車いすユーザーの女性が階段しかない無人駅で補助を求めたことを綴ったブログが様々な議論を呼んでいる。
投稿した車いすユーザーの女性は「経済面でも難しいと思うし、人員的なものとか、絶対に(対応)できる保証は難しいかもしれない。でもまずは、みんなで考えていこう、どうにかしていこう、その姿勢をまず大事にしたいなと私は思う」と訴えている。
・【映像】「乗車拒否」問題 車いすユーザーと考えるこれからの車いす社会
15日の『ABEMA Prime』では、車いすユーザーへの「合理的配慮」の考え方をいかにして社会に浸透させていくか、ご本人に話を伺った回に続き、車いす芸人のホーキング青山、そしてバニラ・エアに対し搭乗時の合理的配慮を求めたことで注目を集めたバリアフリー研究所の木島英登さんに話を聞いた。
■ホーキング青山「積み重ねこそが大事だ」
ホーキング青山は、今回の経緯を踏まえ、次のように話す。
「僕も営業の仕事で、それこそ無人駅に行くこともあるが、“無理だから”と乗車拒否されたこともあるし、隣の駅まで行かなければならなかったということも過去にはあった。健常者の人が連絡をしなくてもいい以上、無人駅だろうがなんだろうが、障害者が連絡をしなくても行けるようになる、ということが間違いなく正しい。ただ、僕は一人の障害者として揉めたくはないし、揉めたこともない。怖いので事前に調べておくし、新幹線や、在来線でも東海道線では事前に連絡をしておけば車いす用スペースも確保できる。
そして、現場の駅員さんたちは一生懸命にやってくださる方が多い。都内にある地下鉄の駅に行った時、階段で駅員さんたちが車いすを担いでくださった。途中の踊り場で、一人がハアハアと息を切らしていた。“大丈夫ですか”と聞くと、“すみません。実は心臓が悪いんです”と言われたのでびっくりした。すごく申し訳ないなと思った。もちろん大きく変えるには大きな声をあげる必要があるかもしれないが、そういう交流も含めた積み重ねや信頼関係から、色々なものが用意されるようになったり、現場の知恵が生まれてくると思う。
その点、彼女のブログを読むと、事前連絡が必要だということがわかりにくかったということだったが、もともとアグレッシブに色々な所へ行かれている方なので、“わからなかった”というのはちょっと解せない。責めるつもりはないが、怒り、悔しさとともに、なんとなく“確信犯”的なものも滲み出てしまっていると感じた。やはり明日からいきなり変わるほど簡単な話ではないし、ましてや今はコロナもあり、それによって景気も悪くなっている。今回のケースで言えば、無人駅に4人を出したことで熱海駅では4人減ってしまったわけで、対応した駅員さんたちはかなり大変だっただろうと思う。
やはり障害の程度にも色々あるし、何をすれば100%という答えもない。一回一回聞いていただいて、そこからどうしようか、となるはずだ。そういうことを現場の人たちが理解しないまま問題を大きくしてしまうと、お手伝いをしようという気のある方、駅員さんたちが障害者のことを嫌いになってしまうかもしれないし、僕はそれが嫌だ。
昔から“心のバリアフリー”とか言っているが、障害者の存在自体がまだまだ認識されていない。知ってはいるが、日常で触れ合う機会もないと思う。その意味では彼女が行かれたことで、こういう方も無人の来宮駅に来ることがあるんだ、というアピールになったと思う。綺麗事かもしれないし、それじゃ現実は動かないと言われればそうかもしれないが、やはりそういう積み重ねこそが大事だと思うし、それがなければ変わらないと思う」。
■木島英登さん「どんどん街に出ていけば社会も変わる」
木島さんは4年前、バニラ・エア機に搭乗する際に車いすに乗ったままタラップを上ることを制止され、腕を使って上った経緯をネットに公開。『ABEMA Prime』に出演、「できる範囲で何かお手伝いとかをやっていただいたらいいのに、法適用しなかったらやらない、法適用するからするというのはさみしいかな」と語っていた。
木島さんは「おかしなことがあったからおかしいと言っただけで、別に騒動を大きくしたかったわけではない。ただ、そのことで話題になり、“クレーマー”と言われてしまうような悪い例を作ってしまったことは反省している。今回の件と僕の件が混同されているようだが、僕の場合、介助は頼んでいない。お手伝いしてもらえるなら感謝してお手伝いしてもらうが、そうでない場合もあれば、そもそも人がいない場合もある。バニラ・エアの時は、友達が助けるのもダメだと言われたので、自分の手で這って上ったということだ」と振り返った上で、「乗車拒否と介助の問題というのは分けて考えて欲しい」と訴える。
「今回の問題を初めて聞いた時、これは“乗車拒否”ではなく“介助拒否”だなと思った。障害があることを理由に電車に乗ってはいけないと言われることに対しては絶対に声を上げなくてはいけない。昔は車いすは危ないからダメだとか、最近までハンドル型の電動車いすはダメ、みたいに言われることがあった。それはやはり人権問題だ。階段しかないとか、人がいないのでお手伝いができないといった、介助をするかどうかという問題は状況次第だし、どういう解決策があるのか、お互いの対話による歩み寄りで見つけられれば良い。今回は、そこに“ボタンの掛け違い”があったのではないか。
僕が車いすになった30年前は、駅員さんが手伝うということはなかったので、周りにいる人に手伝ってもらって電車に乗っていた。それがありがたいことに駅員さんに手伝ってもらえるようになっていった。ただ、そこにはできるお手伝いとできないお手伝いという、範囲がある。やはり場合によっては200kg、300kgにもなる電動車いすを担ぐのは難しいという場合もある。
全ての駅にエレベーターやスロープが設置され、ホームと車両に間の段差や隙間もなくなれば、電動車いすでも一人で乗り降りができる。そのようにして、お手伝いしてもらう必要が無くなるのが一番良いし、ゴールだ。しかし田舎の駅など、それができないところもある。100%手伝ってもらうのは無理だということを当事者も理解して折り合いをつけたり、手伝ってもらえるようお願いしたりという判断をしなければいけないと思う。もちろん設備がなかったら外に出られないじゃないかという意見もあると思うので“鶏と卵”だが、それでも利用者が増えれば設備も必要だということになるので、車いすの人がどんどん街に出ていけば社会も変わる」。
■EXITりんたろー。「優しさを持って歩み寄ることが必要」
介護のアルバイトをしていた経験もあるEXITりんたろー。は「彼女が健常者のように移動できなかった、事前に調べる必要があったということは、彼女のような障害がある方に対する優しさが今の日本社会が足りていなかったということで、絶対に改善されなくてはいけないと思う。一方で、現状では楽しく旅行をするためにも事前に調べ、連絡するという優しさがあっても良かったのかもしれないとも思う。
“それは差別だ”と言われてしまったらそこまでだが、やっぱり人の乗った車いすはすごく重たいし、電動ともなれば4人がかりでも階段を降りるのは危険だ。安全に旅をするという意味では、選択しない方が良かったとも思う。社会で一緒に生きていくためには優しさを持って歩み寄ることがすごく必要だと思うし、社会を変えるためには大きな声を上げ続けることが大事だと思うが、そこに優しさを添えてあげないと、かえって遠回りになってしまう可能性もあるかもしれないと感じた」と話す。
ワンキャリア取締役の北野唯我氏は「会社経営をしている立場からすると、今回のケースによって会社は変わるべきだと思った。事業やサービスにはフェーズというものがあるので、従業員10人の会社に対して4人の介助を求めるのは厳しい。しかし公共交通機関は数百、数千万人、なんなら1億人という規模でサービスを提供している。今回のことを事前に防ぐことは難しかったと思うが、今後もあり得るかもしれないし、自分も当事者になるかもしれない。ここは真摯に受け止めて改善すべきだ。そして経営層には声が届かないものだと思わないでほしいという。経営層も、そういう声を求めているし、そこに対応しないと受け入れてもらえないということをひしひしと感じていると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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