2ラウンドで3つのダウンを喫し、最後は戦慄の左ハイで沈んだ44歳の伝説のキックボクサー。しかし10カ月前、人工股関節の手術を受け、奇跡のカムバックを果たしたレジェンドに対して「勇敢な戦士」「アナタも勝者」など、称賛の声が相次いでいる。
4月22日に放送されたONE Chanpionship「ONE On TNT III」。ニキー・ホルツケン(オランダ)とジョン・ウェイン・パー(オーストラリア)の対戦は、2ラウンド、ホルツケンが戦慄のハイキックで見事なKO勝利を収めた。結果だけ見ればハイキック2発と強烈な左フックで3つの“一撃”ダウンを奪ったホルツケンの完勝となったが、人工股関節の手術を受けて奇跡の復帰を果たしたパーの奮闘ぶりに反響が広がっている。
ともに伝説的なキックボクサー同士がムエタイルールで対峙したドリームカード。36歳のホルツケンはキックボクシングで複数回の世界チャンピオンになり、ムエタイ、ボクシングなどで、それぞれ輝かしい戦績を持つ。ONEでもインパクトのあるKOを重ねてきたファイターだ。対するパーもキックやボクシングで活躍し、キックではプロ99勝、日本のリングやBellatorキックボクシングなどで世界を渡り歩いてきた。44歳にしての復帰もさることながら、パーは昨年、人工股関節の手術を受けており「まだ現役とは」「(年齢的にも)強いわけがない」など、一部復帰に否定的な声も聞かれていた。
試合はゴング開始とともにミドルやパンチを打ち合う展開。動きにやや鈍さが感じられるパーに対し、ホルツケンのそれにはキレがある。1ラウンド後半、打ち合いのなかでホルツケンが左右のフックを効かせると、鮮やかな回し蹴りでパーから最初のダウンを奪う。ダウン後、パーは気持ちの強さを見せ連打に出るが、慣れないオープンフィンガーグローブでの打ち合いでは、ホルツケンに分があるようだ。
2ラウンド、手数を出すパーに対し、ホルツケンがジャブやストレートなど威力あるパンチをテンポよく当てると、パーの右のフックに完璧に合わせた左フックを打ち込み2度目のダウンを奪う。力の差を感じさせる展開に視聴者から「破壊的だ」「もう止めた方がいい」「見ていられない」といった声が上がりはじめる。
なんとか立ち上がったパーはキックの連打で応戦。蹴りに力こそないが、気持ちは折れていない。パーが最後の力を振り絞りたたき込んだ弱々しいミドルの蹴り際、ガードが無防備になったところにホルツケンが狙いすました左ハイを一閃。アゴを捉えてみせた。強烈なハイキックに脳が揺れ、崩れ落ちて天を仰いだパー。それでも立ち上がろうと頭をあげるが、レフェリーは続行不可能と判断し、試合をストップした。
この日のABEMAでゲスト解説を務めた岡見勇信も「(ホルツケンは)余裕があって全部見えてましたね」と語る盤石の勝利。視聴者から「淡々とやりきった」「モーションのない蹴りがすごい」などホルツケンを讃える声が上がったが、44歳での復帰戦に敗れたパーが試合後、満面の笑みでホルツケンと握手を交わすと、そんなパーの様子に「よく頑張った」「勇敢な戦士」「人工股関節の手術を受けて44歳でケージに入る男気。試合に負けたが、アナタも勝者」などといった熱い言葉が多く寄せられた。
なお試合後、パーはSNSを通じて「世界中からのサポートに感謝するよ。10カ月前、“もう終わりだ”と思って人工股関節置換手術を受けました。戦うために戻ってこれて、ニキーと戦う夢も叶った。ヘッドキックを貰ったあとにドクターチェックを受けたところ問題なかった。俺は元気だよ」と感謝のメッセージを綴り、自身の体の状態について明かした。