将来を期待される若手実力者には、わずか19秒でもしっかりと詰み筋が見えていた。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Aリーグの第3試合、チーム三浦とチーム稲葉の対戦が4月24日に放送されたが、この第3局で本田奎五段(23)が鋭い読みと寄せを披露した。最終盤の寄せ合いで、手を戻さずに切り込んだ一手は、一手違いの勝利を手繰り寄せるもの。周囲からも「見事」「頼もしい」との声が次々と起こった。
実質的なデビュー年度からタイトル挑戦まで駆け上がった本田五段は、チーム三浦の一員として本大会に参加。第3局では名人挑戦経験もある相手チームのリーダー稲葉陽八段(32)にぶつかっていった。稲葉八段の先手、角換わりから始まった一局は、両者とも猛烈な攻め合いのまま終盤へ。持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算の超早指し戦だが、最終局面はたっぷり時間がほしい難解なものだった。
ただ、ここで本田五段の若さ溢れる直感、判断が冴え渡る。残りの持ち時間62秒から19秒使って指した手は△5七歩成。これを見た田村康介七段(45)は思わず「うわー、度胸あるな」とうなるほど、ぎりぎりの一手だった。この△5七歩成は、今にも詰められそうな自玉を守る手を選ばず、さらに相手に深く斬り込む手。そのまま詰められてしまえば敗着とも言えるものだった。
だが、結果は本田五段の読みがずばり。稲葉八段の寄せがわずかに届かないことを見抜くと、手番が回ってきてからは、即詰みへと一直線に指し進めて勝利を収めた。これにまた田村七段が「(△5七歩成が)ぴったり詰めろだったんですね。見事ですね」と称えると、見守っていたチームリーダー三浦弘行九段(47)も「いやあ、頼もしい」と感心していた。
当の本田五段本人も「かなり際どかったと思うんですけど、最後に詰みが見えたのでホッとしました」とにっこり。この紙一重の勝負をものにする23歳の将来が、さらに楽しみになる一手、一局だった。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)