強烈な左ミドルが脇腹にねじ込まれた瞬間、会場に響いた敗者のうめき声が衝撃の大きさを物語っていた。
4月15日にシンガポールで開催されたONE Championship『ONE ON TNT II』で行われたジャネット・トッド(アメリカ)とアン・リン・ホグスタッド(ノルウェー)の一戦。ONEムエタイルールで行われた2位と3位の上位ランカー同士の試合は、トッドが3ラウンド、ホグスタッドの右脇腹へ強烈なミドルキックを叩き込んでTKO勝利を収めた。“くの字”に崩れ落ちた悶絶ダウンシーンに「相手を折り畳み椅子のように…」など、驚きの声が上がった。
日本人の母を持ち日本語を話すトッドは、航空エンジニアというもう一つの顔を持つ才女。アマチュアのパンアメリカンムエタイ王者を経てONEに参戦し、スター選手であるスタンプ・フェアテックスとしのぎを削り、昨年ONEアトム級キックボクシングのタイトルを奪取。キック・ムエタイ“2冠王”の牙城を崩した実力者だ。対するホグスタッドはISKAムエタイ世界王者。ついた異名は“北欧の女ニンジャ”。ともにムエタイをベースに持つ技巧派同士の対決だ。
試合序盤は相手をうかがいながら高い技術で牽制しあう展開が続く。1ラウンド後半になるとヒジやパンチなどを固めたトッドが、手数で上回りつつも拮抗した状態のまま終了。
2ラウンド、リーチで勝るホグスタッドは遠い距離での攻防に勝機を見出したいところだが、トッドが素早い出し入れを繰り返しながら的確なパンチやローで主導権を握る。試合前に公言していた「動いて(相手の)スキを作りながら蹴りとパンチのコンビネーションで崩す」というプランに忠実な試合運びを見せつけていく。
3ラウンド、後がないホグスタッドが前に出るが、蹴りの挙動はすでにトッドに読まれている。変則的な蹴りやフェイントを織り交ぜるも、右の蹴りをキャッチされ、ガードが開いた右の脇腹に強烈な左ミドルを叩き込まれると「OH…」とうめき声をあげて悶絶。くの字になった状態でマットにひれ伏した。
痛みに耐えたホグスタッドは心を落ち着けるように一度は立ち上がるも、ファイティングポーズをとることができない。その様子にレフェリーがゴングを要求した。
この日ABEMAでゲスト解説を務めたのは、ONEのキックに参戦している内藤大樹。内藤は「ボディはちょっと遅れて(ダメージが)来るので、これは立てない」と状況を解説。視聴者からも「これは無理だろう」などの声、さらにONE公式SNSでは「相手を折り畳み椅子のようにしてしまった」「レベルが違い過ぎた」など驚きの声まで聞かれた。
キックとムエタイの選手が行き来することも多いONEの立ち技にあって、現アトム級キックボクシング世界王者であるトッドの次なる狙いは同階級のムエタイ・タイトル。試合後にはSNS上で現ムエタイ王者のアリシア・ヘレン・ロドリゲスへラブコールを送り、キックとムエタイの“2冠統一”へ向けて猛アピールしていた。