突然軌道を変え相手のアゴを打ち抜いた“石の拳”に実況が「真正面からどでかい石が当たってしまった」と叫んだKOシーン。後ろに崩れ落ちた相手に対して反射的にパウンドを一発入れるも、すぐにダメージを見極め、レフェリーが割って入る前に自ら攻撃を寸止めした勝者のフェアな振る舞いに対して「強いやつは無駄な追い討ちはしない」など称賛の声が上がっている。
4月22日に放送されたONE Chanpionship「ONE On TNT III」で、ジョン・リネカー(ブラジル)とトロイ・ウォーゼン(アメリカ)が対戦。1ラウンドから嵐のようなフックをみせたリネカーが、ラウンド後半、今度は一転して狙い澄ました右ストレートを打ち抜き衝撃のKO勝ちを収めた。フック一辺倒の攻撃から隠し刀のように振り抜いた豪腕1発に視聴者からも「こんなの頭にないだろう…」「賢いパンチだ」といった驚嘆の声が上がった。
元UFCファイターで“ハンズ・オブ・ストーン(石の拳)”のニックネームどおり、威力ある拳を武器にONEの舞台を席巻してきたリネカー。前回は元王者のケビン・ベリンゴンがパンチの痛さから“イヤ倒れ”する衝撃のTKO決着で、レベルの差を証明してみせた。この強豪を迎え打つウォーゼンは元オールアメリカンのレスリング・エリート。日本人のグラップラー・上久保周哉とのカードから急遽、ストライカーであるリネカーとの対戦に変更された事情もある。とはいえ、前回判定負けを喫するまではMMA7連勝と実績は十分だ。
ゴング開始とともに、リネカーが石の拳をウォーゼンのボディに連打する幕開け。ウォーゼンもリーチを活かしてパンチの機会をうかがうが、そんな様子をおかまいなしにリネカーが距離を縮め、ボディに振り回すように拳を当てていく。“バキッ、バキッ”と鈍器で殴るような音にABEMAの視聴者からは「エグいパンチだ」「何度も肋骨にもらうと折れるやつ」などの声が上がる。
一方的な展開のなか、ウォーゼンもカウンターの左フックで反撃、一度はリネカーがマットに手をつくが、すぐに持ち直したリネカーがダメージを感じさせずにフックをぶん回す。打ち合い上等のファイトスタイルでKO負けゼロのリネカーは、打たれ強さも折り紙付きだ。
1ラウンド後半、リネカーのフック攻撃はボディから顔面へと標的を変え始める。序盤の前に出て回転力で押し切るスタイルから、テンポよく相手を拳で触りながらリズムを刻むパンチへ。ウォーゼンが前に出た瞬間を狙い澄ましたように、リネカーが右のストレートを打ち抜くと、まともに被弾したウォーゼンは大の字に倒れ込んだ。
衝撃の一撃にABEMAで実況を務めた西達彦アナウンサーは「真正面からどでかい石が当たってしまった」と絶叫。コメント欄にも「アゴにごつんでおしまい」「一発で仕留めた」と驚きの声が並んだ。
解説の大沢ケンジはスロー再生を見ながら「ここまで(ストレートを)隠してましたね、(右の)ショートですね」と解説。さらにゲストの岡見勇信も「きれいなストレート、(ウォーゼンが)飛んでる」と衝撃を語り、「ウォーゼンはフック系の対処は出来てたのに急にストレートが来たので追いつけなかったですね」と軌道の違うパンチに沈んだウォーゼンの敗因を指摘した。
興奮冷めやらぬ中、ダウン直後に反射的に放ったパウンド1発のみで追い討ちを自制したリネカーのフェアな姿勢にも注目が集まっている。相手のダメージをしっかり見極め、レフェリーが割って入る前に自らパンチを止めたリネカーの振る舞いに対しては「強いやつは無駄な追い討ちはしない」など、称賛の声が寄せられている。