたからこそ、この結果には不安もない。
自身は順位戦A級初挑戦で名人挑戦権を獲得。初の名人を目指して渡辺明名人(棋王、王将、36)との七番勝負も控えており、棋士人生の中でも特に注目を集めることになる。一人の棋士として、またチームメイトを引っ張る若きリーダーとして、ファンとしてはこれまで以上に斎藤八段の魅力を堪能できる春がやってくる。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。