事故や疾病により後天的に障害者となった人を指す「中途障害者」という言葉(国立障害者リハビリセンター)。19日の『ABEMA Prime』では、事故に遭い中途障害者になった方、そして家族に話を聞いた。
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「就職活動のイベントで“企業は当たり前のことを当たり前にする人を求めている”って話を聞いて、“俺は当たり前のことできないんだけどなって」。
清水樹さん(30)は大学一年生だった10年前、バイクを運転中に交通事故に遭った。意識不明の状態が1カ月も続いた後、回復したが、左半身はまひと、右手は動きすぎてしまう失調、右膝は曲がらないという身体障害が残った。さらに記憶障害、発音がうまくできない構音障害も残り、暮らしは一変した。
「健常者時代は、靴紐が結べるのも当たり前だと思っていたけど、いざ障害者になると、それもできない。ただ、まともな字が書けるだけで幸せを感じられた」。
事故から1年半後、入院先の病院で書道の催しに参加、「濃く生きる」という言葉を書いたところ評判になった。健常者時代には思いつかなかった“当たり前”について感じたことを書きとめる。今では作品展を開く機会にも恵まれるようになった。「“できない”を基準にすると、“ちょっとできる”が嬉しい。ただ喋れるだけでも、ただ書けるだけでも、ただ食べられるだけでも嬉しい」。
社会に望むことについて、「電動車いすはバッテリーがなくなると全く動かなくなる。車いす用のトイレがあるコンビニもあるが、充電するスポットがあればむちゃくちゃ助かる」と話していた。
「近所のスーパーに一緒に行くことすらすごく尊いことだったんだな、と感じた」。柏瀬まみこさんの夫は、自転車を運転中に橋から転落、鎖骨から下がほぼ動かなくなってしまった。結婚してまだ約1カ月のことだった。
「お医者さんから“もう一生歩けない”と聞いて、一緒に散歩に行ったり、子どもとプールに行ったり、もうできなくなっちゃうのかと、すごく落ち込んだ。単独事故だったので自己責任にはなってしまうが、なんで自転車で帰ってくる選択をしてしまったのだろう、“もっと早く帰ってきてね”と一言LINEしておけば、というやりきれなさがあった。健常者で、お子さんがいて、という家族を見ると、妬みとか劣等感ではないけれど、“歩けていいな”っていうモヤモヤがあった」。
夫は一人で車いすに乗ることができないため、外出にも柏瀬さんの介助が必要だ。
「事故前の夫は家事や育児を手伝ってくれて、休日には家族とお出かけをする、というのが当たり前のことだった。今の夫は歩けない、手が動かない、生活はベッドの上で、というのが当たり前。私にとっても、夫のうんちを替えたりとかが当たり前になった。でも、夫婦仲はすごく良くなった。家事や育児に参加しないことへの不満を抱いてしまうこともあったが、夫婦で過ごす時間が増え、よく話をするようになったことで、すごく理解し合えるようになった」。
2歳になる娘の子育てと寝たきりの夫の介護に追われる日々をYouTubeで発信する。
「夫は事故に遭う前から“YouTuberになりたい”と言っていたこともあって、ちょうどいいから始めようと。実は先月、主人が仕事から帰って来て、突然“今日仕事を辞めてきた”と。やはり通勤などにストレスに感じていたこともあって、今は介護事業を立ち上げようと頑張っている。事故後はメンタルが不安定になってしまい、ネガティブな言葉も吐いていたが、今はすごく前向きになっている。やはり割り切れない部分、自分が描いていた理想の未来を失ってしまった部分については悲しい。でも、障害者になったから何をしようか、社会貢献できることは、と家族で模索することを大切にしていきたい」。
清水さん同様、社会に望むことについて尋ねてみると、「やはり段差があって私達が入れない飲食店もあるし、トイレについても車椅子でバックで入ってなんとかたどり着けるようなところもある。それから主人は手足に強い痺れがあり、ちょっとしたおしゃれな石畳だったり、デコボコ道とかでも痛みを感じてしまう。実は本当に真っ平らな道というのがなかなかない。旅行にはまだ行けないが、もし行けたら旅先に電動ベッドがあるだけで違うと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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