アメリカの科学誌「セル(電子版)」は、中国・昆明理工大と米ソーク研究所などが世界で初めて“ヒトの細胞”を“サルの胚”に注入して異種の細胞を併せ持つ「キメラ」をつくったと発表した。

【映像】臓器不足の解消に…ヒトとサルの“キメラ”

サルがヒトの臓器不足を解消? 世界中で生命倫理に懸念の声「議論内容の発信を」
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 実験ではカニクイザルの胚にヒトのiPS細胞を注入し、成長を続ける胚を20日間研究。成長した胚には多くのヒト細胞が残ったままで、将来的に移植用の臓器不足を解消できる可能性があるとしている。

 ヒト幹細胞をサルの胚へ。このヒトとそれ以外の“キメラ”をつくる研究が、今世界中で議論になっている。日本初の個人向け大規模遺伝子検査・解析サービスを手がけるGenequest(ジーンクエスト)の代表取締役・高橋祥子さんは「胚の成長が続けば、人の臓器を持ったサルになるだろう」と話す。

サルがヒトの臓器不足を解消? 世界中で生命倫理に懸念の声「議論内容の発信を」
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「キメラ細胞自体は、1970年頃から研究の中で使われてきた。今回、世界で初めて受精卵の分裂が進んだサルの胚に、ヒトの幹細胞を入れたことで注目されている。実験では短い期間でほとんどの胚が死んでしまったが、このまま育っていくとヒトの細胞を持ったサルの個体ができる。そういうことができてしまうと、倫理的に問題があるのではないか。それで世界中で議論になっている」(以下、高橋祥子さん)

 また、実験によってヒトの臓器を持ったサルができた場合、移植用臓器以外にも「難病の治療法の実験など、ヒトではできないような研究で貢献する可能性はある」と高橋さんは話す。その上で「ヒトができないような実験をサルではやっていいのか、どこまでやっていいのかの線引きがとても難しい」という。

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「近年は動物愛護の観点も重要になっていて、動物にとっても倫理的に問題ないような形が求められている。今回、倫理委員会で議論された上で実験が行われているが、どのような議論が実際に行われたのか、議論の内容も発信してもらいたい」

 事前に米中両国で倫理委員会の審議が行われたヒトとサルの“キメラ実験”。世界中で生命倫理が懸念されている中、時代はどこまで受け入れていくのだろうか。

「体外受精も最初は『試験管で赤ちゃんを作るなんて』と言って、ほとんどの人が反対していた。でも、今は体外受精によって年間約5万人の赤ちゃんが生まれている。メリットが分かれば、時代によって許容されてくるものもある。感情で思考を停止させるのではなく、冷静にどこが問題で、どこまで許されるのか。その議論が活発化してほしい」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】「ヒト幹細胞をサルの胚へ」倫理的課題は
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