将棋界注目のドラフト会議は、レジェンドから指名された本人も驚いた。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」のドラフト会議の模様が3月27日に放送されたが、この時の大きなポイントがリーダー棋士の一人、羽生善治九段(50)が誰を指名するかだった。今なお弟子も取らない羽生九段が、初のドラフトで指名したのは、1巡目に中村太地七段(32)、2巡目は佐藤紳哉七段(43)。特に2巡目の佐藤七段については、ファンからも驚きの声が続出すると、本人も「びっくりしました」とまるで想定外のことだったようだ。
佐藤七段は4月1日に行われた竜王戦1組出場者決定戦の、羽生九段と丸山忠久九段(50)の対局をABEMAで解説。聞き手を務めていた竹部さゆり女流四段(42)、また同じく解説を務めていた広瀬章人八段(34)から、レジェンド・羽生九段から指名を受けた時の心境を、次々と聞かれた。
竹部女流四段 紳哉先生はなぜチーム羽生に?
佐藤七段 僭越ながら指名をいただきまして。
竹部女流四段 事前の根回しなどは…。
佐藤七段 そんなことしないですよ(笑)。びっくりしました。盛り上げ役が欲しいというのはあるんじゃないですかね。バランス的にいろいろ考えて、だと思います。
佐藤七段と言えば、対局時に非常に険しい顔をする反面、解説時にはかつらを飛ばすパフォーマンスをするなど、そのギャップや人柄がファンに親しまれている。国民栄誉賞も受賞した羽生九段、棋力と人柄を兼ね備えたことで将来の幹部候補とも言われる中村七段。ここに佐藤七段が加わることで、実にバラエティに富んだチームになった。
佐藤七段 練習会は太地くんとやりましたし、羽生さんともネットでやらせていただきました。チーム名の「in the ZONE」も太地くんが考えてくれました。みんな集中型だし、あと「羽生ゾーン」というものもあるので。
この「羽生ゾーン」は、2三(8七)や2七(8三)の地点に羽生九段が駒を打つと勝つ、と言われたもの。チーム名の由来まで、しっかり伝えた。
広瀬八段 正直、私もびっくりしました。羽生さんがどういうチームにするのか謎でした。羽生さんのコメントでは、エンターテインメント性も期待していると。
佐藤七段 そうですね。できるだけ期待に応えたいですが、あんまりそういうものに偏っても(笑)。盤上でもアピールしないと。
広瀬八段 真面目ですね。
佐藤七段 ルール上、他の人が2勝とかしても、自分が3連敗で負けるパターンとかあるじゃないですか。それが怖いんですよ。(選ばれたのは)光栄ですけど、恐れ多いのもあります。ご本人に、どうして指名されたのかとも、聞きづらいですからね。
将棋界で、その名を知らぬ者はいない絶対的な存在から「力を貸してほしい」と指名をされること自体、もしかしたら対局で勝つよりうれしく、また緊張することなのかもしれない。はたして佐藤七段は、プレッシャーをはねのけ、かつらと桂を躍動させられるか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)