アップサイクリングブランド「FROMSTOCK(フロムストック)」が、先月WEBストアで発売開始した“真っ黒な服”。これは、100年以上にわたって着物の黒紋付を染め続けてきた老舗「京都紋付」が、洋服を和服の技術で黒染めしたアイテムだ。
服の大量生産・消費・廃棄をはじめ、服飾業界が抱える課題は多い。製造工程で排出されるCO2(二酸化炭素)の排出量は1年で約9万キロトン。1着あたり約25キログラムものCO2が排出され、水の大量消費や化学物質による水質汚染など、環境負荷は年々深刻化している。廃棄される衣類の量は年間約48万トンで1日あたりの焼却・埋め立ては約1300トン。大型トラック130台分と言われている。
今回、FROMSTOCKが行った取り組みは、日本の伝統技術“黒染め”を施し、従来の形・デザインのままで埋もれていた服に、新たな価値を生み出すプロジェクトだ。
アップサイクリング(創造的再利用)とも呼ばれるこの取り組みについて、ニュース番組「ABEMAヒルズ」ではブランドを立ち上げたメーカーを取材。
FROMSTOCKの松崎あさこさん(※「崎」は正式には立つ崎の字)は、“黒”が選ばれた2つの理由として「一番強い色」「ファッションに欠かせない色」を挙げる。
「廃棄や在庫の問題に社員として何ができるか、ディスカッションする場があったんです。そのとき、社員の一人から『捨てるくらいだったら一回黒染めしてみたら?』みたいな意見が出てきて『いいね』と、賛同の意見がすごく集まった。黒染めによって、ロスを抑えられることができるのではないかと考えて『まずはやってみよう』とプロトタイプを作ったところ、思った以上に良い染め上がりになって『じゃあ事業化しよう』となりました」(以下、松崎さん)
廃棄在庫の再利用につながった黒染め。松崎さんはブランドを通じて、より多くの人に環境問題について知ってもらいたいと話す。
「大量生産、大量消費の裏側に大量廃棄の問題がある。FROMSTOCKは、アップサイクリングによって一つの洋服の寿命を延ばしていく。一つの服を少し長く着て、サイクルを少し遅らせるだけで、二酸化炭素の排出量が抑えられる。一着一着をアップサイクルして、一人ひとりに『こういうチョイスもあるよ』と知って選んでいただく。本当に小さな1歩ですが、環境保全のアクションとして捉えていただければと思います」
FROMSTOCKとタッグを組んだのが、京都で100年以上続く「京都紋付」だ。大正4年の創業から現在まで、”黒染め一筋”で伝統を現代に伝え続けてきた。
「京都紋付」3代目の荒川徹さんは、FROMSTOCKとタッグを組む以前から、環境を守るためのプロジェクトを数多く行ってきた。取り組みを行ってきた背景には「着物産業のマーケット縮小を食い止めたい」という思いがあるという。
「着物マーケットがかなり縮小したので、その中でこの技術を残さないといけないと思った。絶対この製造を止めてはならないと。この技術を生かして、今の世の中にあったプロダクトができないか考えた。黒に特化して、100年間、黒しか染めてない会社ですので、この技術を活用してマーケットにどうやって出ていこうか。それを考えていたときに、デザイン衣類を黒染めで再生する話がきた。京都紋付が作れなくなる事態を防ぐためにも、伝統を革新していって、技術をいかに今の世の中に残していくかが大切。伝統のまま止まっていたら、伝統産業は疲弊していきますから」(以下、荒川さん)
京都紋付が手掛ける「京黒紋付染」は、婚礼の際に着る黒留袖や、葬儀の際に着る喪服などを黒色に染める京都の伝統技術の一つだ。京黒紋付染の歴史は古く、江戸時代から始まっていると言われる。100年の伝統を100年後の未来につなげるため、荒川さんは「染めの技術で服を蘇らせる。そのコンセプトを広げていきたい」と話す。
「今、衣類は汚れたらクリーニングしますが、汚れが落ちなかったらしょうがない。でも『染め直したら生き返る』という文化を作りたい。衣類は再生できるという概念を世の中に作っていきたい。我々の黒染めも、同業他社で色染めをやっている業者も含めて、世の中に広めていきたいですね」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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