BACKSTAGE TALK #27 PEAVIS
AbemaMix出演の合間に、HIPHOPライター 望月“Tomy”智久 氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
—アルバム『PORTRA¥AL』の反響はいかがですか?
PEAVIS:イイ感じですね。
—『PORTRA¥AL』のコンセプトを教えてください。
PEAVIS:タイトルは“自画像”という意味なんですけど、“ありのまま”がテーマで、カッコつけずに等身大の自分と世の中をそのまま描いた作品です。
—タイトルの“Y”を“¥”にした理由は?
PEAVIS:何かと世界は数字で動いていることを表現したくて“¥”マークにしました。
【映像】PEAVIS ABEMAMIX ライブパフォーマンス
—『PORTRA¥AL』ではアートワークも、『Peace In Vase』から雰囲気がガラっと変わっています。
PEAVIS:アートワークは意識して『Peace in Vase』と雰囲気を変えようと思っていました。綺麗な 写真を残せるうちに、自分のポートレイトを残しておきたかったという気持ちもあるし、アルバムのコンセプトにもなっている“ありのまま”を表現したかったんです。ほぼ加工もしていない1枚写真なんですけど、、セットを工夫して撮影しました。
—『PORTRA¥AL』は1stアルバム『Peace in Vase』よりも取り上げるトピックは身近になっている のに、どんどんPEAVISさんの持つ優しさは大きくなっているような、そんな変化を感じたのです がご自身の環境や心境に変化はありましたか?
PEAVIS:一番の変化は日常に何気なくあったものがなくなりかけてるということ。クラブイベントやライブ、自分の生活の一部だったものは当たり前じゃないんだなと痛感しました。いろんな業種の友人たちの話を聞くとそれこそ、どの仕事も大変なことになっていて、地元でもそれを強く感じます。『PORTRA¥AL』において、優しさが強くなっているというのはそこが起因しているのかもしれません。1stのときは世の中がこうなればイイなという願望が強かったんですけど、今回はコロナ禍の中で作ったアルバムとして現在進行形の自分と身の回りの現実ありのままをパッケージしています。
—僕がいちばんアルバムの中でPEAVISさんの優しさや変化を感じたのは「Be Changed」でした。
PEAVIS:若い頃だったら書けなかった曲ですね。周りの仲間たちにも家族ができて、家族を支えるために仕事している人が多い。昔だったら「ラップやめるなんてワック」みたいに思っちゃってたかもしれないけど、身近なやつらの幸せを肯定したいって思いが強くなりました。世の中が大変なことになっているけど、その人なりの幸せを持ち続けてほしいし、その人の立場にたって考えてみようと思って書いた曲です。
—僕でさえこの曲に背中を押されましたし、PEAVISさんの友人たちには絶対に伝わっていると思います。
PEAVIS:僕の友人で結婚してラップをやめたやつにアルバム出る前に音源を送って、曲を聴いてもらったんですけど、バッチリ喜んでくれて嬉しかったです。
—「Be Changed」と同様、PEAVISさんの持つ優しさと愛を強く感じたのは鎮座DOPENESSさんとの「マゴコロ」でした。
PEAVIS:鎮さん最高ですよね。アルバムの流れとして「Kizu」で落ちているところからT-K TONYとの「Jewelry Box」を経て、だんだん上がっていくようなポジティヴな曲を作りたかったんです。鎮さんがフィットすると思って連絡したら快諾してくれて嬉しかったです。
—week dudusさんのようなトラップスタイルのラッパーから鎮さん、前作で言うとDaichi Yamamotoさん、田我流さんのようなフロウとリリックで聴かせるラッパーまで幅広い客演 違和感なくまとめているのもPEAVISさんの特徴だと思います。
PEAVIS:鎮さんやweek dudusがひとつの作品の中にいるような、組み合わせの斬 新さというか、アルバム全体でクレジットを面白くしたいというのはあります。
—『PORTRA¥AL』において斬新と思う組み合わせはどこだと思いますか?
PEAVIS:今回自分としては斬新というほど攻めた組み合わせはしていないと思っているんですが、強いて挙げるとすれば「Carring You」のリミックスで参加してくれたtofubeatsさんや地元福岡のラッパーKAISHIです。地元の若手とやる機会は僕としても逆にフレッシュでしたね。
—アルバムの制作は主に福岡で行ったんですか?
PEAVIS:制作自体は東京と福岡を往き来していました。本当は、この期間に東京に越す予定だったんです。でもコロナ禍で行けなくなってしまった。福岡のシーンで大変になっているところを、自分なりにできることでサポートしたいという思いが強くなりましたし、福岡という場所を見つめ直すきっかけにもなりました。東京を往き来することでいろいろ感じるものはありますね。『Peace in Vase』に入っている「Tokyo Emotion」は地元だけで活動や制作をしていたらできていなかったと思います。
—いろいろな場所に行くからこそ感じること、思うことはありますよね。距離的に近いですけど僕もずっと山梨と東京を往き来していましたから共感します。神戸も縁のある土地だということですが、兵庫の繋がりでweek dudusさんとも楽曲を作ったんですか?
PEAVIS:実は生まれが神戸で、小学校低学年まで神戸で育ったんです。福岡にいる方が長いので地元として愛着があるのは福岡なんですが、ここ数年で実家が神戸に移住したんですよ。なので盆とか正月に神戸には足を運ぶ機会があってちょくちょく帰省してます。week dudusはABEMA の「ラップスタア誕生」に出る前から知っていて、同じ兵庫という土地にシンパシーを感じて、一緒に曲を作りたいなと思いました。
—今後、拠点を移す予定というのはあるのでしょうか?
PEAVIS:福岡を盛り上げたいし大事にしたいけど、拠点にはこだわってないです。生きていく上で場所は関係ないと思ってますが、何しろ福岡は住みやすすぎるので(笑)。そのまま住み続けてしまっています。
PEAVIS:拠点で言うと海外も良いなとずっと考えていて、コロナ禍になる前は毎年海外に1ヶ月近く、旅に出る時間を作っていました。今までだと旅が制作のインスピレーション源になっていることが多いです。インド、ネパール、タイ、アメリカ、メキシコなど、色々なところに行きました。自分の価値観が大きく変わりましたね。
—旅の中で印象に残っている景色や体験はありますか?
PEAVIS:メキシコに行ったときちょうどその頃、トランプが壁を作ってるときだったんですね。サン ディエゴの国境沿いから入国したんですけどアメリカ側は割と裕福というか、ショッピングモールとかが立ち並んでいるような場所だったのに国境渡った瞬間に舗装されていない土になって。ホームレスがたくさんいて、みんなクラック中毒みたいな。一見、お土産屋さんとかあって雰囲気は明るいけど、良く見れば実はめちゃゲットー。壁1枚でここまで変わるんだと思いました。インドも2回行ったんですけど交番の中に牛がいたり。『スターウォーズ』のアナキンが生まれた惑星タトゥイーンみたいなカオス感に食らいました。
—コロナ禍によって旅ができなくなってしまったことは『PORTRA¥AL』の制作に影響していますか?
PEAVIS:旅をする機会がなかったからパーソナルな内容になったんだと思います。今まで外に出て得たものを作品にしていたんですけど、それが内に向いて、自分の身近な出来事や周りの環境、身近なものをトピックに作り上げました。現時点で自分から生み出されるものは今作で出し切っています。
—旅の他にインスピレーションを受けたものはありますか?『Peace in Vase』のとき、PEAVISさんが「好書好日」のインタビューで手塚治虫さんの作品や「ONE PIECE」などマンガの中にある風刺について語っていたのが印象的でした。
PEAVIS:映画やアニメからの影響は大きいです。今回、Shin Sakiuraくんと作った「ガラスの地球」は、「好書好日」で話していた手塚治虫先生の「ガラスの地球を救え」を自分なりに解釈して作った曲ですし、スタジオジブリ作品や、シンプソンズやディズニーなど海外のアニメからもインスピレーションを受けています。
—具体的にはどんなところにその影響は見られますか?
PEAVIS:マッドなものをポップにみせるところですね。若いときはゴリゴリハードなスタイルで「わかるだろ?」みたいなスタンスでやっていたけどそれだと広く伝わらない。あえてストリートのものをそのまま見せず、普通の人も聴けて分かる人には分かるような曲作りを意識しています。
—今回、作品のエグゼクティヴプロデューサーとしてシンガーソングライター/プロデューサーのYonYonさんを迎えていますが、どういった経緯で参加することになったのか教えてください。
PEAVIS:Yonちゃんは韓国出身で、日本で生まれ育った経験からいろいろな思いをしてきているから、人の痛みが分かる人です。そんな中で音楽で人や国、文化を繋げようとしていて考え方が似ていると思ったんですね。共感する部分が多いというのと、自分にはない音楽的な深い知識と幅広い感性を持っているので、今回プロデュースをお願いしました。
—YonYonさんが参加したことで作品にどんな影響がありましたか?
PEAVIS:音楽におけるテクニカル的な部分でディレクションしてくれたことがいちばん大きいですね。あと、色んなジャンルのビートを集めてくれました。
—楽曲では「Beautiful Life」に続いて「Carrying You」でYonYonさんと再共演しています。あらためて一緒に曲を作ってみていかがでしょうか?
PEAVIS:Yonちゃんのフックがキャッチーだし、「Carrying You」は恋人同士に限らずいろいろな人、シチュエーションで聴いてもらえるような楽曲になったと思います。時勢にフィットするというか、世の中が一斉に会いたい人に会うことができないっていうのは初めての経験だったし、すごいストレスを感じたんですね。何年後かにこの曲を聴いたときに、人類が直面した未曾有のコロナ禍のことを思い出せるような曲だと思います。
—アルバム全体を通して、どのような作品に仕上がったと思いますか?
PEAVIS:『PORTRA¥AL』は10年後に聴いて、コロナ禍のことを思い出せるようなアルバムにしたかった。僕は記憶力がもともと結構悪いんですよ。忘れていた記憶のトリガーとして、聴いていた音楽でその時のことを思い出すというか、タトゥーと同じで刻んでおけば記憶に紐付けられる。音楽って不思議ですよね。
—新しいタトゥーのピースは増えましたか?
PEAVIS:あまり最近は増やしてないですけど、ちょっと前に砂時計を入れました。タトゥーって入れている時はお金払って痛い思いして「何やってるんだろう?」って冷静に思うんですけど(笑)。 入れた後は何にも代え難い充実感があります。痛みや苦しみから生まれるという点では、僕にとって音楽作品を作るのと似ているかもしれません。
—『PORTRA¥AL』をどんな風に楽しんでもらいたいですか?
PEAVIS:作品を通じて「心にゆとりを取り戻そう」そんな風に思ってくれたらと思います。でも、固く考えずにまずはサラッと聴いてくれたら嬉しいですね。