韓国の元慰安婦と遺族ら20人が日本政府に対し損害賠償を求めていた裁判で、韓国の裁判所は21日、訴えを退ける判決を言い渡した。原告らは判決を不服として控訴する見通しで、そのうちの一人、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんは「とにかく結果がどうであれ国際司法裁判所に行く」「これだけは言わせてください。このようにするのは私一人だけのためではない」と訴えた。
1991年、韓国で元慰安婦とされる女性が実名で名乗り出たのをきっかけに日韓で話し合いが始まったこの問題。日本政府は両国の財産・請求権については1965年の日韓請求権協定で解決済みだと主張。しかし韓国側は納得せず、議論は平行線が続いてきた。
そして2015年、両政府は会談を行い、日本が国として責任を認めることなどで慰安婦問題は最終決着したと発表。岸田文雄外務大臣(当時)は「今回の合意をもって慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されることになり、この問題にも終止符を打った」とコメントしていた。
それでも韓国国内では慰安婦個人への賠償を求める声が湧き上がり、今年1月には、別の元慰安婦らによる裁判で、韓国の裁判所が日本政府への損害賠償を命じる判決を下す。ところが今回の判決では、これとは真逆の判断が示されることになったのだ。
今回の判決について、韓国弁護士協会の「日帝被害者人権特別委員会」委員長を務める崔鳳泰(チェ・ボンテ)弁護士は裁判官が日韓関係を念頭に判断を下したとの見方を示す。
その上で崔氏は「結局、今回の判決は外交にボールを投げたということだ」と指摘する。
「基本原則としては国家同士の約束は必ず守るべきだが、問題が残されている場合には交渉は可能だ。例えば1965年の日韓請求権協定に“完全かつ最終的に解決”という表現があったにもかかわらず、2015年の協議をしたのもそのためだ。今も問題が残されているなら、再び協議をして解決すればいい。それが、両司法府が存在を認めている個人請求権の問題だ。
例えば元BC級戦犯とされた李鶴来(イ・ハンネ)さんが先月に亡くなったが、李さんが日本の司法に救済を求めた結果、被害の重大性を考えれば、日本は立法措置をとって救済するべきだと判断された。つまり司法府は日韓ともに個人請求権は残されているという考え方だ。日本の政府と企業が日本の司法府の判断を尊重して人権救済に尽力してくだされば、十分この問題は解決できると思う。
確かに慰安婦問題に関しては色々な見解があるが、河野談話を前提にして、お互いの認識の確保を進める努力をすることが建設的だと思う。大統領としても、外交ルートを通じて解決してほしいという思いもあるだろう。私も強制執行によって解決するというのは望ましいことではない」
さらに「個人的な案だが」とした上で、「バイデン大統領はアメリカが戦時中、日系人を無理やり拘束したことについて、今年も謝罪をした。これをモデルにして、例えば河野談話が発表された93年8月4日を“記憶の日”として日本政府が定め、“河野談話を継承する”という発表を毎年やってくだされば、この問題も十分解決できると思う」との考えを示した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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