3月28日のK-1日本武道館大会でもとりわけ劇的な試合内容だったのがシナ・カリミアンvs K-Jeeのクルーザー級タイトルマッチだ。両者は昨年11月の福岡大会で対戦し、K-JeeがKO勝利でカリミアンからベルトを奪っている。
当初はノンタイトル戦だったが、武尊vsレオナ・ペタスが延期になったことでこの試合が“格上げ”されたという事情があった。今回はダイレクトリマッチ。トータルでは1勝1敗で迎えた3戦目となる。
試合は前回の勢いそのままにK-Jeeが攻勢。1ラウンド開始直後にパンチでダウンを奪う。続けざまにもう一度倒されたカリミアン。3ノックダウンによる敗北寸前に追い込まれた。しかもラウンドの残り時間もかなりあった。
だが、ここでカリミアンが踏みとどまる。驚異的な粘りと言うしかなかった。そして2ラウンドに猛反撃。疲れの見えるK-Jeeにバックブローをフルスイングし、大逆転でベルトを奪い返した。
「前回は自分でも何をやっているのか分からないくらい動きが悪かった。今回はリラックスして試合ができました」
試合をそう振り返ったカリミアン。リング上では、セコンドについたニコラス・ペタスにも感謝の言葉を述べた。
ニコラスはデンマーク出身。極真空手の内弟子になるため来日し、旧K-1でもジャパンGPで優勝するなど大活躍している。キャッチフレーズは“青い目のサムライ”。気持ちを全面に押し出すファイトで人気を博した。
イランから日本に移り住み、江川優生らと同じPOWER OF DREAMに所属するカリミアンにとっては、似た環境で生きてきた先輩と言ってもいい。ニコラスのもとで出稽古をすることは、単なる練習という以上の意味があった。ニコラスの存在について、カリミアンはインタビュースペースでこう語っている。
「外国人として長く日本に住んでいるニコラスさんは、僕の大変さもよく分かってくれています。自分が日本で何をすべきなのか。日本のルール、日本のジムでのルール、海外の選手が日本で闘う難しさ。いろいろなことを教えてくれました。一緒にいることでモチベーションを高めてもらえた。試合でもダウンした後、声が聞こえて奮い立たせてくれたんです」
慣れない土地、慣れない生活、日本語もまだまだ覚えなければならない。そんなカリミアンにとっては、ニコラスの支えは相当に重要だったはず。またカリミアンは英語を話すだけに、ピンチに陥った際に日本語だけでなくニコラスの英語が聞こえると“伝わり方”も違うのかもしれない。
一夜明け会見ではANIMAL KOJIからの挑戦について「レベルが違う」と一蹴。完全に自信を取り戻したと言っていいカリミアン。ニコラス・ペタスという強い味方をつけ、これからさらに力をつけていきそうだ。
文/橋本宗洋